漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「茲ジ・シ」<草がしげる・はびこる>「滋ジ」「慈ジ」「磁ジ」

2024年05月25日 | 漢字の音符
 シ・ジ・しげる・これ  艸部 zī     

解字 甲骨文・金文で分かるように初形は幺幺ジで、幺ヨウ(ねじた糸束)を並べた形。篆文は上部に糸束の末を結んだ形。「ここ・これ・この」などの指示詞に用いられた。のち、篆文の上部が艸(草)と混同され、草がしげる・はびこる意がある[字統]。新字体で用いられるとき、茲⇒兹 に変化する。
意味 (1)しげる(茲る)。はびこる。(2)ます(茲す)。ふえる。ますます(茲)(3)ここ(茲)。これ。この。(4)とし(茲)。年。「今茲コンジ」(今年)「来茲ライジ」(来年)(5)地名。「亀茲キジ」(中央アジアに存在したオアシス都市国家。現在の新疆ウイグル自治区にあり、シルクロード天山南路に位置した。)

イメージ 
 草木がしげる・はびこる意から「しげる」(茲・滋・慈)
 上記から転じた意「ふえる」(磁・孳)
音の変化  シ:茲  ジ:滋・慈・磁・孳

しげる
 ジ・シ・しげる  氵部 zī
解字 「氵(水)+茲(しげる)」 の会意形声。水が行きわたり草木がしげること。
意味 (1)しげる(滋る)。そだつ。そだてる。「滋育ジイク」(草木を育てる) (2)うるおう。養分になる。「滋雨ジウ」「滋養ジヨウ」(3)おいしい。「滋味ジミ」(①うまい味わい。②物事の深い味わい)(4)地名。「滋賀県シガケン」(琵琶湖のある近畿地方の県)
 ジ・シ・いつくしむ  心部 cí
解字 「心(こころ)+茲(=滋。しげる。そだつ。そだてる)」 の会意形声。子を育てる親の心。
意味 いつくしむ(慈しむ)。かわいがる。めぐむ。「慈母ジボ」(いつくしみ深い母)「慈愛ジアイ」(いつくしみ愛する)「慈悲ジヒ」(慈しんで悲しみを取り去る)「慈善ジゼン」(慈しんで善を行なう)

ふえる
 ジ・シ  石部 cí
解字 「石(鉱物)+茲(ふえる)」の会意形声。土の中の砂鉄をひきつけて、ふやしてゆく鉱物(石)。
意味 (1)じしゃく(磁石)。鉄をひきつける性質。「磁気ジキ」「磁性ジセイ」「磁針ジシン」 (3)瓷(硬いやきもの)に通じ、高火度で焼き素地がガラス化したやきものをいう。「磁器ジキ」「白磁ハクジ」(純白の磁器)
 ジ・シ・うむ 子部 zī
解字 「子(こども)+茲(ふえる)」の会意形声。子がふえること。
意味 (1)うむ(孳む)。子孫がふえる。「孳息ジソク」(子孫がふえる) (2)しげる。(=滋)。「孳萌ジホウ」(草木の芽が次々と出る)(3)孜(つとめる・はげむ)に通じる。「孳孳シシ」(つとめはげむ)
<紫色は常用漢字>

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