増補改訂しました。
可 カ・よい・べし 口部 kě・kè
①②
①ニューギニアの石斧(下の石斧)(南山大学博物館蔵)②石斧をつけた曲がった木の枝(レプリカ)
解字 甲骨文字は「口(くち)+斧(おの)の柄にするまがった木」の形。「斧の柄にするまがった木」とは上の写真のような斧の柄になる木であり柯カ(斧の柄)の原字。可カは、この曲がった木の柄の発音である「カ」を口から出す形であり「カ(か)」の音を表す。カの音は、金文で「可能」「許可」の意味で使われており[簡明金文詞典]、承諾を表す「よし」の他、「できる」などの意味をあらわす助字となる。
意味 (1)よい(可い)。よし。よいと許す。「可否カヒ」(よしあし)「許可キョカ」(2)できる。「可能カノウ」「可及的カキュウテキ」(できるかぎり)(3)べし(可し)。するべし。(4)ほぼ(可)。ばかり(可り)(5)その他。「可憐カレン」(①愛らしい、②かわいそう)
柯 カ・え 木部 kē
解字 「木(き)+可(斧の柄にするまがった木)」の会意形声。木の枝を利用して作られた道具をいう。長い枝を柄にして短い枝の末端を加工して斧(おの)をはめた道具の意。 中国河姆渡(かぼと)遺跡で発掘された木製の斧(おの)の柄(浙江省博物館所蔵)
河姆渡遺跡とは中国浙江省で紀元前5000年頃~紀元前4500年頃にかけて存在した新石器時代の初期農耕文化の生活遺跡。写真は「百度百科」の「新石器時代河姆渡文化木斧柄」より
意味 (1)え(柯)。斧の柄。斧をつける先の曲がった枝。「斧柯フカ」(斧の柄)(2)木の枝。「柯条カジョウ」(曲がった木の枝)「柯葉カヨウ」(枝と葉)(3)姓のひとつ。「柯隆カリュウ」(経済学者)
イメージ
「よし・できる」(可・柯)
「形声字」(呵・訶・哥・歌・苛・珂・河・舸・柯・坷・軻・何・荷)
音の変化 カ:可・柯・呵・訶・哥・歌・苛・珂・河・舸・柯・坷・軻・何・荷
形声字
呵 カ 口部 hē・ā・kē 解字 「口(くち)+可(カ)」の形声。口でカッという声を強く出すことを呵カという。しかる意と、わらう意とある。可は本来、カ(丁カ)という音を口から出す意だったが、可能などの意に仮借カシャ(当て字)されたので、口をつけて本来の意味を表した。そのため、この字には口が二つある。
意味 (1)しかる(呵る)。せめる。「呵叱カシツ」(呵も叱も、しかる意)「呵責カシャク」(しかりせめる)(2)わらう(呵う)。「呵呵カカ」(からからと笑う)
訶 カ 言部 hē 解字 「言(ことば)+可(カ)」の形声。カッという強い言葉を出すこと。呵カとほぼ同じ意味だが、梵語の音訳字としての使用が多い。
意味 (1)しかる(訶る)。(=呵る)。せめる。(2)梵語の音訳。「魔訶マカ」(梵語mahaの音訳。偉大な・非常に・すぐれる意)「摩訶不思議マカフシギ」(非常に不思議な。原義は、思い議(はか)りもできないほど偉大な)
哥 カ・コ 口部 gē
解字 「可(カという声)+可(カという声)」の形声。カという声を連続して出すこと。うたう意となる。歌の原字。コの発音は唐音(宋以後の中国音)。
意味 (1)うたう(哥う)。うた。(2)地名。「哥倫比亜コロンビア」(南アメリカ北西部の共和国)
歌 カ・うた・うたう 欠部 gē
解字 「欠(口をあけて立つ人)+哥(うたう)」の会意形声。欠ケンは口をあけて立つ人の象形。これに哥(うたう)がついた歌は、人が口をあけて歌うこと。
意味 (1)うた(歌)。うたう(歌う)。「歌手カシュ」「歌謡カヨウ」(歌を謡う。民間の歌)「歌劇カゲキ)(2)やまとうた。「和歌ワカ」「歌人カジン」
苛 カ 艸部 kē
解字 「艸(くさ)+可(カ)」の形声。からい草を食べてカッと声を強く出すこと。からい意から転じて、きびしい・むごい意となる。
意味 (1)からい(苛い)・きびしい(苛しい)・むごい(苛い)。「苛政カセイ」「苛烈カレツ」「苛酷カコク」(2)いらだつ。いらいら(苛苛)する。「苛立(いらだ)つ」
珂 カ 王部 kē
解字 「王(玉)+可(カ)」の形声。カという名の宝石。メノウの白いものを言う。
意味 (1)しろめのう。「珂傘カサン」(玉で飾った傘)「珂声カセイ」(玉の触れ合う音)(2)貝の名。くつわがい。(3)地名。「那珂湊なかみなと」(茨城県の旧市名)「那珂川なかがわ」(①茨城県で太平洋にそそぐ川。②福岡県で博多湾にそそぐ川)
河 カ・かわ 氵部 hé
解字 「氵(川)+可(カ)」の形声。可カという名の川。中国で黄河を表す字として使われた。黄河は中流で「几」の字形にまがり、さらに関中盆地から流入する渭水との合流点でもほぼ直角に曲る。甲骨文字からある字。
上が黄河、下が長江 中国語スクリプト(「黄河」より)
意味 (1)川の名前。「黄河コウガ」「河源カゲン」(黄河の水源地)「河北カホク」(①黄河の北、②河北省のこと)(2)かわ(河)。川の通称。「河川カセン」「河口カコウ」(3)ほりわり。「運河ウンガ」(4)天の川。「銀河ギンガ」
舸 カ 舟部 gě
解字 「舟(ふね)+可(=河。大きな河)」の形声。河を上下する比較的大きな舟を舸カという。
意味 ふね(舸)。おおきな船。「軽舸ケイカ」(軽快な船。はやぶね)「舸船カセン」(大きな船)「舸艦カカン」(軍船と軍艦)
坷 カ 土部 kē・kě
解字 「土(つち)+可(カ)」の形声。けわしく平らでない土地を坷カという。
意味 (1)けわしい。たいらかでない。行なやむ。「坎坷カンカ」(①でこぼこして平らでないさま。②行きなやむ。坎も坷も、たいらかでない意)
軻 カ 車部 kē
解字 「車(くるま)+可(=坷。行なやむ)」の形声。たいらかでない土地で車が行きなやむことを軻カという。
意味 (1)「轗軻カンカ」とは、坎坷カンカを車偏に置き換えて作った熟語。①車の行き悩むさま。②事の思うように運ばないさま。(2)車がきしるさま。「軻峨カンガ」(ごつごつして高いさま)(3)孟子の名。「孟軻モウカ」
何 カ・なに・なん イ部 hé・hè
解字 甲骨文は、人が斧(おの)の柄(=丁カ。=柯。まがった柄)をになう形。荷(にな)うの原字。金文は人に頭部を追加して描いた形。篆文以降、「イ(ひと)+可カ(=柯。斧の柄)」の形声になった。意味は人が斧の柄を「になう」こと。しかし、本来の意味でなく、人にものを尋ねる意に仮借カシャ(当て字)され、「なに」「どれ」などの疑問詞となった。
意味 (1)なに(何)・どれ・どの。「誰何スイカ」(誰か、と声をかけて問いただす)「如何イカン」(イカニの音便)(2)なんぞ(何ぞ)(3)いずく(何く)。いずれ(何れ)(4)になう。
荷 カ・に・になう 艸部 hé・hè
解字 「艸(くさ)+何(になう)」の会意形声。花弁を荷っているハス花の花托の意からハスの意がある。何が「なに」の意となったため、本来の「になう」意味も表わす。
意味 (1)になう(荷う)。「荷担カタン」(①荷物を担う。②味方をする)「稲荷いなり」(稲を荷う意。①稲荷神社の略。②狐の俗称(稲荷神の使いとする俗信から)(2)に(荷)・にもつ。「出荷シュッカ」「重荷おもに」「歩荷ぼっか」(山小屋などへ荷物をいくつも背負って運ぶ仕事をする人。荷物が歩く意からと言われる)(3)はす(荷)。蓮の古名。「荷花カカ」(ハスの花=荷華)「荷葉カヨウ」(ハスの葉。ハス花の香りに似せた練り香の一種)
<紫色は常用漢字>
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