它 タ・へび 宀部 tā・shé
解字 甲骨文は蛇をリアルに描いた象形、金文は頭が左右にふくらみ、その中を通して太い胴をえがき、背中にも線をいれている。第二字は単純化されており頭のふくらみに隙間ができている。篆文は頭のふくらみが誇張されて大きく、胴の線は頭の左右からのび、背中の線は無くなった。頭の大きな蛇の象形。現代字は上が宀、下がヒに分離した它になった。
なお、金文の時代から它タの音を借りて「ほか」の意味にもちいる使い方があったので、ほか・よその意味がある。[常用字解]。
意味 (1)へび(它)。=蛇(へび)。「竜它リュウダ」(竜とへび) (2)ほか。よそ。別の。「它人タニン」(=他人)
※現代中国では三人称代名詞に用い、人なら「他」(あの人)、女性なら「她」(彼女)、人以外のものなら「它」(それ)と書いて使い分けている。
イメージ
「へび」(它・蛇)
「ほか(借音)」(佗・詑)
「形声字」(舵・柁・鉈・駝・鴕・跎・陀・沱)
音の変化 タ:它・佗・詑 ダ:舵・柁・駝・鴕・跎・陀・沱 シャ:鉈 ジャ:蛇
へび
蛇 ジャ・ダ・タ・へび 虫部 shé・yí 解字 「虫(動物)+它(へび)」の会意形声。它はへびの意味があり、虫を加えてその意味を明確にした。
意味 (1)へび(蛇)。くちなわ。「大蛇ダイジャ」「蛇足ダソク」 (2)形がへびに似ているもの。「蛇腹ジャばら」「蛇口ジャぐち」
ほか(借音)
佗 タ・ほか イ部 tuó・tuō
解字 「イ(ひと)+它(ほか)」 の会意形声。它は金文で它タの音を借りて「ほか」の意味に用いた。ほかの人の意。また、人にかぎらず、ほかの意を表す。
意味 (1)ほか(佗)。よそもの。(=它。他)。「佗日タジツ」(=他日)「佗人タニン」(=他人)(2)日本で侘タ(わび・静寂で落ち着いた味わい)の意味で使うことがあるが誤用である。例:「佗(わび)住い」
詑 タ・あざむく 言部 tuó
解字 「言(ことば)+它(ほか)」 の会意形声。本当のことを言わず、ほかの事をはなすこと。あざむく意となる。
意味 (1)あざむく(詑く)。そしらぬ顔をする。「詑語タゴ」(あざむき言う)(2)(人を)かろんずる。うぬぼれる。「詑詑タタ」(自らほこるさま。いい気になる)
形声字
舵 ダ・タ・かじ 舟部 duò
解字 「舟(ふね)+它(タ・ダ)」 の形声。船尾にあって船の進む方向を変える「かじ」を舵ダという。なお、「柁ダ(木+它)」も同じ趣旨の字で、「かじ」を表す。
船尾の舵(コトバンク「千石船」より)
意味 かじ(舵)。船のかじ。「操舵ソウダ」(舵を操る)「舵手ダシュ」「舵取(かじと)り」
柁 ダ・タ・かじ 木部 tuó・duò
解字 「木(き)+它(=舵)」 の会意形声。舵の舟偏を木偏に替えた字で、船の木製の舵を表した字。
意味 かじ(柁)。船のかじ。「柁手ダシュ」(=舵手)
鉈 シャ・シ・なた 金部 tā・tuó
剣鉈と腰鉈(「剣鉈と腰鉈の違い」より)
解字 「金(金属)+它(タ⇒シャ)」 の形声。短く幅のひろい金属の刃がついた刃物を鉈シャという。後漢の[説文解字]は「短い矛(ほこ)也(なり)。金に従い它の聲(声)」とする。日本ではナタの意味で用いる。
意味 (1)[国]なた(鉈)。薪(まき)などを割るのに使う短くて幅のひろい刃物。「鉈彫なたぼり」(鉈で彫ったような荒々しい力強さが特徴の仏像彫刻)「剣鉈ケンなた」「鉈豆なたまめ」(さやが鉈ほどの大きさになる豆)(2)ほこ。短いほこ。
駝 ダ・タ 馬部 tuó・chí 解字 「馬(うま)+它(ダ)」の形声。背中にこぶをつけたような馬を駝ダといい「駱駝ラクダ」に用いる。また形がラクダに似た鳥の「駝鳥ダチョウ」に用いる。
意味 (1)「駱駝ラクダ」に使われる文字。駱駝とは、背中にこぶがある大形の獣。「駝馬ダバ」(ラクダ)(2)「駝鳥ダチョウ」に使われる文字。駝鳥とは、足の長い大きな鳥で、よく走るが飛べない。頭から背中のふくらみにかけての形がラクダと似ている。
鴕 ダ・タ 鳥部 tuó
解字 「鳥(とり)+它(=駝。ラクダ)」 の会意形声。ラクダに似て背のふくらみがある鳥を鴕ダといい、「鴕鳥ダチョウ」に用いる。
意味 だちょう(鴕鳥)。ダチョウ科の野鳥。鳥の中で最も大きい。駝鳥とも書く。
跎 タ・つまずく 足部 tuó
解字 「足(あし)+它(タ)」の形声。足がつまずくことを跎タという。つまずく。足をふみはずす意となる。
意味 つまずく(跎く)。足をふみはずす。「蹉跎サタ」(蹉も跎も、つまずく意。もたもたして時期を失うこと)「蹉跎歳月サタサイゲツ」(もたもたして歳月をむなしく過ごすこと)
陀 ダ・タ 阝部 tuó・duò
解字 「阝(おか)+它(ダ)」 の形声。岡が傾斜して平らかでないさまを陀ダという。また、梵語の音訳字に用いられる。
意味 (1)梵語の音訳字。「仏陀ブッダ」(悟りに達した人。ほとけ)「阿弥陀アミダ」(極楽世界を主宰する仏。阿弥陀仏)「陀羅尼ダラニ」(呪文を翻訳しないでそのまま読誦する)(2)「陂陀ハダ」(かたむいて平らかでない)
沱 ダ 氵部 tuó・duò
解字 「氵(川)+它(ダ)」 の形声。ダという名の四川省を流れる川をいう。
意味 (1)川の名。「沱江ダコウ」(四川省中部を南流して長江にそそぐ川)(2)「滂沱ボウダ」とは、①大雨の降るさま。②涙がとめどなく流れるさま。
<紫色は常用漢字>
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