西武百貨店池袋店にて、「美の壷」展が開かれています。
今回私が足を運びましたのは、「銘仙」の語り部ともいえる方、
花織人・木村和恵さんの講演会。
会場では、実際に着物や帯を触らせていただけて、羽織ったりもできました。
私は銘仙についてほとんど知らなかったので、
とても刺激になり、楽しかったです。
「銘仙」が手元にある方って、今では少ないのではないでしょうか?
もともと、くず繭といわれるB級品から作られる労働着。
大正から昭和のはじめに出回った、
モダンなデザインのものがとても人気があったそうです。
女性が社会で働くようになり、
さりとていきなり洋服には抵抗があった時代、
モダンな「銘仙」は着物から洋服への過渡期に重宝だったようです。
古着としては、以前ならただ同然で、
他の着物をお買い上げのお客さんに、
おまけとしてあげていたというくらいです。
今まさに銘仙ブームを起こしたのは、まさに木村さんと言われています。
しかしながら、木村さんのお話は意外性たっぷり。
「私は銘仙が好きな訳じゃないの」と仰る。
秩父に生まれたことが縁で、
ご自分しか銘仙を伝える人はいないのではないか、
と考えられたとか。
業界的には、木村さんが銘仙を集めているのが噂になって、
どんどん値が上がったそうです。
全国から、見知らぬ人までが木村さんに銘仙の着物を送ってこられて、
集まったのは1600着以上とのこと。
また、若い女性がその斬新な色とデザインに目をつけて、
ただ今第3次銘仙ブーム。
残念ながら、アンティーク銘仙の良い物は出尽くしてしまいました。
木村さんは「庶民のものは庶民が守らないと」
と、使命感に燃えていらして、とてもパワフル。
「好きじゃない、嫌いでもない、だから冷静に見られるのよ」
とおっしゃいます。
私は、木村さんがお持ちになった銘仙の配色やデザインを見て、
まさにいつも専門学校で教えている学生たちの服装と同じだと思いました。
ポップアートの先駆けだった銘仙は、
今、若者の心を捉えてしかるべし、です。
木村さんは、「銘仙は、印象派」といい、
また、若い職人さんたちに、
平成の新しい銘仙を創りなさい、とはっぱをかけているそうです。
私も多いに期待したいです。
木村さんの素敵な笑顔とパワーにふれて、
皆がテンション上がった講演会でした。