イリスの色いろのお話

イリスのエレガンス★コミュニケーション blog
色彩・着物・ファッション・アート

映画「大奥」に見る色と着物

2010-10-23 11:14:15 | 色彩
映画「大奥」の中から私の興味の深い、色ときもの
にまつわる場面を紹介してみます。

映画のプレビューで、
柴崎コウ演ずる女将軍吉宗の着ている着物が、
ネズミ色であまりに質素なのが「?」と思われた人はいませんでしたか?
映画を観ると、これは、財政再建の折、
ゴージャスな衣装にお金をかけるのは意味がない
という吉宗の考えからなのがわかります。

吉宗が将軍となり、城に入ってすぐのこと。
「かいどり」と呼ばれる、
いわゆる打ち掛けを着せられて怒る場面があります。
「かいどり」は、現在の花嫁衣装に残っていますが、
振袖の上に羽織るものでなんとも贅沢品です。

「いくら質素にと言われても将軍にはこのくらいのものを着ていただかないと・・・」
と忠言する家臣を、なんとその場でクビにしてしまいます。
この財政難の折りに、
こんなものに無駄使いするアホに政治は勤まらん、というのです。

また、将軍と大奥で使える男たちのお目見えの日。
将軍の目にとまるために精一杯カラフルに装い、
競い合う男性陣の中で、主人公・水野は、
びしっと黒で決めています。
周りが滑稽に見えました。

主人公がはじめて大奥に上がったとき、
奉公する先輩たちは茶鼠色の着物と羽織を野暮だとからかいます。
そこで彼は、
「これは江戸っ子がこぞって着たがる流行の色だ。お前達こそ流行遅れ」
とタンカをきります。

江戸時代は質素倹約を旨とし、
庶民は真っ赤な着物などは御法度でした。
そんな中、微妙な色合いを楽しむ文化が育ち、
「四十八茶百鼠」といわれるくらい、鼠色と茶色が流行したということです。
ですから、大奥がいかに庶民とかけ離れたところなのか、
こんなところでもわかります。

通常の大奥では、女優たちの衣装が必見となるところでしょうが、
この大奥はコミカルに男女逆転を描きつつ、
大切な事は何かということもちゃんと折り込んでいます。

男女が逆転しても、やはり民と官は隔絶しているのだ、
というのが私の印象で、そこで「この国をどうしていこうか」
と考える女吉宗に期待がかかります。

政治家の皆様、ぜひご覧あれ。


「猿之助歌舞伎の魅力」へ

2010-10-20 11:06:54 | 観劇・アート
目黒雅叙園にて開催中の「猿之助歌舞伎の魅力」へ。

猿之助歌舞伎の衣装を、東京都指定有形文化財である百段階段で展示するというもの。

衣装と空間の融合を楽しめました。

正直申しまして、猿之助さんの舞台をそれほど観たことはありません。

歌舞伎の衣装、というだけでチケットを買ったというわけです。

さて、テーマは7つに分かれており、
ひとつお部屋を観るたびに、階段を上がって次のお部屋に、
という具合。
お年を召して足の弱い方にはちょっとつらそう。

お部屋に入るごとに、
「はぁ~!」と感嘆する声が漏れ聞こえます。

舞台を客席から眺めるのとは違い、
間近で見る衣装は、どれも重みがあり、ボリューム感に圧倒されます。

印象的だったのはヤマトタケル」の衣装たち。
「織物短冊着付」と名付けられた伊吹山の神様の衣装は、
短冊状の織物を重ねて仕上げられた衣装で、
生地の重さだけでも相当なものでしょう。

また、熊襲兄弟のエビや魚をモチーフにした、
海をテーマの打ち掛けのデコレーションはすごい存在感で圧倒されました。
ひとつひとつ手で付けたというから恐れ入ります。

そのような衣装たちと、
日本画や螺鈿を配したお部屋が違和感なく調和して、
独特の空間でした。


平日の午後ということもあり、
ほとんどが年配の女性グループでしたから、
そのおしゃべりのにぎやかさにちょっと閉口しましたが、
秋のひととき、異次元空間で、
猿之助さんの心意気に少しふれた思いでした。



フネさんめざして?!

2010-10-15 10:46:50 | 着物
カルチャーの着付け講座にいらっしゃる生徒さんの中に、
「『サザエさん』のフネさんみたいになりたい!」
というヤングミセスがいらっしゃいます。

フネさんのように、日常的にきものを着て過ごしたいな、
と思っていたところ、
親しいご友人が着付けを習い、
着物姿でいらしたのを見て、がぜんやる気になったそうです。

目標は、息子さんの卒業式にきもので出席!

これは目立つでしょうね~。

ですから、受講態度もとても熱心。
きもの初心者の方が、ひとつひとつ、
きもののことや、着付けを覚えていく様子を見ると微笑ましくて。

私の学んだ大手の着付け学院では、
学院指定の着付け小物を使い、
カリキュラムも厳密に決まっていました。

しかし現在私の教える講座の場合は、
生徒さんがお持ちの小物を使いますし、
生徒さんの出来がよければ、どんどん先に進みます。

私も、初心者の生徒さんたちと、
きもので一緒にお出かけできるのを楽しみにしています。

上村松園展へ

2010-10-07 22:44:05 | 着物
東京国立近代美術館の上村松園展へ。


上村松園の作品を、
こんなにまとめて観たことがなかったのですが、
すっかりファンになってしまいました。

女性ばかり描いた松園が、
「女性は美しければよい、といふ気持ちで描いたことは一度もない」
と述べたとおり、
女性が女性を描く、ということに、
やはり内面的に特別な情感を覚えます。

代表作「序の舞」は、
仕舞のデッサンとともに公開されており、
いかに精緻に描かれたか、静かな迫力がありました。

その他の作品は、日常のほんのひとこまが描かれているものが多く、
障子を張り替えたり、蚊帳を吊ったり、
また、月を見上げたり、蛍や季節の花を愛でていたり、、、
自然と親しむ女性たちの姿も多くあります。

どの女性も、やわらかな曲線のシルエットで描かれ、
着物もゆったり着付けられていて、
なんとも女性らしい所作が美しい。

私がとくに目を留めたのは、髪。
松園はとくに髪の生え際にこだわったそうで、
淡い墨で何度も重ねて描いたとか。

もともと和髪の型は、
江戸時代には二百種ほどあったといいます。

簪の用い方などみても、
日本独自の美粧は、
洗練されたものだったのだな~と思いました。

そして「母子」をテーマの絵も多く、
女性とは、絆とは、
と考えさせられる展覧会でした。