ｉｎ 仙台

「事実とは、常にひとつきりです」

「どういうことですか？」

「つまり、あなたはこれから一般的常識から考えて、社会人として妻として母として常軌を逸した行動に出る訳です。
28日の月末に近い仕事が忙しい時期に休暇を取り、夫と子供に大嘘を付く為に兄を巻き込み架空の福島出張をでっち上げてもらい、インフルエンザ菌の蔓延する中、大都会経由で電車を乗り継ぎ仙台まで行き、ラーメンズ公演を見に行く訳です。そうですよね？　普通の人は、そんな事しません」

「そうでしょうね」

「で、そういうことをしますと、そのあとの日常の風景が、なんというか、いつもとちっとぱかし違って見えてくるかもしれない。でも見かけにだまされないように。事実というのは常にひとつきりです」



事実は常にひとつきり・・・


９時に自宅を出て、東京駅で家族への福島産お土産を探索しながら村上春樹の新刊とヤングジャンプを購入し、１１時近くの新幹線に乗り込み、１２時半に仙台に到着後駅ビルにてお土産屋をひと回りし、地下鉄にて仙台青少年文化センターまで移動し、新緑眩しきその地に数分立ち止まり、即暗闇の中で１時間５０分間のおとなしくスマートな・・・淡々とした及第点の公演を見て、余韻に浸らない、名残惜しくない、後ろ髪を引かれる思いもない気持ちと共に、再び地下鉄に乗り込み仙台駅まで行き、福島出張なのに仙台名物牛タン弁当のお土産を購入し、１７時半の新幹線にて帰路、２０時５０分帰宅。


これが昨日の、ひとつきりの事実の一部である。



村上春樹［１Ｑ８４］一部参照