三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「八重子のハミング」

2017年05月08日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「八重子のハミング」を観た。
 http://yaeko-humming.jp/

 吉田拓郎の「我が良き友よ」という歌がある。先日亡くなったかまやつひろしが歌ってヒットした曲だ。その中に「男らしいはやさしいことだと言ってくれ」という歌詞がある。男らしさとは強くたくましいことだが、強くたくましいとは即ち、人にやさしくできることなのだと、そういう歌詞である。

 人は無一物の裸で生まれてくる。泣き喚く声は大きいが、それは強さではない。自分の存在を知らせて守ってもらうための泣き声だ。生まれたばかりのときは、ひたすらに弱い存在である。
 成長しはじめると間もなく、強さを求めるようになる。他と比べて優れているという物理的な証拠を求める。それは自分の存在理由を証明し、自己の存在を肯定するためだ。そして人類の大半は、この段階に留まっている。互いに競争し、優劣を争う。世間の価値観に精神の自由を蹂躙され、権威や流行を崇める。豪邸に住んで高級車に乗り、ブランド品を身に着ける。それが勝ち組だと自己満足に浸る。そのくせ心の内では、負け組に陥る恐怖に身を竦ませている。

 強さはやさしさだというフレーズは、すでにおなじみである。多くの映画や小説、漫画で言い尽くされた感さえある。吉田拓郎の歌がリリースされたのは1975年だ。既に40年以上も経っている。
 にもかかわらず、人はいまだに強さがやさしさであることを理解していないように見える。他人を物理的に支配することが強さだと勘違いしている人が多いように見えるのだ。
 店の店員や窓口の役人みたいな、言い返すことのできない立場の人間を土下座させる人が強い人と言えるだろうか。部下に暴力を振るい、怒鳴り散らす上司は強い人間か。格闘技を習い、武器を携帯する人は強いのか。軍事に膨大な予算を費やし、強大な武器を手に入れたら、その国は強い国なのか。
 誰もが、そんな人は強い人ではないし、そんな国は強い国ではないと思うだろう。表面的な強さを求めるのは恐怖の裏返しであることは誰でも知っている。知っているが、我々は内なる恐怖をなかなか克服できない。

 この作品は、やさしさについての映画である。つまりそれは、強さについての映画でもあるということだ。人は無防備で生まれ、成長するにつれて強さを獲得していく。しかしそれはおもに他者に対しての強さであって、自分の内なる恐怖を克服する強さではない。
 アルツハイマーを患った人は、徐々に赤ん坊に戻ってゆくような弱さそのものの存在である。そういう存在に対してやさしくすることは、自分のなかの恐怖を克服し生理的な嫌悪感を律する強さが必要とされる。
 高橋洋子はそんな無防備な赤ん坊のような老妻を存分に演じていた。夫役の升毅はやさしく妻を介護する夫の内なる強さを十分に表現していた。ベテラン俳優の渾身の演技だ。升毅はこの映画が初めての映画主演とのことだが、1億3千万人を泣かすことができる作品の主演俳優として、誇れる仕事をしたと言っていい。

 印象的な台詞が満載の作品で、観客によって心に残る台詞が違うだろうが、ひとつ挙げるとすれば、孫が授業参観で読み上げる短い作文だ。アルツハイマーの祖母をいたわる強さとやさしさに満ちた文章で、泣かずにいられる人は少ないだろう。


レース結果~NHKマイルカップ

2017年05月07日 | 競馬

NHKマイルカップの結果
1着アエロリット   無印
2着リエノテソーロ  無印
3着ボンセルヴィーソ 無印

私の印
◎アウトライアーズ  13着
〇プラチナヴォイス  11着
▲ジョーストリクトリ 12着
△タイセイスターリー 14着
△ガンサリュート   18着

 勝った馬が全部二桁着順で、馬券は大ハズレ。ここまで外すとまったく悔しさがない。
 レースは前半46秒1、後半46秒2の平均ペース。前の馬にも後ろから行った馬にもチャンスのある展開だったが、スタートをフライング気味に出て終始先行したアエロリットが直線でもバテずに伸びて勝利した。期待したアウトライアーズは内目の経済コースを進んだが、直線ではまったく伸びなかった。
 13番人気のリエノテソーロが2着にきて3連単は30万円近い配当になった。1度くらい、こういう配当の馬券を的中してみたいものだ。

 来週はヴィクトリアマイル。昨年2着だった実力馬ミッキークイーンで順当だと思うが、どうだろうか。


NHKマイルカップ~アウトライアーズ

2017年05月07日 | 競馬

◎アウトライアーズ
〇プラチナヴォイス
▲ジョーストリクトリ
△タイセイスターリー
△ガンサリュート

 あまりに混戦で、正直に言えば買いたい馬がいない感じだ。皐月賞組と桜花賞組でいえば、勝ちタイムから皐月賞組を上位にみた。
 本命は皐月賞組のアウトライアーズ。ひいらぎ賞でウインブライトに勝っていることを評価する。皐月賞ではいいところが出なかったが、本来的にはマイル向きの素軽いタイプ。内枠を引いたし、ロスなく立ち回って直線で抜け出すことに期待する。
 相手も同じく皐月賞組のプラチナヴォイス。末脚の切れは劣るが、先行しての粘り腰がある。スプリングステークスでアウトライアーズに次ぐ2着だった。
 ニュージーランドトロフィを12番人気で勝ったジョーストリクトリが単穴。フロックの可能性もなきにしはあらずだが、毎年このレースから馬券対象が出ている。絶好調の武豊騎手が鞍上というのも心強い。
 同じくニュージーランドトロフィで7着のタイセイストーリー。デビュー2戦が1番人気だったように、元々の素質は高く評価されていた。ここで人気を落とすようなら狙い目だ。
 大外のガンサリュート。人気はなさそうだが、ダノンシャンティとクロフネなら、マイルが向いていない筈がない。

 馬券は◎アウトライアーズを頭の3連単(3-5、7、9、18)12点勝負


映画「Fast & Furious 8」(邦題「 ワイルドスピード Ice Break」)

2017年05月07日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「Fast & Furious 8」(邦題「 ワイルドスピード Ice Break」)を観た。
http://wildspeed-official.jp/

 登場人物のそれぞれに見せ場があり、運転技術、パワー、格闘術を華麗に発揮する。特にステイサムはジャッキー・チェンのアクションを彷彿とさせる、コミカルで見事な身のこなしを見せていた。
 ファミリーのメンバーは皆、頭の回転が速く、運動神経も抜群で、何よりも強運の持主だ。こういう連中が活躍するためには敵役が強大でなければならない。
 その点で、シャーリーズ・セロンの役柄の設定はなるほどと納得させるものがある。現代はコンピュータと電子ネットワークの時代で、サイバー技術の天才はハッキングによって世界のインフラを自由に利用できる可能性がある。クレジットカードにもマイクロチップが搭載される時代だ。自動車も航空機も船舶もコンピュータ制御なしでは動かない。武器も然りである。それらがすべて頭のおかしいハッカーに乗っ取られたらと思うと空恐ろしい。現実にはそう簡単ではないだろうが、もしかしたらと思わせるところに意味がある。
 シャーリーズ・セロンはその狂気の役を存在感たっぷりに演じていた。この女優は去年の「ダーク・プレイス」では心に闇を抱える女性を情緒豊かに演じていたかと思えば、「マッドマックス 怒りのデスロード」では隻碗の怪女の役がハマっていた。いかにも21世紀らしい女優である。

 このシリーズは最初の作品から比べると、随分進化している。本作品には、テクノロジーの進歩が人間による制御とのバランスを失ったときに何が起こるのかという現代的な世界観があり、ハリウッドのお気軽SF映画のラインナップとは一線を画している。ストーリーは若干強引な部分があるが、派手なアクション映像の作りこみは流石で、娯楽として楽しむのには充分だ。


映画「The Purge: Election Year」(邦題「パージ:大統領令」)

2017年05月06日 | 映画・舞台・コンサート

 映画「The Purge: Election Year」(邦題「パージ:大統領令」)を観た。
http://purge-movie.com/

 トランプ大統領の出現前に製作された映画シリーズだが、不寛容な方向に向かいつつある人類を予言するかのような作品である。
 どの国の政権も様々な政策を実施するが、大方の政策は民衆に注目されることはない。マスコミが騒ぎ立てた政策だけが、時には世論を二分するほどの論争になることがある。そういう政策そのものについては、良し悪しを考える人もいれば、まったく考えない人もいる。 しかし、その政策が実施されたら自分は得をするのか損をするのかについては、考えない人はいないだろう。
 日本でもすでに成立した秘密保護法やこれから成立する共謀罪などの法案について、自分にとって得か損かを判断基準にする人が多いに違いない。そのとき、いわゆる正常性バイアスが働いて、自分は大丈夫、言論の自由を制限されたり逮捕されたりすることはないと思う人が多ければ、どれだけ知識人や戦前を知る高齢者が警鐘を鳴らしたところで、これらの法案は簡単に成立してしまうだろう。
 そして既にそうなりつつある。 大戦時の日本やヒトラーを持ち出すまでもなく、民衆は論理的な思考よりも自分の感情と目先の利益を常に優先する。

 この映画はありそうもない法案が現実となったときに人々がどのように振る舞うか、その狂気と正気を描いた作品である。 狂気の法律が招くのは狂気の世の中だ。そしてその陰には、必ず陰謀がある。 トランプ大統領の出現よりも随分前に第一作目が作られたのは、関係者の慧眼と先見性を示している。
 作品の大部分を占める、狂気と化した夜の町は尋常な怖さではない。途中で何度か飛び上がりそうになったほどだ。しかし、そのスリルこそがこの映画の真骨頂だと思う。人間は基本的にスリルを味わいたい生き物だ。
 心臓の弱い人を除いて、かなりおすすめの映画である。


レース結果~天皇賞春

2017年05月01日 | 競馬

天皇賞春の結果
1着キタサンブラック  無印
2着シュヴァルグラン  ▲
3着サトノダイヤモンド ◎

私の印
◎サトノダイヤモンド 3着
アルバート     5着
シュヴァルグラン  2着
△トーセンバジル   8着
△ディーマジェスティ 6着

 馬券は無印のキタサンブラックが勝ったのでハズレ。展開的には当然の結果で、サトノダイヤモンドがもう少し強いと思っていたのが敗因。

 レースは1000m通過が58秒3のハイペース。さらに2000m通過が1分59秒7、3000mが3分0秒7という極限のペースで進んだ。菊花賞のレコードタイムがトーホウジャッカルの3分1秒0、去年のサトノダイヤモンドの勝ちタイムが3分3秒3だったことを考えると、今回の天皇賞がどれだけ消耗戦だったかが解る。逃げたヤマカツライデンは直線ではもうヨレヨレだったが、3秒2差の15着に踏みとどまったのは大したもので、この馬はもう少し距離の短いレースで狙えるだろう。
 勝ったキタサンブラックはこのペースを2番手で追走。ヤマカツライデンから離れていたので、実質この馬が逃げている形だ。それでもペースは緩くはなく、全馬にとって息の入らない厳しい展開だった。ゴールドアクターがもっと前につけて、早めにキタサンブラックに競りかける展開を予想していたので、それがなかった分だけキタサンブラックに余力が残っていた。
 サトノダイヤモンドは最速の上がりタイムで迫ってはきたが、父親のような爆発的な瞬発力は発揮できなかった。外枠から出て、外々を回ったので、キタサンブラックに比べたらかなりの距離ロスをしていたことは確かだ。0秒2差なら実力に差がなかったと考えていい。もう少し強ければ、早めにキタサンブラックに並びかけて競り落とす展開も考えられたが、ルメール騎手はそこまで強気な騎乗はできなかったようだ。
 佐々木大魔神のシュヴァルグランが2着。去年が3着だから、この馬もG1級の実力の持ち主である。

 来週はNHKマイルカップだ。連勝していたり無敗だったりする抜けた馬がいないので、皐月賞と桜花賞から参戦する組が強そうだ。