三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「ひるね姫」

2017年03月31日 | 映画・舞台・コンサート

映画「ひるね姫」を観た。
http://wwws.warnerbros.co.jp/hirunehime/

 胆の据わった主人公である。今時の女子高生がいくら強気でも、ここまで豪胆な女の子は滅多にいそうにない。そして驚異的な身体能力。実写化はよほど沢山のCGを駆使しないと難しいだろうし、そもそも沢山のCGを使う時点で実写化とは言えなくなってしまう。身体能力だけでなく、メンタルも強すぎて、この主人公の役を生身の女優さんが演じることは不可能である。ひどい目に遭っても全然泣かないどころか、動じた様子さえ見せずに落ち着いて次の行動を考える。精神面は人間よりもロボットに近い。そういう女子高生を人間が演じた場合、どんな達者な女優さんでも、少なからぬ違和感を与えてしまうだろう。
 ところが、実写ではなくてアニメの主人公だとすんなり受け入れられる。2メートルのジャンプをしても斜めの鉄骨を駆け上がっても、こんなことはあり得ないどと批判的な気分になったり、演出の強引さを感じたりすることがない。アニメの表現は生身の人間の具体性に較べれば、どこか抽象的であり、観客にとっては非現実的である。そして観客は無意識のうちに、アニメの抽象性と非現実性を大前提として映画を観ている。実写だと受け入れられない演出が、アニメだとすんなり受け入れられ、感情移入までされるのはそのためなのだ。
 実はこの点にこそ、近年のアニメ映画の隆盛の秘密がある。アニメでなければ出来ない表現を映画にしているからこそ、実写では感情移入出来ない主人公に感情移入し、実写では共感できない世界観に共感する。「君の名は。」も「この世界の片隅に」も、この法則に則っているのだ。

 本作品も例外ではなく、巨大な会社組織の中で働く人々が人格をスポイルされているというスケールの大きな世界観を前提に、利益追求だけを是とする勢力から追い詰められつつ、ひとりの女子高生である主人公が極めて日常的な感性を堅持しながら、勇気を出して立ち向かっていくという、あり得ない物語である。あり得ない物語でありながら、アニメの抽象性によって観客には十分なリアリティをもって訴えかけてくる。老若男女関係なく、主人公の行動にハラハラさせられるのだ。アニメの特性を存分に生かした素晴らしい作品である。


レース結果~高松宮記念

2017年03月26日 | 競馬

高松宮記念の結果
1着セイウンコウセイ 〇
2着レッツゴードンキ ▲
3着レッドファルクス 無印

私の印
◎メラグラーナ   10着
〇セイウンコウセイ 1着
▲レッツゴードンキ 2着
△クリスマス    14着
△ナックビーナス  8着 

 馬券は3連単の頭は当たったものの、3着のレッドファルクスを消しでハズレ。ちょっと消し方が強引すぎたか。

 稍重の馬場は時計が1秒ほど余計にかかり、先行力があって馬力のあるセイウンコウセイにぴったりだった。展開もその通り、先行勢のすぐ後ろにつけて直線は余裕をもっての追い出し。2着に桜花賞馬レッツゴードンキ、3着にスプリンターズS馬レッドファルクスの両実力馬が突っ込んできたが、勝負は決していた。
 本命に推したメラグラーナは終始後方のままでいいところなし。クリスマスナックビーナスも似たりよったりの結果。予想がやや無理筋であったことは承知しているが、暫くはこのスタイルで予想したい。
 来週はG1に昇格した大阪杯だ。サンケイがG1というのが、かなりの違和感があるが、G1はG1。マカヒキキタサンブラックが出れば、確かにG1として適わしいメンバーではある。キタサンブラックが久々の分だけマカヒキにアドバンテージがありそうな気がするが、狙いは前走の京都記念で出遅れながらも上がり最速の末脚で4着まで追いこんできたミッキーロケット。上昇が見込める4歳馬だけに、一発があっても不思議ではない。 


高松宮記念~メラグラーナ

2017年03月25日 | 競馬

◎メラグラーナ
〇セイウンコウセイ
▲レッツゴードンキ
△クリスマス
△ナックビーナス

 前走で大敗している馬の巻き返しがどうかだ。どんな世界でもそうだが、全体のレベルが上がってくると実力の個体差が小さくなる。二十年前くらいまでは新馬戦だと5馬身以上の差をつけて勝つ馬が結構いた。そしてそういう馬がクラシック候補になっていた。最近はそれほど差をつけて新馬戦を勝った馬があまりいない。実力差が小さくなってきたからだと思われる。そんな中で、月曜日のフラワーカップを5馬身の差をつけて勝ったファンディーナはここ数年で一番の勝ちっぷりを見せた馬だ。新馬戦では2着に1秒5差、実に9馬身の差をつけて楽勝している。こういう馬は牡馬でも見当たらない。是非ダービーに出走して欲しい。
 実力差が小さい中で大敗しているということは、それだけ巻き返しが難しくなってきているということだ。香港スプリントで6馬身以上負けたレッドファルクスは、前哨戦が使えなかった点がかなりのマイナス。阪急杯で1秒1差(約7馬身差)で8着に負けたシュウジは気性難のムラ馬だ。思いきって両馬とも消しとした。

 本命は1番人気で2連勝中の5歳牝馬メラグラーナ。大型馬であることと乗り替わりがないし、4戦連続で1番人気に推されていて、1200mが5102の好成績、中京コースの勝ち星もある。
 強敵は4歳牡馬のセイウンコウセイ。去年まで条件戦を走っていた上り馬だが、G3の前走でタイム差なしの2着に好走し、通用する力を見せた。
 変則のローテーションだが、京都牝馬ステークスから挑戦する桜花賞馬レッツゴードンキが3番手。エンジンのかかりが遅い面があり、1200mではゴール前で突っ込んでくるも3着がやっとというレースが去年2回あった。しかし末脚は確実だ。多分このレースも後方から行くだろうから、勝つまではどうかと思うが、2着か3着に食いこむ可能性はかなり高い。
 母父ステイゴールドにバゴをつけたクリスマス。人気はなさそうだが、オーシャンステークスでは◎メラグラーナと0秒1差の3着。1200m戦も5133の好成績。掲示板があっても不思議ではない。
 同じくオーシャンステークスで◎メラグラーナと接戦をしたのが4歳牝馬のナックビーナス。17番枠はかなり不利なのだが、1200mを4302の実績がある。

 馬券は3連単フォーメーション◎〇-◎〇▲△△(6、12-3、6、10、12、17)24点勝負


映画「彼らが本気で編むときは、」

2017年03月23日 | 映画・舞台・コンサート

映画「彼らが本気で編むときは、」を観た。
http://kareamu.com/
 トランスジェンダーがテーマの分かりやすい作品である。
 かつては肩身の狭い思いをしていた性同一性障害の人たちも、時代を経てその存在を正当に認められるようになってきた。それは彼らの努力というよりも、医学研究の功績によるところが大きい。所謂オカマだのオナベだのと呼ばれて差別を受けてきた人々について、それは性同一性障害という症候群であることを世間に知らしめ、本人の責任ではない生まれつきの特徴なのであるという「常識」を定着させた。人間の中には人種や民族の差に無関係に、性同一性障害の人たちが存在する。
 お陰でカミングアウトのハードルも少し下がってはきた。しかしハードルがまったくなくなった訳ではない。依然として差別意識は存在するし、結婚や就職など、人としての評価が量られる場面では、不利を被ることもある。
 映画ではその辺りの差別する人たちの代表として小池栄子が同級生の母親役を好演していた。典型的な偽善者の役だ。この人は美人で頭もよく、演技もとても上手だ。脇役として非常に重宝する女優さんだと思う。しかし逆にそれが災いして、なかなか主役に登用されない気がする。そろそろ代表作を得てもいい頃である。
 生田斗真の怪演には驚いた。ありがちなトランスジェンダーの類型かと思っていたが、いくつかの心に残る台詞を言う。ひとつは少女に向って語る「怒りを感じたときはじっと踏ん張って通り過ぎるのを待つ」という言葉。そして怒りをこらえた少女に「偉かったね、よく我慢したね」とねぎらう言葉。これらの言葉が価値を持つのは、その前に相手役の桐谷健太が言う「リンコさんみたいな心の人と付き合うと、男だとか女だとかどうでもよくなるんだよな」という台詞による。
 素直で裏表がなく、嘘をつかず、誰にでも親切で、怒りを覚えたときは編み物をしてじっと我慢し、通り過ぎるのを待つ。そんな人がいたら、桐谷健太の言う通り男でも女でもどうでもよくなる。そしてつい思ってしまうのだ。もしかしたら自分も、そういう人間になれるのではないか?
 映画としての評価はともかく、観終わった後で明日に希望が持てるようになる、清々しい作品である。


レース結果~スプリングステークス

2017年03月20日 | 競馬

スプリングステークスの結果
1着ウインブライト  無印
2着アウトライアーズ ▲
3着プラチナヴォイス △ 

私の印
◎サトノアレス    4着
〇エトルディーニュ  6着
▲アウトライアーズ  2着
△トリコロールブルー 5着
△プラチナヴォイス  3着

 馬券は頭から買ったサトノアレスが4着でハズレ。
 勝ったウインブライトは前走の若竹賞を1番人気で強い勝ち方をしているので候補には入れていたが、未勝利を勝ち上がったのが3戦目で、素質という面で軽視してしまった。勝ちタイムは若竹賞と0秒1しか違わないが、今回の方がややペースが速く、上りがかかっている。どちらのレースも後方から進んでおり、展開は同じだ。皐月賞でもこのスタイルを貫けば、掲示板以上があるかもしれない。ただ今回馬体重が12キロ減の460キロだったのが少し心配。
 4着に負けたサトノアレスはスタートで安めを売って最後方からの競馬。阪神大賞典のサトノダイヤモンドと同じような展開だったが、こちらは3コーナーから4コーナーにかけてまくりきれず、直線では伸びてはいるが、前の馬を捉えるほどではなかった。皐月賞では上位は難しそうだ。
 負けた馬の中で次回に繋がりそうなのがステイゴールド産駒のトリコロールブルー。4角ではサトノアレスよりも後ろから、しっかりした末脚で伸びてきた。それでもウインブライトを逆転するまではどうかと思う。

 皐月賞を展望すると、共同通信杯馬のスワーヴリチャードが最有力かと思っていたが、そのときの2着馬エトルディーニュが今日のレースで6着に負けたことで、俄かに混沌模様になってきた。今日の勝ち馬に加えて、弥生賞のカデナ、昨日の若葉賞の1、2着馬にも注意が必要だ。
 昨年の3歳馬のレベルが高すぎたとはいえ、今年の牡馬クラシック戦線は牝馬に較べてやや点睛を欠きそうな予感がする。 


レース結果~阪神大賞典

2017年03月19日 | 競馬

阪神大賞典の結果
1着サトノダイヤモンド ◎
2着シュヴァルグラン  〇
3着トーセンバジル   ▲

私の印
◎サトノダイヤモンド 1着
〇シュヴァルグラン  2着
▲トーセンバジル   3着
△マドリードカフェ  6着
△レーヴミストラル  9着
△ワンアンドオンリー 7着
△トウシンモンステラ 8着

 馬券は3連単740円が的中。私の馬券史上、最低倍率の3連単的中だった。しかし的中は的中。トリガミにならなかったことをよしとする。
 まだ馬体に余裕があるように見えたサトノダイヤモンドはスタートで出負けして後方からの競馬となってしまったが、それでも慌てずに3コーナー過ぎから仕掛けて、先に抜け出したシュヴァルグランを手応え十分に交わし、1馬身半も突き離してゴール。レコードと0秒1差の好タイム勝ちでもあった。凱旋門賞まで突き抜けるかもしれない。
 人気通りシュヴァルグランが2着で、全国の競馬ファンの大半が予想した通りの結果となった。大崩れしない実力馬だが、G1になると強い相手がいるのでなかなか勝ちきれない。トーセンバジルの3着は好走と言えるだろう。G3くらいならそこそこ活躍できるかもしれない。 


スプリングステークス~サトノアレス

2017年03月19日 | 競馬

◎サトノアレス
〇エトルディーニュ
▲アウトライアーズ
△トリコロールブルー
△プラチナヴォイス

 レベルに疑問が残るとはいえ、朝日杯G1を勝ったサトノアレスが格では断然。この馬から入る。2着争いは多士済々だが、G3共同通信杯で2着したエトルディーニュ、ひいらぎ賞勝ちで2000mも勝っているアウトライアーズ、前走休み明けで好時計勝ちのトリコロールブルー、G3きさらぎ賞4着で先行力のあるプラチナヴォイスまで。

 馬券は◎サトノアレスを頭の3連単◎-〇▲△△(9-5、7、8、11)の12点勝負。 


阪神大賞典~サトノダイヤモンド

2017年03月19日 | 競馬

◎サトノダイヤモンド
〇シュヴァルグラン
▲トーセンバジル
△マドリードカフェ
△レーヴミストラル
△ワンアンドオンリー
△トウシンモンステラ

 さすがにこのメンバーでは◎サトノダイヤモンドに勝てそうな馬はいない。相手も〇シュヴァルグラン1頭で、3着争いのレースと見た。
 ジャパンカップでは11着に負けたが、その前には3連勝をしていて底を見せていないトーセンバジル、阪神コースのオープンレースで2着したことのあるマドリードカフェ、長距離3勝のレーヴミストラル、このところ常識に適ってきたダービー馬のワンアンドオンリー、阪神コースが得意なトウシンモンステラまで。

 馬券は3連単フォーメーション◎-〇-▲△△△△(9-3-4、5、6、7、10)の5点勝負。 


映画「Allied」(邦題「マリアンヌ」)

2017年03月19日 | 映画・舞台・コンサート

映画「Allied」(邦題「マリアンヌ」)を観た。
http://marianne-movie.jp/

 この映画のマリオン・コティヤールはとても美しい。昔の映画「カサブランカ」で見たイングリッド・バーグマンを彷彿とさせるくらいの美しさだ。舞台も同じ第二次世界大戦真っ最中のカサブランカ。意識しない関係者はいなかっただろう。バーグマンの映画にはヒトラーに対して批判的な要素がたくさんあったが、こちらの作品では、エピソードとしてラ・マルセイエーズの話は出てくるが、作品自体には反ドイツの要素はない。
 世界観という点では、「カサブランカ」よりもこちらの作品の方がスケールが大きい。軍隊という、政治体制そのものとも言うべき組織にいる人間が、祖国という幻想と、現実の女性との暮らしの狭間に立って苦しむ。仕事では人を殺すのに何の躊躇もなく、殺した後の罪悪感も後悔もない。後味の悪ささえまったく感じさせない。そういうタフな男が妻のことでとことん悩むギャップもいい。
 祖国を捨てて名前も捨てて、愛に生きようとする女をマリアン・コティヤールが色気たっぷりに演じている。この人は「たかが世界の終わり」では化粧気のない冴えない中年の妻を演じていたのに、ここでは驚くほどの婀娜っぽさを発している。同じ女優とは思えないほどで、演技の幅には舌を巻く。
 で、コティヤールが主役かというと、そうではないと思う。やはり主人公は祖国という呪縛から精神的に逃れられずにいる軍人の夫を見事に演じたブラッド・ピットだ。離婚したアンジェリーナ・ジョリーが自分の世界を掘り下げる方向に向かっているのに対して、ブラピは世界観を時間的にも空間的にも広げている。このふたつは相反するものではなく、どちらも極めれば、同じひとつの真実に辿り着くのではないかという期待感がある。
 誰もが知っているスイング・ジャズの大ヒット曲「Sing Sing Sing」が象徴的に使われている。この明るい曲が、この暗いテーマの映画に、何故かよく似合う。戦争というのはそういうものなのかもしれない。


映画「雪女」

2017年03月18日 | 映画・舞台・コンサート

映画「雪女」を観た。
http://snowwomanfilm.com/

 ラフカディオ・ハーンの「怪談」は、柳田国男の「遠野物語」にも通じるような、静かな語り口の物語集である。ストーリーと若干の説明以外に余計な情報はまったくない。教訓めいた言葉も、縁起や因縁に関する言及もない。物語の底流にあるのは、未知の、理解不能な存在に対する恐怖だけだ。
 キリスト教やイスラム教のようにすべてを司る唯一の神の存在を崇める一神教の精神性と異なり、八百万(やおよろず)の神という概念が古来からある日本では、万物に神が宿っている。神は崇高な存在ではなく、人間と同じように欲望があり、怨みもすれば嫉妬もする。
 雪女もその神のひとつだと思われる。人間と同じように我儘勝手だが、人知を超えた能力をもつ怖ろしい存在である。しかし神なので怖ろしいだけではなく人知を超えた美しさを持つ。一般に雪男がどこまでもモンスターの範疇を出ないのに対して、雪女は自然に対する畏怖と憧れの混じった複雑な思いが生み出したユニークなキャラクターなのである。
 雪女を演じた杉野希妃は顏も身体も美しく、妖艶である。それを強調するためにも、巳之吉役は偉丈夫であることが望ましく、青木崇高はまさに適役であった。
 惜しかったのは登場人物に経年変化があまり感じられなかったことだ。娘のウメが大きくなった頃には、巳之吉がユキと出遭ってから15年も経っているのだから、巳之吉もハルもばあばも相当に老けていなければならない。そうすれば、ユキだけが歳をとらないのが際立ち、物語の異様さも増すはずだ。
 しかし巳之吉もハルもばあばもユキが家に来た頃とあまり変わらない。ばあばの歳を考えると、15年経ってもまだ生きていさせるために、周りも含めてあまり歳を取らない設定にしたのかもしれないが、ユキも見慣れてくると凡俗の女に見えてきてしまうから、やはりまったく歳を取らない、人知を超えた美しさを表現すべきだったと思う。
 その点をのぞけば、娘役の山口まゆもとても可愛かったし、静かな緊張感に満ちた、いい映画だったと思う。ユキの最後のシーンは意外にあっさりしているが、怪談はそんなものだ。むしろ最後は、老衰した巳之吉を看病する、14歳からまったく歳を取っていないウメのシーンがあれば、尚よかった気がする。