映画「祈りの幕が下りる時」を観た。
http://inorinomaku-movie.jp/
前作の「麒麟の翼」では中井貴一が主役を脅かすほどの存在感のある役を演じていたが、本作ではそれほど強烈な存在感のある役はなかった。しかし主人公に縁のある人物たちがスポットを当てられていて、それぞれのエピソードが次第につながっていくという、なかなか目の離せない仕上げになっている。特に小日向文世は流石の演技で、誰も恨まず、泣き言も言わず、言い訳もしない京都の男を、人間の存在の儚さを見せつけるように演じていた。
刑事物だから殺人事件の犯人を追うのがストーリーの中心だが、見つけたはずの証拠が目論見と違っていたりして捜査が二転三転する。主人公が真実に迫るにつれて、母の晩年や犯人の過去が明らかになっていく。それがなんとも物悲しい内容なのだ。
泣けるほどではないが、良くも悪くも人々が一生懸命に生きたのだというカタルシスがある。見終わるとスーッと肩の荷が下りるような感じがした。それはまさにタイトルの通り、悲劇の幕が下りたのであった。