アゲハ Papilio xuthus(Linnaeus, 1767)は、アゲハチョウ科(Family Papilionidae)アゲハチョウ亜科(Subfamily Papilioninae)アゲハチョウ族(Tribe Papilionini)アゲハチョウ属(Genus Papilio)アゲハチョウ群(xuthus group)のお馴染みのチョウである。アゲハチョウとも呼ばれるが、この呼び名は他のアゲハチョウ亜科のチョウとの混称や総称として使われることも多く、図鑑等では「アゲハ」あるいは「ナミアゲハ」としていることから、本ブログでは「アゲハ」と表記した。
アゲハは、北海道から沖縄まで広く平地に生息しており、地域にもよるが3~10月くらいまで飛んでおり、都会の真ん中でも見ることができる最もポピュラーな存在である。幼虫の食草は、ミカン、カラタチ、サンショウなどのミカン科植物の葉で、緑の少ない住宅地でもミカンの鉢植えさえあれば生息できる。
本ブログ3月28日の記事「ヤマトシジミ」は、「食草のカタバミさえあれば、どこでも繁殖できる普通種で、日本で一番生息数が多いチョウ」と紹介したが、アゲハは、歌手ポルノグラフィティの「アゲハ蝶」にも「ヒラリヒラリと舞い遊ぶように姿見せたアゲハ蝶」と歌われているように、見たことはなくても「アゲハ」という名前を知らない人は、いないのではないだろうか。
私は、昆虫少年だった頃、部屋の机の上にはビンに刺さったミカンの枝があり、アゲハの幼虫を育てていた。簡単に成虫まで育てられるので、飼育観察の対象としては格好のチョウだ。終齢まで育つと枝では蛹にならずに、部屋のあちこちに移動して蛹になりため、よく母親に驚かれたものである。アゲハから教わったことは多い。現在でも、我が家のベランダにあるミカンの鉢植えではアゲハが育ち、飛び立っていくのが楽しみになっている。
さて、この4月は、ホタルに関しては多くの新たな知見を得て、その生態の不思議さに探究心を掻き立てられているが、自然風景と昆虫の撮影は予定通りに運んでいない。天候やタイミング、気合不足が原因で、桜は、一カ所だけで終了。天の川もダメ。絶滅危惧種のチョウには出会えず、トンボも撮れず仕舞い。何も撮らずに心折れながら帰ることは良くあることで、諦めるしかない。
先日は、そのような状況の中、目の前に数頭のキムネクマバチが飛び交っていたので、気分転換と悔し紛れのやけのやん八で連写していると、羽化から間もないであろう春型のアゲハが現れた。私は、無意識にカメラを向けていた。
昆虫の写真を撮り始めて46年経ったが、実は、アゲハの写真は、過去にたった1枚しか撮っていなかった。飼育観察をしたりしてあまりにも身近な存在だからなのか、子供の頃から憧れの種やシーンではないからなのか、アゲハはいつも被写体からは外れていた。昨今は、出会いすら難しい種や遠くまで遠征しなければ生息していない種を収めること、あるいは産卵などの生態写真の撮影に重点を置いているために、計画通りに進まないことが多いが、今回のアゲハとの出会いは、楽しく昆虫写真を撮っていた昔を、そしてなぜ写真を撮っているのかを思い出したひと時であった。
「初心忘れるべからず」自然と生き物たちへ感謝と敬意をもって接することは勿論、今、ベランダのミカンの鉢植えで育つアゲハを、写真として記録し残してあげることも、私にとって大切なことだと感じている。ちなみに、数十枚写したキムネクマバチの飛翔写真は、すべてピンボケであった。
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