ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ヒメギフチョウ(交尾)

2018-05-03 20:53:37 | チョウ/アゲハチョウ科

 ヒメギフチョウ Luehdorfia puziloi (Erschoff, 1872) は、アゲハチョウ科(Family Papilionidae)ウスバアゲハ亜科(Subfamily Parnassiinae)ギフチョウ属(Genus Luehdorfia)に分類されるチョウで、ロシア沿海から朝鮮半島、北海道から東日本に分布し、日本国内では北海道亜種と本州亜種に分かれる。ヒメギフチョウ本州亜種 Luehdorfia puziloi inexpecta Sheljuzhko, 1913 は、わずか9つの県にしか生息しておらず、新潟県、群馬県、岐阜県のRDBでは絶滅危惧Ⅰ類、青森県、福島県では絶滅危惧Ⅱ類、岩手県、宮城県、山形県、長野県では準絶滅危惧としており、環境省RDBには準絶滅危惧(NT)として記載されている。また長野県白馬村は天然記念物に指定しているほど、貴重なチョウである。
 同属のギフチョウ Luehdorfia japonica Leech, 1889 とは、前翅のいちばん前方外側の黄白色の斑紋がずれず、他の斑紋と曲線をなしている点や尾状突起が短く先がとがっている点が異なっており、大きさも少し小さい。また、ギフチョウほどではないが、地域変異、個体変異が見られ、「赤上がり」や稀に「イエローテ―ル」「白化型」も出現する。「赤上がり」 とは、後翅表面の遠位内側にある大きな赤紋以外に小さな赤紋が黒帯の内側に沿って現れる個体変異で、群馬県の赤城山麓に生息するヒメギフチョウ(赤城姫)に多く見られるが、白馬村においても 撮影している。(写真:4)また、この小さな赤紋が消失している個体もいる。(写真:5)ちなみに「イエローテ―ル」とは、後翅肛角紋の赤色が淡黄色になる個体変異である。

 今年も長野県白馬村へ。昨年は5月4日に訪問しているが、今年は桜の開花も早く、様々な昆虫の発生も早いので、おそらく白馬村も早いだろうという予測のもとで4月29日に訪問。昨年は満開であった中綱湖のオオヤマザクラはすでに葉桜。予想通り白馬村の季節も進んでいる。
 午前9時半から、昨年見つけた林でチョウが飛んでくるのを待つ。気温は17℃で、風もない。すぐにチョウが現れ、地面に止まったり、スミレやカタクリで吸蜜を行う。とりあえず撮れる個体をすべて撮影するとヒメギフチョウとギフチョウの割合は半数ずつであり、ギフチョウは羽化したばかりのように新鮮な個体が多かった。ちなみにギフチョウとヒメギフチョウの分布は明確に分かれており、この2種の分布境界線はリュードルフィアライン(ギフチョウ線)と呼ばれているが、長野県白馬村は分布境界線上にあり、ギフチョウとヒメギフチョウ本州亜種の混生地となっている。
 白馬村では、ヒメギフチョウが先に羽化し、少し遅れてギフチョウが羽化してくる。羽化の時期は、両種ともに林内の残雪の量とも関係があると言われているが、ここ数年は雪解けが早く、 今年は4月の気温が高かったので、白馬村の発生は例年より一週間以上早いように思う。ヒメギフチョウは、ちょうど桜が咲き始めた頃に発生し、ギフチョウでは、桜が散った頃と重なるようだ。
 今回の訪問では、午前中に吸蜜と探雌活動。吸蜜後はカラマツの梢でしばらく休息。昼近くからは探雌活動で花には一切止まらないという状況であった。しかしながら、静止、吸蜜という定番写真のほか、初めて生態写真である交尾態を撮影することができた。また、静止開翅という図鑑写真おいても、その特徴が分かる綺麗な個体を撮ることができたと思う。

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ヒメギフチョウの写真

ヒメギフチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200(撮影地:長野県白馬村 2018.4.29)

ヒメギフチョウの写真

ヒメギフチョウ(吸蜜)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250(撮影地:長野県白馬村 2018.4.29)

ヒメギフチョウの写真

ヒメギフチョウ(吸蜜)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 320(撮影地:長野県白馬村 2018.4.29)

ヒメギフチョウ(赤あがタイプ)の写真

ヒメギフチョウ(赤上がりタイプ)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F4.5 1/640秒 ISO 200(撮影地:長野県白馬村 2017.5.04)

ヒメギフチョウの写真

ヒメギフチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 250 -1/3EV (撮影地:長野県白馬村 2014.5.03)

ヒメギフチョウ(交尾)の写真

ヒメギフチョウ(交尾)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 2500(撮影地:長野県白馬村 2018.4.29)

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