鬼谷川のホタル ~岐阜県郡上市和良町~
ここ数年、毎年訪れている岐阜県郡上市和良町へ、今年もゲンジボタルの観察と撮影に行ってきた。ただし今回は、いつもの場所ではなく、これまで訪れたことがない鬼谷川(おんだにがわ)の上流域に行くことにした。
6月20日は仕事で、勤務は翌朝4時まで。朝5時に帰宅し出発前まで仮眠しようとしたが、結局寝られず、10時半に郡上市和良町を目指して出発。中央自動車道の国立府中ICから入って中津川ICで降り、和良町の道の駅には15時半に到着。「和良蛍を守る会」のM氏に案内していただき現場へ移動。ゲンジボタルの生息の状況や飛翔の様子、周辺環境などを聞いた。M氏のご自宅にてご馳走を頂き、しばし休憩。18時半よりセッティングを開始し日没を待った。
鬼谷川には、下流域から上流域まで数キロにわたってゲンジボタルが生息しているが、山間部を蛇行しながら流れているので、ホタルの観察場所は限られる。今回の場所は、鬼谷川を橋の上から見下ろすロケーションで、時折、特別天然記念物であるオオサンショウウオも見られるという。東側(写真右側)はスギの大木で覆われた山林が迫っており、深い谷になっている。川幅は岸も含めて30mほどあり、東日本のゲンジボタルの生息環境とは違ってスケールの大きさを感じる。
日の入りは19時12分。天候は薄曇りで無風。月齢25の三日月は深夜まで昇ってこない。気温23度で、まさにホタル日和。素晴らしいことに「和良蛍を守る会」の会員の方が、ホタルの発生期間中の発光活動(求愛活動)の間だけ、道路に設置している街灯を消してくれることである。そのお陰で、沢には光害は一切なく、1頭目が発光を始めたのは杉林の中で19時45分であった。すぐにあちこちで発光する個体が増え始め、20時頃から発光飛翔が始まった。
20時半頃になるとカメラを向けた方向の見える範囲でおよそ30~40頭が発光飛翔し、見事な2秒間隔の集団同期明滅が見られた。ロケーション的にホタルの飛翔範囲が三次元的で、目の前の空間の上下左右、手前から奥までゲンジボタルの光が見えるのだが、いつも訪れる場所もそうで、山林側のゲンジボタルのオスは飛翔の移動距離が短い。発光間隔と発光時間そのものが短いので、一見動いていないようにも見える。これは和良蛍の大きな特徴の1つであり、その様子は、動画を見るとよく分かる。
今回訪れた場所では、自然環境全体の様子が分かり、そのスケールの大きさを表現するために焦点距離29mmの広角で写真を撮影し、動画は80mmで一部を切り取る感じで撮影した。どちらも、あくまで「記録」であり、生態系豊かな素晴らしいロケーションで見たあの感動は、実際に目で見る以外には味わえない。
昨今、ホタルの写真を撮る方が多いが「撮ることが優先。見ることは後回し」となりがちである。 感動は、その瞬間でしか味わえないが、撮ることに一生懸命で、自分の目で見ない方々が多い。カメラマンの中には、撮影はカメラに任せて自動でシャッターを切るようにし、その間はホタルを見ないのである。撮影後は、自宅に戻ってから撮った数百枚のカットをパソコンで処理して1枚の写真を作り上げればよいから、離れた場所で仲間同士で会話を楽しんでいたりする者もいる。素晴らしい光景は、まずは自分の目で見て感覚を研ぎ澄まし、五感で感じて記憶と心に焼き付けなければ、感動は生まれないし、カメラだけが写した写真に、感動はない。
21時を過ぎると、発光するゲンジボタルの数が減ってきたため、21時半頃にいつもの場所へ移動した。相変わらず遅い時間というのに発光飛翔するゲンジボタルが多く、川面に映る光で2倍の光が見え圧巻である。見える範囲だけでも数百頭はいるだろう。観察地全体では数千頭が発光し乱舞している。毎回疑問に思うのは、これだけの数のゲンジボタルが毎年発生するにも関わらず、カワニナが大変少ないことである。幼虫はミミズや水生昆虫の幼虫なども食べることが分かっているが、和良においては、実際に河川において何を食べているのかは観察されていない。数万頭の幼虫の成長を支える餌は何なのか?今後の保全のためにも解明が必要である。
今回はゲンジボタルと天の川を一緒に撮ることも目的であったが、残念ながら雲で天の川が見えず叶わなかった。22時を過ぎると、メスのゲンジボタルが産卵場所を探しながら直線的に、しかも早いスピードで発光飛翔する様子が多く見られるようになったので、その様子を撮影。(写真3)天の川とゲンジボタルの光景は今後の課題として、現地を23時に引き上げることにした。
中央自動車道中津川ICまでは平気であったが、やはり中央道に入ってからは睡魔との闘い。40時間ほど寝ていないので当然と言えば当然。途中のSAで二回ほど仮眠して6時に帰宅した。
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Canon 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 30秒 ISO 1600 5分相当の多重(撮影地:岐阜県郡上市和良町 2025.6.21)

Canon 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 30秒 ISO 1600 10分相当の多重(撮影地:岐阜県郡上市和良町 2025.6.21)

Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 ISO 1600 10分相当の多重(撮影地:岐阜県郡上市和良町 2025.6.21)

Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 60秒 ISO 3200(撮影地:岐阜県郡上市和良町 2025.6.21)

Canon 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 30秒 ISO 2500(撮影地:岐阜県郡上市和良町 2025.6.21 22:21)

Canon 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / 絞り優先AE F2.8 30秒 ISO 2000(撮影地:岐阜県郡上市和良町 2025.6.21 21:45)
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