紅葉も終盤となり、葉も散り始めている。冷たい風に舞う落ち葉は、リストラで職を失った会社員にも思える。新型コロナの世界的な流行で需要回復のめどが立たず 根本的なリストラをしなければ経営を継続できない企業が多く、航空業界やアパレル業界等は生き残りに必死である。実は、美しく彩る紅葉や黄葉は、木々が生き残るために葉をリストラする前兆であり、 落ち葉はリストラされた姿なのである。
落葉広葉樹の葉は、春から夏にかけて光合成をして樹体にエネルギーを送り続けているが、葉自体も光合成をしながら呼吸も行っておりエネルギーを消費している。秋になり、気温が低下すると光合成効率が著しく悪くなってくる。そうなると、葉はもはや生産工場ではなくエネルギーを消費するだけの厄介者となってくる。また土の水分が凍結すると根から水分を吸収しにくくなり、葉から蒸散により水が失われる事が多くなってしまう。これを避けるには、葉を落としエネルギー消費等を押さえる必要があるのである。早急にリストラしなければならない状況に陥る。
落葉広葉樹は、ただ単に葉を落とすだけではない。葉の中の葉緑体には貴重な窒素等の栄養成分が多くあるので、窒素などの成分は葉を落とす前にできるだけ回収するのである。その後、道管と師管が閉ざされ、葉にはエネルギーも水分もいかなくなってしまう。回収されずに葉に残ったアントシアニンやカロテノイド等は、葉を赤や黄色に変え、寒さなどから身を守ろうとするが、やがて枯れて落ちるのである。
落葉広葉樹にとっては、冬を生き残るためのリストラ戦略ではあるが、葉は、春から夏にかけて働くだけ働いて、使い物にならなくなったら切られる運命。見事な色づきは、十分に栄養を回収され、
まもなく落とされる葉の最後の足掻きであり、それを美しいと観賞する我々人間は、何と無情なのだろうかと思うが、葉にとっては、役目を全うした充実感と喜びの輝きでもあると理解したい。そして、「美しい光景を見せてくれて、ありがとう。」という感謝の念を忘れてはならない。
何だかんだで、昨年も今年も「紅葉」の写真を一枚も撮っていない。予定はあったものの、昆虫撮影や天候等のタイミングで外してしまった。東京都23区内でも葉が色付き始めているので、山間部は見頃を過ぎてしまっているだろう。そろそろ霧氷の便りも届いているので、今年も「リストラされる葉」の様子は撮らないかも知れない。以下に掲載した写真は、いずれも過去に撮影したものを再現像したものである。
幸いにも、このコロナ渦において私の勤める企業ではリストラの兆しはないが、不確実な世の中、いつどうなるのか分からない。とりあえずは定年まで辛抱強く今のまま頑張りたい。
参考図書:稲垣栄洋 著 面白くて眠れなくなる植物学
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紅葉
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
紅葉
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