ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ギフチョウ

2017-05-14 21:15:01 | チョウ/アゲハチョウ科

 ギフチョウ Luehdorfia japonica Leech, 1889 は、アゲハチョウ科(Family Papilionidae)ウスバアゲハ亜科(Subfamily Parnassiinae)ギフチョウ属(Genus Luehdorfia)に分類される里山に生息するチョウで、春先にだけ出現する「春の女神」(スプリング・エフェメラル)である。
 かつては東京都下の多摩丘陵・高尾山とその周辺にも生息していたが、里山の放棄・放置によって食草であるカンアオイやウスバサイシンが絶滅したことと、採集者によるギフチョウの乱獲により完全に絶滅している。全国的にも減少傾向にあり、環境省RDBでは絶滅危惧Ⅱ類に選定されており、26都府県のRDBで絶滅危惧Ⅱ類や準絶滅危惧種として記載している。東京近郊では、神奈川県の一部でしか見ることができない。この地区のギフチョウは、神奈川県の天然記念物され地元の保護団体により保全されているが、保全として他地域からの移入が行われた経緯があるようで、遺伝子攪乱が起こっている可能性が大きい。
 環境省RDBで絶滅危惧Ⅱ類に選定されてはいるが、法的な拘束力はなく、規制のない地域では採集も行われている。特に新潟県内においては、ギフチョウ多産地採集ツアーが開催され、参加者は採れるだけ採る。その日にいたギフチョウをすべて採りつくすのだから、環境の悪化や破壊よりもギフチョウを絶滅に追いやる一番の原因だ。

 さて、5月4日に引き続き長野県白馬村に行ってきた。桜は葉桜になり、山は新緑が美しく、例年の光景とは違っているが、今年は発生が遅いとの検証結果からの再訪問である。白馬村は採集禁止となっているので、網を持った輩は来ないが、4日に撮影したヒメギフチョウの卵が食草ごとなくなっていたのには驚いた。自宅で飼育し羽化させてそのまま標本箱に収めるために採取したのだろう。網を持っていなければ怪しまれない。まったく酷い話である。
 4日の様子は前回の記事「ヒメギフチョウ」をご覧いただきたいが、今回の目的もイエローバンドと言われる、後翅縁毛の全てが黄白色になったギフチョウ(白馬で固定化した遺伝子の異常タイプ)の撮影である。自宅を5時に出発し、現地に8時過ぎに到着。蝶道で待機していると、8時半からギフチョウが飛び始めた。4日よりも個体数が多く、ヒメギフチョウよりもギフチョウの方が多い。次々に現れるが、なかなか止まってくれない。特徴が分かる図鑑的写真を撮るには、止まったところを狙うのが一番だが、止まってくれない。10時頃になるとスミレに止まる個体が現れ、ようやく撮影可能となった。
 止まるであろうスミレの近くで待機していると、ギフチョウは突然現れる。どうやら頭上の高い梢から降りてくるようだ。とりあえず追いかける。そして地面や花に止まったところで撮影。 当然、どこにも止まらず森に消える個体も多い。飛翔を追いかけていくと、杉の高い梢に止まる個体を多く見た。
 正午過ぎまで数頭の個体を撮影したが、結局イエローバンドの個体に巡り合うことはできなかった。また来年にチャレンジである。イエローバンドという遺伝子の異常タイプも撮影したいが、とりあえずは、今年も絶滅危惧種である「春の女神」ギフチョウに出会えたことに感謝したい。

 以下の写真は、ギフチョウと比較するために同日に撮影したヒメギフチョウも掲載した。また、カタクリで吸蜜するギフチョウ(写真5.)は、2014年に撮影したものを再掲載した。

参照

  1. ギフチョウ(新潟)
  2. ギフチョウとヒメギフチョウ

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ギフチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / シャッター速度優先AE F8.0 1/250秒 ISO 200(撮影地:長野県白馬村 2017.5.14)

ギフチョウの写真

ギフチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / シャッター速度優先AE F10 1/250秒 ISO 200(撮影地:長野県白馬村 2017.5.14)

ギフチョウの写真

ヒメギフチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / シャッター速度優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200(撮影地:長野県白馬村 2017.5.14)

ヒメギフチョウの写真

ヒメギフチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / シャッター速度優先AE F16 1/80秒 ISO 200(撮影地:長野県白馬村 2017.5.14)

ヒメギフチョウの写真

カタクリで吸蜜するギフチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 250(撮影地:長野県白馬村 2014.5.03)

ギフチョウの写真

カタクリで吸蜜するヒメギフチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / シャッター速度優先AE F7.1 1/250秒 ISO 200(撮影地:長野県白馬村 2017.5.14)

ヒメギフチョウの写真

ギフチョウの里(撮影地:長野県白馬村 2017.5.14)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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2 コメント

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Unknown (Ray)
2021-03-19 05:12:57
採集者を非難するのはやめなさい。日本の昆虫学は、一般の採集者が支えて、中心になってるんだ。しかも、採集だけで絶滅するほど生物は弱くない。というか、環境破壊や開発が大きな要因というのは明らかなのに、それを正当化するために、いつも採集者の乱獲のせいだという。採集者の弾圧でしかない。写真家なんて自己満でしかない。標本は唯一の物的証拠なのだから、その地でその日にその動物が生存していたという大切な貴重な資料なのだから。
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採集について (古河義仁)
2021-03-20 17:39:46
Webとは言え、命令口調でコメントするのであれば、正々堂々と名乗るべきではないでしょうか。
コメントを削除することは簡単ですが、このまま掲載いたします。
生物の絶滅原因が環境破壊や悪化であることは誰もが知る事実です。確かに研究、特に分類の研究においては採集し標本にすることは必要だと私も思います。しかしながら、単なる趣味、自己満足で採れるだけ採る採集者がいるのも事実であり、ある地区のオオゴマシジミは、乱獲で絶滅したのです。
あれこれ言い訳し、採集を正当化する方々が多いのも事実です。
議論は歓迎いたしますが、個人に対する誹謗中傷は罪に問われますので、今後のコメントにはご注意ください。
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