本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

今週の言葉 12/13~12/19 『 盗人にとりのこされし

2010-12-12 22:42:29 | 今週の言葉
      盗人にとりのこされし 窓の月

                         良寛

 来年の年賀状には 「 月のウサギ 」 という仏教説話を書こうと思っています。


聖徳太子も深く感動された 『 ジャータカ 』 という、

( お釈迦さまが生まれる前の物語 ) 仏教説話がたくさん残っています。

そのすべてが、身を犠牲にして他のために捧げるという、

「 無償の愛 」 の物語です。



 今日、お参りしたお宅で 「 年賀状 」 の話をしていましたら、

ヘルパーさんをされているのか、 

「 他のために自分の身を投げ出す 」

ということに深く感動され、


 『 そうですね、人間の意識では他のために尽くすという心は出てこないです。

  自分の深い心に触れるというか、自分の中にある仏心にふれるのでしょう。

  母親は自分の子どもを育てるということで、

  本能的に無償の愛ということが出てきます。』

などなど、話しているうちに、思い出した一句が

この良寛さんの言葉です。


 何もない良寛さんの家に盗人が入った。

 取るものがないので、仕方なしに着ている布団でも取っていくか、

 ということで、布団を取ろうとすると、

 良寛さんは寝返りを打つ風を見せて、そっと盗人に気づかれないように、

 盗人に布団をあげたという話です。

 良寛さんは、何もない自分の家に来たのだから、

 盗人もよっぽど困っていたに違いない、

 と、思われたそうです。



 布団を取られ、寒空に月を眺めながら詠まれた一句が


『 盗人にとりのこされし 窓の月 』


です。


 この時期でしたら、良寛さんの辞世の句


『 うらを見せ おもてを見せて 散るもみじ 』


かなと思っていましたが、


 この歌も意味が深く、 ( 単純には今の季節を詠んだのかな ? )

ところが、

 良寛さん70歳の時に 「 貞心尼 」 という尼さんと出会うのです。

最初は歌詠みの尼さんと思って気にも留めていなかったのですが、

その歌のすばらしさに心惹かれ、恋に落ちてしまうのです。

貞心尼が30歳の時です。

良寛さんが亡くなる75歳まで4年間ほどのつきあいで、

最後、貞心尼に看取られて亡くなるときの辞世の句が、

この句なのです。

 「 あなたには私のうらも表もすべて見せました。

   すべてをお任せします。」


 となると、来年の年賀状の 「 無償の愛 」 ということがテーマであれば

「 盗人にとりのこされし 窓の月 」

が、適切ではないかということで、選びました。


 今では、「 無償の愛 」 とか 「 自己犠牲 」 というような言葉は

使われなくなってしまいました。

 本当の深い心では

「 他のために尽くして、喜びたい 」 という

本心が、みなそれぞれに、何時! 出そうかと待ち構えているのですが

チャンスを見つけることが出来ないのです。


 心がけましょう !









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