本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

「 よく見れば … 」

2011-01-05 08:58:51 | 住職の活動日記
 ツイッターで一番使われた言葉が 「 見 」 という字でした。

ふっと、芭蕉のこの句が気になったのです。


 『 よく見れば なずな花咲く 垣根かな 』


よく見、よく見すえ、よく見つめる  と  見方にもいろいろあります。

私たちは、何気なく    と見ただけで、

「 見た !! 」  と認識しています。


 先日、よく見えられる方が、今日は懐からノートを出してこられました。

ノートといっても、売ってあるようなものではないのです。

新聞に入っている、広告用紙の裏が白紙のものを手頃なサイズに切って

それをひもで縛ったという、簡単なものです。

それに、行った先々で見かけた 「 花 」 とか 「 景色 」 を

鉛筆書きでデッサンしておられたのです。

 「 お上手ですね !! 」  

 「 どうやったら、こんなに描けるのですか ? 」

  ( 絵が苦手な私には不思議でたまりません )

 「 花をじっと見るのですよ。花びらが何枚ついて、

   どういう風についているのか、花びらの形がどうなっているのか

   そういうのを見ると、自然と描けますよ。 」

もう、八十才をとっくに過ぎておられるのに、ものを見る目の確かさに驚かされました。

 「 そうやってものを見ているととても楽しいですよ 」

  頭もしっかりしておられるはずです。


 芭蕉の句の 「 なずな 」 は普通言う 「 ぺんぺん草 」 です。

私たちにはただの雑草にしか見えませんが、

その 「 なずな 」 を 「 よく見 」 「 よく見つめ 」 「 よく見すえる 」

と、なずなはなずななりに装いを凝らして、というより精一杯咲いている

その姿が芭蕉にはとても美しく、けなげにも見えたのではないでしょうか。


 よく師匠の三浦先生から、

「 あなたたちの目はふし穴だ !  見ていても何も見えてない 。 」

自分なりには掃除したつもりなのですが、やはりどこか抜けている。

関心がほかにあるからでしょう。

箒はもって掃いているものの、頭の中は遊びたい心で一杯、

だから、目では見えているのに、見えてないのです。


 「 掃除の時は箒と身体が一つになれ 」

と、いわれました。

そのものになりきって、ものごとを見るということがいかに大事かということです。


 以前 『 土門拳 』 という写真家が、東寺の仏像を撮影されたとき、

「 いま、撮れ !! 」 と仏さまがおっしゃるそうです。

それまで、何時間もカメラを据えて、じっと仏さまを見つめておられました。


 ほんとうに 『 見る 』 ということも、とても奥が深~い !!








   
コメント
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