7月21日付 編集手帳 読売新聞
{その弔辞は22年前、東京・三鷹の斎場で読まれている。〈優作。俺は今までお前が死ぬとこを何度も 観 ( み ) てきた。そのたびにお前は生き返ってきたじゃないか。役者なら生き返ってみろ。生き返ってこい!〉
◆集英社刊『不滅の弔辞』から引いた。39歳で急逝した松田優作さんを悼み、原田芳雄さんが霊前で語った言葉である。口数少なくぶっきらぼうな外面の下に、ひどく熱いものが流れている。一語一語が、原田さんの演じてきた「男」そのものだろう。
◆映画『竜馬暗殺』『ツィゴイネルワイゼン』などで無類の存在感を示した原田さんが71歳で亡くなった。
◆2年前、『黄金花』で80歳の植物学者・牧を演じた。本紙の取材に語っている。「死が背中に張り付いてきたのを感じることで、生もものすごく主張してくる。牧老人はそういう季節にいる」と。つい10日前、最新作の完成披露に限界まで痩せきった身を車いすに乗せて登場した原田さん自身、“生の主張”を最後の最後まで貫いた俳優であったろう。演じるように生きたのか。生きるように演じたのか。
◆男が死んだ――しみじみと、そう思わせる人である。}
いつだか忘れたがテレビっで、原田さんと大楠道代さんと岸部一徳さんの三人のトーク番組を見たばかりだ。その後主演映画「大鹿村騒動記」のプレミア試写会で行った舞台あいさつに、車いすで現れたのには、ビックリした。みんなから慕われ、いつも原田さん宅には多くの俳優たちが集まり、日頃の悩みを相談できる兄貴的な存在だった。倒的な存在感で演じ分けた俳優、原田芳雄さん。最後の最後まで、俳優として完全燃焼した姿は忘れない。謹んでご冥福を祈ります。
{その弔辞は22年前、東京・三鷹の斎場で読まれている。〈優作。俺は今までお前が死ぬとこを何度も 観 ( み ) てきた。そのたびにお前は生き返ってきたじゃないか。役者なら生き返ってみろ。生き返ってこい!〉
◆集英社刊『不滅の弔辞』から引いた。39歳で急逝した松田優作さんを悼み、原田芳雄さんが霊前で語った言葉である。口数少なくぶっきらぼうな外面の下に、ひどく熱いものが流れている。一語一語が、原田さんの演じてきた「男」そのものだろう。
◆映画『竜馬暗殺』『ツィゴイネルワイゼン』などで無類の存在感を示した原田さんが71歳で亡くなった。
◆2年前、『黄金花』で80歳の植物学者・牧を演じた。本紙の取材に語っている。「死が背中に張り付いてきたのを感じることで、生もものすごく主張してくる。牧老人はそういう季節にいる」と。つい10日前、最新作の完成披露に限界まで痩せきった身を車いすに乗せて登場した原田さん自身、“生の主張”を最後の最後まで貫いた俳優であったろう。演じるように生きたのか。生きるように演じたのか。
◆男が死んだ――しみじみと、そう思わせる人である。}
いつだか忘れたがテレビっで、原田さんと大楠道代さんと岸部一徳さんの三人のトーク番組を見たばかりだ。その後主演映画「大鹿村騒動記」のプレミア試写会で行った舞台あいさつに、車いすで現れたのには、ビックリした。みんなから慕われ、いつも原田さん宅には多くの俳優たちが集まり、日頃の悩みを相談できる兄貴的な存在だった。倒的な存在感で演じ分けた俳優、原田芳雄さん。最後の最後まで、俳優として完全燃焼した姿は忘れない。謹んでご冥福を祈ります。