神社のある風景

山里の神社を中心に、歴史や建築等からの観点ではなく、風景という視点で巡ります。

山王宮

2015年06月02日 | 兵庫県

兵庫県三田市寺村町


前回の塩田八幡宮は山腹にあるのだが、その山塊、というか、残丘とでも言うべき標高200メートル前後のなだらかな山に、神社記号が他に二つある。
直線距離で塩田八幡宮の北北東190メートルほどのところと、北北西に210メートルほどのところである。
塩田八幡宮からは低いながらも山の向こうという位置になるし、それぞれ違う地区の神社ということで関連性など無いのだが、これだけ隣接していると当然同時に参拝しておこうという気になる。

googleマップで調べてみると、北北東にある神社は神社名が載っていないものの参道が長そうに見える。
検索すると、神社名は天満神社であることが判った。
ただ、最近社殿を建て替えたという記事も見かけたので、明るく味気ない境内かも知れない。
北北西の神社は、googleマップの表示を拡大していくと、辛うじて小さな文字で「山王社」と表示された。
こちらは航空写真で見ると、木々の緑に埋もれそうな感じで、浅い山とはいえ山中にあるので、もしかしたら廃れて自然に還りつつあるのかも、という危惧も覚えるが、或いは緑いっぱいの素敵な環境かも、という気もする。
ということで、それぞれに期待と不安があるのだが、地形図を見るとどちらへも山越えで山道が通じているようなので、山塊をぐるりと迂回することなく最短距離で向かうことにする。

塩田八幡宮からは参道ではなく車道を下る。
最初に左にカーブするところで右に入っていく道があるのでそちらに進む。
すぐに左手に大規模な霊園が見えてきて、その先の山を越える峠部分で車道が尽きる。
地形図を見ると、峠付近から北東へ伸びる道があって、天満神社にも山王社へ行くにもその道に入る必要があるのだが、実線で描かれている道の割には破線で描くべき山道のような状態だ。
進んでいくと、以前はよく歩かれていたのか、しっかりとした踏跡ではあるものの、所々で笹や木の枝が覆っており、蜘蛛の巣や虫が気になる。
昔なら平気で突っ切っていたところだが、軟弱になってしまった私は峠まで引き返し、峠を越えて寺村町方面へ下る道に入ってみる。
こちらも実線で描かれている割りに山道のような感じなので、どうしようかと思いつつ、さっきの道よりは状態はいいようなので、そのまま下っていくことにした。



前回と同じく、道中の適当な写真はスマホで撮った小さい版で。
峠から先はこんな感じの道。



特に問題も無く、車が通れる道に出る。
左手にあった溜池。



寺村町の公会堂手前の風景。
長閑に見えるが、少し視線をずらせば、三田市街のマンションが見える。

寺村町の家並みの中に入り、まずは心光寺というお寺を目指す。
山王社への上り口が地形図では正確に判らないし、ネットの地図にはそもそも神社への道すら記載されていない。
ただ、yahooやgoogleのネット地図と、国土地理院の地形図とでお寺の位置が違うが、これはネット地図が正しい。



とりあえずお寺の前まで来て、お地蔵さんと対面する。
車道はお寺で行き止まりだが、左右に分かれて奥へと小道が続いている。
地形図から判断すると、左へ登っていく道が神社へと続く道の筈だ。



すぐに墓地に入るのだが、何とも素敵な環境に思えたので写真を撮らせてもらう。



鬱蒼たる木々に包まれながら、春の陽射しが降り注ぎ、心地よく眠り、或いは語らえる場所に見える。
で、いちばん奥まで行ったのだが行き止まりだ。
地形はいつの間にか谷の形状をしているし、地形図を見れば、これは先ほどの分岐点で右に進んだ場合の地形に思える。
ということは左手の斜面の上に、神社への道が通っている筈だが、何度か往復してみたり、墓地じゅうの道を歩いてみるものの、そちらへと続く道は無い。
斜面と言っても僅かな距離だし、強引に登ってしまえば直ぐと思われる。
しかしまあ、軟弱になってしまった私はウロウロするばかりだ。
先ほどの分岐の右へ進む道も、結局この墓地に繋がっていたし、これはもう地形図が間違っているか、最初に危惧したように神社が廃れて道が消えてしまっているとしか思えない。
とはいえ、簡単に諦める気にもなれないので、お寺より北側にある行き止まりの車道に向かってみる。

三田は新興住宅地として有名だが、この辺りは古い地域で、神戸電鉄の三田本町という駅から400メートルほどしか離れていないのに、落ち着いて長閑な雰囲気である。
まず余所者が入り込まないようなところだし、ましてや行き止まりの道に余所者が入り込むと怪訝な顔をされる。
案の定、道の先で農家のおばさんが訝しげにこちらを見ている。
普段なら居心地が悪くなるところだけど、これ幸いとその怪訝な顔をしたおばさんに道を訊ねると、こちらの目的がわかったからか、表情が柔らかくなって親切に丁寧に道を教えてくださる。
入り口は判りにくく、右手の小道に入るが、とても神社へと続いているとは思えない雰囲気。
普段は田圃へと入るための道のようで、その田圃の横を通ってすぐに左の山へ入っていく道がある(田圃の手前で左に進む道に入ってしまいそうになる)。
恐らく人に教えてもらえなかったら、私は神社へは行けなかっただろう。
というか、信奉する国土地理院の地形図が、この狭い範囲で二箇所も間違っているとは…。

おばさんは入り口付近を細かく説明してくださったが、山に入ればしっかりした一本道だとおっしゃっていたし、もう問題は無さそうだ。
まあでも、参道と言うよりは山道みたいなものだろうけど。



と思いきや、ちゃんとした階段が現れて少し驚く。
コンクリート製だから、あまり風情は無いけれど、予想とは違ってしっかりと維持管理されているようだ。
あとは航空写真で見て想像したように、緑いっぱいであればいいのだけど。



「ああ」だったろうか、それとも「おお」、或いは「わあ」だったか。
とにかく階段の途中から見えてくる参道に、心の中で何らかの感嘆の声を漏らした。
コンクリートの側溝がちょっと残念だけど、そんなものが気にならないくらいに、潤いある「緑」だ。



なんと柔らかで心地いい参道だろう。
こういう風景に出逢いたくて、私はあちこちの神社を訪ねている気がする。
右下には先ほどの墓地が見え、やはり僅かな斜面を登ればこの参道に出られたようだ。



緑のトンネルの中を行く。
一本道と聞いていたが、途中、二箇所ほど左に分岐する道があったので進んでみると、どちらも祠があって行き止まりだった。



ちょっと判りにくいが、前方に鳥居が見えてくる。



地図では山王社と表記されているけれど、鳥居の扁額には山王宮と書かれているので、記事のタイトルはそれに合わせた。



鳥居をくぐり、開けた空間を横切ると、側面を向けた社殿の前に出る。






拝殿は質素で、この空間に似つかわしい。
拝殿の先には茂みの奥へ伸びていく小道があったが、恐らくは私が引き返した峠からの道に続いているのだろう。
やはり少々、草が覆っているようではあった。



本殿は覆屋の中で、どんな様子かは窺えない。



社殿前の石段に腰掛けて、暫し木漏れ日が戯れる小空間をぼーっと眺める。
何というか、とにかく居心地がいい。

名残惜しいが、次の神社に向かうことにする。


次の天満神社はスマホで簡単な写真しか撮らなかったので、ここに併せて載せておくことにする。



ここはまだ寺村町。



こんな風景の中をのんびり歩く。



左手に神明神社が見えたが立ち寄らず。



やがて天満神社前。
こちらは旧参道で、左側から車道が神社まで続いている。
といっても、この道もすぐ車道と合流するのだが。



長い参道に期待したものの、普通の車道というか林道といった感じで残念。
まだ新しい社殿は、陽射しを浴びて眩しいくらいで、山王宮で緑陰に浸っていた身には、明るすぎて戸惑ってしまうのだった。

ここからなら三田駅の方が近いが、無意識的に街を避けてしまうのか、とぼとぼと疲れた足を引き摺って道場駅まで歩いた。
10キロ強、5時間半ほどの小さな旅だったが、とても楽しめた。 


撮影日時 150522 11時20分~12時(山王宮のみ)
地図


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Jun)
2015-06-02 21:48:00
私も山王宮の参道を見た途端、をを! と心の中で叫んでしまいました。
もっとボロボロだと思っていたのですが、綺麗じゃないですか。
ちゃんと地元の人が管理されているのですね。

地元のお宮さんへ、と言うと大概親切に教えて頂けますね。
神社はみんなのもの、ですから(笑

油男、特定されて良かったです。
まだ捕まっていませんけど。
Unknown (hiro1jz)
2015-06-03 06:36:32
>Junさん
そうそう、「おお」より「をを」という感じでした。
三田本町駅から500mほど、三田駅からは1.5キロほどというのが信じられないくらい、
緑深く、静かで落ち着ける神社です。
車だったら、停める場所も無くて絶対に訪れていないので、
電車でお出掛けの初回から、こんないい場所に出逢えて幸運でした。

地元のお宮さんへ、と言うと、こんなところの神社まで何しに来たんだ、
と、更に怪しまれることがあります(泣

とりあえず油男には口汚く罵ってやりたいところですがここでは自重します。
ひとまず安心ですね。
Unknown (Jun)
2015-06-03 21:59:35
見えているのにアクセスする道が見つからない、地図に記載されているのにたどり着けない、よくあることですね。

多可町の糀屋交差点(住所は坂本)のそばにある神社、交通量の多い場所なのですが、小さな森が意外にボリュームがあって、木立の足許に赤い鳥居の柱が並んでいるのが見えて、ずっと行きたかったのです。毎日朝夕横を通っているのに、なかなか行けずに。
ある時、意を決して反対側のスーパーマーケットに車を駐めて、道路を2回横切って神社の前まで行ったのですが、ショックだったことに、参道がなかったのです。
杜の入り口は開いているのですが、国道からも県道からもその入り口に通じる道がありません。
仕方が無いので、県道と水田の間にある畦道を通って神社まで行きました。
神社はとても素晴らしくて、小さな土俵があるし、境内の土はしっかり踏み固められて掃除が行き届いているし。
ただ気になったのは、参道はないのに、隣接する民家の庭に通じる道があったことです。
私有地なのかも知れないと思い、長居せずに退散しました。(隣家は、職場の取引先の社長宅)

坂本の交差点周辺は、文献に名前が出てくるだけで実体がわかっていない「坂本城」があった所と言われており、また国道の改良工事の時に、水田の下から弥生時代の水田跡や住居跡が出て来た場所です。
小さな神社の正体を知りたいなぁと思うのですが、二社神社と言う名前がわかっただけで、神様のことも謂われも何もわかりません。
身近にあるミステリーですね(笑

あと、丹波市氷上町の妙躰権現に行きたいと思いながら行けずにいるのですが、これは場所は判明していながら道が狭くて集落に入る勇気が出ないだけなんです。

実際に行ってみて、どんな風景が見られるか、本当にわくわくしますね。



Unknown (誠)
2015-06-04 18:09:54
hiro1jzさああああんっ!!!お久しぶりです!!元気にお過ごしでしたか?

この前のコメントのお返事のときは、あまり元気のないご様子だったのでとても心配していました…でも、hiro1jzさんがようやく新しい景色と出会えたようなので安心しました(*^_^*)

それに、私もhiro1jzさんの新しい写真を拝見できてとても嬉しいです!これからは今まで以上に応援させていただきますね!お仕事の方も頑張ってください!
Unknown (hiro1jz)
2015-06-05 08:03:42
>Junさん
辿り着けない殆どのケースが、駐車場所が見つからないことだったので、
今後は概ね到達できそうな気もします。
歩きだと地元の人に道も聞きやすいですし。
以前は地図を見ても神社の記号があるだけで、
入り口がどちらの方向にあるか判らないことも多かったのですが、
最近のネット地図は、かなり田舎まで詳細な地図の範囲が広がってますので、
大体はどこから入ればいいのか判断がつくと思います。

その神社、いちおう地図には名前が載っていますね。
状況だけ聞くと個人所有の神社みたいに思えますが、
果たして個人所有の神社が地図に載るものなのか…。
あ、でも航空写真で見ると、完全に隣の家の敷地に見えます。
職場の取引先の社長さん宅ということなら、
取引先の誰かに聞けば御存知なのでは?
或いは聞かずにミステリーのままの方がいいかもですが(笑

妙躰権現は確か以前にも書かれてましたよね。
湧水と桜が絵になりそうなところですが、
車を停めるスペースはあるみたいですね。
道の狭さは、これも航空写真で確認すると、
それほど困難でも無さそうですし、ぜひチャレンジされてみては。
Unknown (hiro1jz)
2015-06-05 08:21:57
>誠さん
誠さああああんっ!!! といきたいところですが、
そろそろ落ち着いた大人の男を演じなければならないような気も…
とりあえず10キロくらいは歩けるくらいには元気ですが、
徐々に伸ばして20キロくらいは歩けるようにしようと思ってます。

というかご心配かけましてすみませんm(_ _)m
ようやく活動再開ですが、今までと違って電車と歩きなので、
今までと違った風景巡りが出来そうな楽しみがあります。
例えば京都の街中の路地を撮ってみたりとか、
車だったら行かなかったであろう伏見稲荷大社とか。
まあぼちぼちなので、期待されても困りますが、
今まで以上に応援してください( ̄^ ̄)

誠さんも勉学に励んでください。
というか、たまには東京ネタも待っとります。

コメントを投稿