三重県松阪市柚原町
一般的には蘭神社と呼ばれているようで、地図に記載されている名称もそのようになっている。集落から離れた山間部にありながら、国土地理院の地形図にもその名が記載されており、目を引く存在である。
そうでなくても、私は高校生の頃から蘭科植物に傾倒して野山を歩き回ったヘンな人間であるから、気になる神社であった。
好きだったのは洋蘭ではなく、日本に自生する和蘭や野生蘭と呼ばれるもので、その数およそ250種。実際に見つけたのは30種ほどで、絶滅危惧種も多く、一部を除いて見つけるのは容易でない。
蘭にゆかりがある神社だろうか、なんて期待を一瞬してしまったが、地形図にはルビが振ってあって、「あららぎ」とある。
「あららぎ」とはユリ科の「野蒜」の古名、或いはイチイ科の「一位」の別名である。イチイと聞けばブナ科の櫟=イチイガシと勘違いしそうだが全くの別種。一位の方はアイヌ語でオンコと呼ばれていたもので、こちらの名称を聞いたことのある人の方が多いのでは。
野蒜は珍しくないが、一位は深山に生える高木だ。加工し易いので装飾品や鉛筆などに使われ、庭木にもされるけれど、野蒜が古名ということと、一位がこの辺りには自生していそうにない、ということから、「あららぎ」は野蒜の方だろう、と一度は思いかけた。
が、一位が笏の材料とされる、と知って判らなくなった。というか笏を作るから一位という名称になった木なのであった。
笏とは聖徳太子や閻魔大王が持ってたりする、あの木の板だ。神官も使うし、これはもう、「あららぎ」は一位のことである、と、真実はともかく得心した次第。
柚原の集落が尽きる辺りから、狭い峠越えの横道に入る。やがて谷間の道になると、すぐに神社前に到着。
鳥居前が狭いので、正面からは撮影しにくい。
鳥居右手に2、3台駐車できるが、道路を少し進むとかなり広いスペースがある。
鳥居をくぐると橋があって、その先には連続した鳥居がある。
橋の部分の谷川は護岸されているがイワタバコがたくさん咲いていた。コンクリートの護岸に生えているのは珍しい。
参道は直角に左に曲がる。平成18年に大きな改修が行われたようで、木の鳥居はまだ新しい。
稲荷神社以外でこれだけ鳥居が連続しているのを見るのは初めてだ。
遠近感による奥行きを狙ったとは思えないが、どういうわけか奥へ進むほど鳥居は低くなっており、少し身を屈めなければならない。
参道途中、高みに社殿が望まれる。杉の巨樹が見事である。
参道を横から見る。
連続する鳥居と巨樹、その奥に凄い高さの石垣があって、面白い空間だ。
参道は再び直角に、今度は右に折れる。どうも参道の付け方が不自然な感じがする。
振り返ってみると、谷川の対岸が、ちょうど駐車場と思しき広場の位置だ。
で、対岸から見てみると、こういう風景。
どうも昔はここが神社入り口だったのでは、と考えるが・・・。
この神社で最も見事な杉。夫婦杉と呼ばれるものであるが、通常、夫婦杉と呼ばれるものは、似たような大きい杉が二本並んでいるか、或いは一本の杉の主幹が途中から二本に分かれているものが多い。ところがここのものは、その両方の特徴を併せ持っている珍しいものだ。
この杉の周りも、比較的最近に整備されたように見受けられるが、景観を損なうことなく上手く整備されているように思う。
立派な石段を上ると、もう目の前が拝殿で、写真を撮るスペースも無い。
本殿はやはり神明造。ここの木も新しい。
本殿背後の石垣にもイワタバコが群生していた。水辺以外で見るのは初めてで、かなり湿度が高いのだろう。
社殿のある境内から参道を見下ろす。
下の広場にも社殿を建てたくなるような素晴らしい空間だ。
2万5千分1地形図 大河内
撮影日時 080813 10時40分~12時
駐車場 あり
地図
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静寂という言葉も似合いそうです
こういう空間で
密やかに時間を過ごしたい
そんな感じの場所のようです
既に紹介した瀧原宮、丹生神社、仲山神社も行きました。
ここを含め、一日にこれだけの良い神社に巡り合えるのは稀で、
三重県の神社に対する認識を改めた次第です。
民家から離れた山中で、車も全く通らない、
俗世間から離れたようなところですので、
おっしゃるように、密かに時をすごせる場所であります。
宇流冨志禰神社の一の鳥居は龍神山の石材を使っているそうです。
>その方が子供の頃は、雨乞いもしたそうです。
龍神山で雨乞い、地名と信仰がつながってますね。
貴重な情報ありがとうございます。
三重県神社誌に載っていない、私の知らない神社が、
名張にはまだまだ存在するという気はしていました。
蘭神社いいですね。
遠方にお住まいのhiro1jzさんのことだから、
地形図で確認されての訪問と推察します。
綿密な調査をして購入した株が予想通り上がったって感じでしょうか。
予習が苦手な私は、宝くじタイプでしょうか。
地図で見ると川上山若宮八幡神社に近いですね。
>遠近感による奥行きを狙ったとは思えないが
的を射ているかもしれません。
また、本殿に近づくほど頭を垂れる形になりますね。
あの山の麓は古墳も多く興味深いところですね。
古墳のそばには祠や鳥居が打ち棄てられている場所もあって、
ちょっと異様な雰囲気でした。
神社は山頂に近い窪地のようなところにあって、
小さな水溜り程度の池もありました。
山仕事の人がお参りするのか、荒れ果てている、といった様子ではありませんでした。
雨乞いは山の上で火を焚いたとおっしゃってましたが、
それがこの神社なのかどうかは判りません。
いえいえ、地図と巨樹関連のHPで確認しただけでして、
どちらかと言うとかなり適当に周っております。
この神社に寄ったあと、すぐ近くの式内、宇気比神社、
それから仲山神社、北畠神社へと行き、川上山若宮八幡神社への分岐点も通りました。
が、時間的にも天気も良くなくて断念。
もっと条件のいいときに行くつもりです。
さすがに奥行き感を出すためではないだろうと思いましたが、有り得るんでしょうか。
お寺の庭などでは遠近感を考慮した造りがあったりしますが・・・。
頭を垂れるようにというのは納得です。
「神社は同じ形態を1000年以上保って来たのではなく
時代とともに常に変化してきた。」
画期的な変化を遂げたのは明治時代。(国家による神社の管理。マニュアル化。)
明治以降、神職又は氏子さんの中に、西洋絵画に造詣の深い方がおられて今の形になった。
なんて考えておりました。
伏見の稲荷山の鳥居はいつからああいう形になったのか知りませんが、お塚は明治以降だそうです。
昔のお塚は、盛り土だったようです。
北畠神社ですが、2004年に参拝したおり、発掘調査のため多くのモミジの木が切られていました。写真を撮り直しに行ったんですが、ガックリ。留魂社の付近、美しかったのにもう見られないと思うと残念です。
絵画への造形に関わらず遠近法は普遍的なものになってますから、
そういった創意工夫はあるのかも知れませんね。
でも、国家の統制、マニュアル化される前の神社が見てみたかった・・・。
たぶん、地方ごとに独特の個性があったんでしょうね。
私は伏見に6年間住んでいたことがあるのに、
伏見稲荷に行ったことがないんですよ・・・。
でも、uziさんのHPで拝見して、
「異空間」とおっしゃるのがよく判ります。
本当に、千と千尋のような世界にトリップしそうな・・・。
人が居ないなら行ってみたいなぁ・・・。
北畠神社の留魂社、私、見ていないような気が・・・。
記憶にも写真にも無いんです。
おっしゃられるように、木が切られていて惹かれる空間じゃなかったからなのか・・・。
uziさんの紹介されておられるコースから
ちょっと外れたようなところにも
いろいろあって
山全体を廻る人はものすごく少ないですから
オフシーズンなんかにはお勧めかもです
夜の帳が下りる頃とかに行くと
ぼんやりと蝋燭の残り火などが灯っていると
命の溜まりがそこにあるような感じです
稲荷山は2回廻ってます。
1回目は偶然祭の日と重なり、お山も結構人がおりました。
人を入れずに写真を撮るのは難しい状態です。
本殿の周辺は当然人でごった返しておりました。(笑)
人を入れずに境内の写真をとるのは不可能。
2回目は日曜日で、朝8時頃に到着。
私HPに掲載の写真はこのときのものです。
一部人が写っているのがありますが、
入れずに写すことは可能です。
hiro1jzさんのトーンで写された稲荷山の写真をぜひ見てみたいです。
あの空間をどの様に切り取られるかも見てみたいです。
しかし、hiro1jzさんの好みからすると???(笑)
>コースからちょっと外れたようなところにもいろいろあって(幽黙さん)
泉涌寺へ抜ける道なんかもありますね。
滝が結構あるようです。(HPで見た記憶があります。)
ハイキング姿の方もときおり見かけました。
なるほど、確かに朝だけでなく、
夕暮れ時が似合いそうな空間ですね。
朱の鳥居と蝋燭の焔。
想像しただけで、異空間への扉が開きそうです。
あ~、でも伏見辺りって、
最も車で走りたくない地域の一つだったりします。
「おけいはん」を使うのもなぁ・・・。
>uziさん
お、では平日の朝ならかなり人は少なそうですね。
でも、夕闇迫る頃もみてみたいし・・・。
いわゆる木々が鬱蒼とした感じではないでしょうから、
確かに私の好みではないかも知れませんが、
空間そのものに凄い深みがありそうですね。
それに、稲荷神社独特の妖しさにも惹かれます。
う~ん、いつか撮ってみたいです。
でも、この規模の神社をここで紹介すると違和感がありそうな(笑
普通とは違う観点で切り取って見せてくださるのは
hiro1jzさんしかおられないのでは…
伏見稲荷大社の本殿に生花(立華)を
供える儀式(献華式)を
うちの親父がやっておりましたので
伏見稲荷大社は愚生には特別なところです
あっちこっち庭みたいに
駆け回っていたのが懐かしい
子供の記憶です
普通なら入らないようなところに
入っていけたのは子供の特権です(困)