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社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

アルチュセールの新概念?

2005年06月30日 | アルチュセール『再生産について』
 この度刊行されたアルチュセールの『再生産について:イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置』は、彼がその国家のイデオロギー諸装置概念を提起したイデオロギー論の草稿にあたります。この草稿は、当初、二巻本の大著として計画されたものなのですが、その計画は結局挫折し、そのうちの一巻の内容にあたる原稿のみが残されることになりました。この一巻が、今回刊行されたものなのですが、ここから「抜き出し」として、論文の形で発表されたのが「イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置」という論文です。このイデオロギー論の論文において初めて国家のイデオロギー装置という概念を提起するのですが、この概念はさまざまな領域で援用されてゆきます。

 イデオロギー論論文においてこの概念は十分に論じられてはおりませんでした。今回刊行された、草稿である『再生産について』では、その分量から考えても(邦訳では470頁)当然、この概念について、多くの説明をすることになります。アルチュセールは、この国家のイデオロギー装置には、様々な種類があると述べています。その為、彼はこの概念に形容詞をつけ、さまざまな国家のイデオロギー装置が存在することを主張します。政治的、組合的、教育的……、などのイデオロギー装置が存在すると、彼は言います。

 そこで、訳者としての我々にとって問題になったのは、この形容詞を、「国家のイデオロギー装置」概念の何処にくっつけるかです。で、結論から述べますと、我々は形容詞を中に入れることに決めました。つまり、政治に関して言えば、「国家の政治的イデオロギー装置」と、概念の中に形容詞を入れることにしました。この「形容詞を中に入れる」というのは、この概念の使われている文脈においては、新しい用語法ではないかと、個人的には考えております。
 ですから、研究発表の中でこの国家のイデオロギー装置概念を使う場合は、この新しい用語法で、「国家の政治的イデオロギー装置」、「国家の組合的イデオロギー装置」といった風に使っていただけると幸いです<(_ _)>。

 まあ、こうした決断に至までの話には、いろいろあって、そしてこれを誰が主張したのかも、我々訳者の間では明確なのですが、その点には触れないでおきましょう(^_^.)。まだ、出たばかり本なので、訳に関する皆様の意見を待ったあとで、こうした「裏話」(というほどでもないのですが)についても、折に触れて紹介させていただければと思います。

 この本、おかげさまをもちまして、けっこう売れているようであります。アマゾンでは、売り上げランキングで常時3万位ぐらい、時には数千位まであがっているようで(そこそこ売れている新書レベルの順位)、この値段の本としてはなかなかの売れ行きのようです。もし、興味を持っていただけたら幸いです<(_ _)>。

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再生産について?イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置

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