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社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

アルチュセール『再生産について』:編者紹介

2005年06月20日 | アルチュセール『再生産について』
 私が翻訳に参加させて頂いた、アルチュセールのイデオロギー論草稿『再生産について』の紹介を続けます。今回は、その編者であるジャック・ビデについて。

 この『再生産について』は当初、二巻本の大著として企画されていました。その一巻でアルチュセールは国家の再生産の理論的問題を扱い、そして第二巻で実際の歴史について論じるつもりだったようです。そして、第一巻のみがほぼ「完成稿」として遺稿のなかから見つかった、ということのようです。遺稿出版計画はブータンとマトゥロンを中心とした人々が取り仕切っていたのですが、彼らはこのイデオロギー論の草稿を当初出版しない計画だったのですが、そこでジャック・ビデが自分の叢書の中で是非出版したいということで、95年にSur la reproductionというタイトルのもとにフランス大学出版局から、彼の編集にによって出版されたわけです。

 このジャック・ビデ、日本ではあまり知られてはいないように感じますが、どうでしょう? そこで今回軽く紹介を。彼の本で邦訳されているのは、『資本論をどう読むか』叢書・ウニベルシタスです。この著作、アルチュセールも生前に評価しており、それは『不確定な唯物論のために』大村書店において触れられています。彼はその後、マルクスとロールズの統合を主な研究主題にしておりました(私が仏滞在の時には)。

 この彼による序文は、アルチュセール理論の彼なりの解釈を提示していてなかなかおもしろいものです。とりもなおさず、彼はアルチュセールの国家のイデオロギー諸装置、あるいはこの『再生産論』を、「法の問題」、そして「法の死滅の問題」という切り口で解釈してゆきます。

 このビデ、マルクス国際会議の主催者なのですが、昨年秋にパリで開催された時には、かの『帝国』で有名なネグリと同じセッションで講演をしたらしいのですが、その場にいたネグリをビデが完全に「食ってしまった」ということのようです。共訳者の大中氏の話によると(彼も今回のマルクス国際会議では発表をしたので)。

 そう考えると、このビデ、彼もまたものすごい才人であることは確かなようです。

以下のリンクで、アマゾンのこの本のページへジャンプできます。
再生産について?イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置

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