a journal of sociology

社会理論・現代思想を主に研究する今野晃のblog。業績については、右下にあるカテゴリーの「論文・業績」から

アルチュセール『精神分析講義』:気になる本

2009年09月13日 | 読書
 アルチュセールの著作『精神分析講義』の翻訳ががいよいよ刊行される。

精神分析講義――精神分析と人文諸科学について
ルイ・アルチュセール
作品社

このアイテムの詳細を見る


 今日、献本をいただいてしまいました。ありがとうございます。訳者の一人である伊吹さんからでしょう。伊吹さんは、アルチュセールの『再生産について』で共訳者として一緒に作業をさせていただいたことがあります。

再生産について 上 イデオロギーと国家のイデオロギー諸装置 (平凡社ライブラリー)
クリエーター情報なし
平凡社


 まだざっと目を通しただけであるが、非常に読みやすい訳文である。アルチュセールの翻訳の中で一番読みやすいと言っても良いかもしれない。内容は、精神分析が人文科学・社会科学の中で、どのような役割を担うことができるのか? ということである。二回分の講義が収録されている。それから、宇波彰氏の解説、訳者の解説もある。

 第一回講義 人文諸科学における精神分析の場
 第二回講義 精神分析と心理学

 解説 アルチュセールのために 宇波彰
 訳者解説 欲望の空虚と痕跡 信友健志

 ちゃんとした内容は後の機会に説明するとして、例えば、第二回講義では、デカルト的な主体と心理学を論じる中で、なぜ主体が客観的な真理を確立する条件になるのか? という問いかけを行っています。
 すこし飛躍した視点かもしれませんが、これは、現在の社会の「自己責任論」や「自己決定論」、あるいは「自由な主体」をその前提(あるいは根拠)におく諸学問に対する批判になるのではないでしょうか。あるいは、(おおざっぱな括りであることを承知で言うと)ネオリベの前提を批判的に検討しているとも言えます。

 なお、佐藤さんの『権力と抵抗―フーコー・ドゥルーズ・デリダ・アルチュセール』アルチュセールのこの議論を抵抗の主体の根拠としていると言えるのではないかと思います。

 この二つの著作、一度ちゃんと紹介せねばならないと思いますが、それは別の機会にさせていただければと。とりあえずいまのところは大まかな紹介で。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。