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読書『新自由主義の帰結』

2018年09月14日 | 読書
新自由主義の帰結――なぜ世界経済は停滞するのか (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


 最近は、映画についてのエントリーが多く、本についてのエントリーを書いていなかったので、今日はある本の紹介を。

 上の本、『新自由主義の帰結』は、これまで各国政府によって進められてきた新自由主義的政策と、その政策の理論的根拠となった「新自由主義経済学」に関する本である。

 というと何の意味も無い紹介になってしまうが(笑)。

 この本の重要な点は、新自由主義的政策のもたらした結果の現実について、しっかりと説明している点である。これらの政策が、どのような名目を掲げて企てられ、しかし、それがその「看板」とは逆の帰結をもたらしたことがしっかりと、明確に論じられている。つまり、多くの人々に富をもたらすように思われた経済発展とそれをすすめるための「市場主義」が、現実には一部の富裕層にしか富をもたらさなかったことがしっかりと指摘されている。この記述は、非常に重要である。

 ただ惜しいと思ったのは、上のような政策が、いかにして人々の合意を調達していったかについての検討が多くないことである。無論、タイトルが『新自由主義の帰結』である以上、主題はその政策がもたらした結果の方であり、その過程については、主題ではないのだから、当たり前なのだが。


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