超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

ディケイドな「本の友」

2014-02-19 07:32:35 | 書籍
いつもひょんなことがきっかけなのだが、自分が読んだ図書で面白いものをリコメンドしたり、逆に面白かった図書を紹介してもらったりしながら、その本について少しだけ語らうような「本の友」(と自分では勝手に思っている)と言える人が数人いる。元々知性的に信頼できる人ばかりで、響きあうツボも同じような気がするから、「読んだよ」と言われると疑いなく自分もその本を手に取ってしまうのだ。同年代がやはり多いが、10年若い人、20年若い人が少しだけいて、30年若いのが息子甘辛である。しかも甘辛以外は全て女性、というのが不思議だ。この年になるとだからどうと言うことはないのだが、読書に関しては圧倒的に女性の方が相性がよい。なにかのきっかけでとある本を読み、色々なチャネルでそれを紹介するとそれを見て読んでくれる人がいて・・・その人が最近読んだ本で面白い、と言ったものを手にしてその感想を例えば「超兵器」に掲載する。そうこしていいるうちに私が勝手につなげている以外は何の関係もない人たちが「本」をキーに連鎖する時がある。読書を趣味とする者にはこの上なく親しみを感じる時だ。いつか、この人たちと集えたらどんなに楽しいかと思う。

例えば読んだ本の紹介や感想をたまーに直接メールなどしてくれる年来の知人がいる。この人も歴史や社会、人間模様から恋愛モノと読書の幅は桐生の「ひもかわうどん」のように広い。いつか紹介された本について思うままに感想を書くと、少しは期待に応えられたようだった。その彼女にKICKPOP師匠のサイトで拝見し、早速読んでみた「舟を編む」を紹介してみたら、いたく気に入った様子で「語る会」を開こうかなどと話したこともある。そして今度は彼女が教えてくれたのが先日、このサイトで紹介した「流星ワゴン」である。嬉しいことにKICK師匠も反応してくださったが、他にも記事を読んで誰かが読んでくれたら嬉しいと思う。

  

小夏師匠推薦の「Anne of Green Gables」は約10年下の敏腕マネージャー「ベッティ」が読んだはずだ。また別の機会に「イニシエーション・ラブ」という図書を紹介されたことがあった。この本は前回の「人生やり直し・・・」のように小説として内容をかいつまんで紹介しにくいものだった。男子的には歓迎な描写もある恋愛?モノで全体的には「下らない」内容なのだが、読み終わった時にある戦慄が走り、もう一度読み返さずにはいられない。ちなみに私は2回目は紙と鉛筆片手に何度もページを行ったり来たりした結果、落丁まで発生させついに「ヘウレーカ!」となった。なるほど、世の中には不思議な本もあるものだ・・・

  

私はこの本を「ぜひ感想を聞いてみたい」と思う何人かの「本の友」に伝えた。その一人は同門の元同僚だが、わざわざ本そのものを貸してくれた「夜のピクニック」は息子甘辛も気に入ったようで、DVDも家族で見た。また以前に「読書会」のネタになるような本として田辺聖子さんの三部作「言い寄る」「私的生活」「苺をつぶしながら」を紹介してくれた。3つとも読んでみたが、どれも時代を超えた女性の人生観などがいきいきと感じられる味わい深い本だったが、これらを題材に女性メンバしかいない「読書会」に参加した場合、絶対絶命の危機に瀕するような気がして口には出さなかった。今は波多野聖さんの「銭の戦争」という著書を読んでいるそうで、かなりの続き物のようだが私の次の読み物を予定している。

  

イニシエーション・ラブをリコメンドしたもう一人が以前このサイトにも登場したAKB(はたぶん卒業した)改め「あまちゃん」である。初めて会った時は新入社員も同然で「若くハツラツ」オロナミンC的にしか見えていなかったのだが、今東京で立派に中核戦力として活躍している。彼女も「阪急電車」という実本を貸してくれ、フレッシュな気持ちで読んだ。著者はどうも自衛隊フリークなところも私の共感を呼び、その後自衛隊員を主役とする面白い著書をいくつも読んだ。久々かつ突然にメールを送りつけてしまったが、早速読んでみると返してきた彼女が教えてくれたのが「風が強く吹いている」だ。これは先の「舟を編む」と同じ作者の著書だが、このサイトでも何度か話題にした我が家の近くを走る「箱根駅伝」を目指す若者の物語だ。早速読んでみたが、あまりに夢中になって読みながら東海道線を2回も乗り過ごしてしまった。実は陸上競技部錬成所だったボロアパートに住む個性溢れる十人の住人(シャレじゃないよ)が、陸上をやるものは多く特別な思い入れを持つ「箱根駅伝」を目指そうと決意する。ベタベタのフレッシュ青春物にも思えるが、胸の内にぐあーっとせり出したマグマ溜りを爽やかな風が冷やしていくような書物だ。

人数ギリギリの素人衆しかいない弱小クラブがその熱意と血のにじむ努力によってガリバーのような強豪を凌駕していく物語は古くは「キャプテン」「スクールウォーズ」そして最近では「ルーキーズ」と枚挙にいとまがないが、スポーツとしての技能や精神とは一段異なった、最もシンプルで簡単な「走る」ということがどういうことかを取り上げたところが新鮮だ。ボロアパート「竹青荘」にはコミック命の「王子」、理工学部留学生の「ムサ」、元サッカー部の明るい双子「ジョータ」と「ジョージ」、田舎でだけ呼ばれていたという「神童」、卒業前に司法試験合格済の「ユキ」、大学5+2年生のヘビースモーカー「ニコちゃん」、TVの前のクイズ王「キング」だった。それぞれ長距陸上などには全く縁のない生活をしていたが、高校陸上で問題を起こしたが才能抜群の「走(かける)」と出会った影の管理人「ハイジ」が箱根駅伝を目指すことを宣言する。彼は烏合の衆にも見える住人に見出した箱根向きの才能をひた隠し、メンバの頭数が揃うのをひたすら待ちわびていたのだ。

    

なーんかいいよなあ、こういうの忘れちゃいけないよなー。というように読み進められる。私も最近「湘南藤沢市民マラソン」で16キロを走り切り、練習は退屈しながらも、大会の高揚感、沿道の応援との一体感、そして身体との対話などを通し、「走る」って結構楽しいものだし、これから迎える年代向けじゃないか?と思い始めていた時だったから、それこそ夢中になって読み進んだ。予選会をギリギリ通過し、晴れて箱根に向かう本戦に出場する。(ここまではネタバレしてもいいよな)メンバは各区間を走る時、それぞれ仲間への思いや1年間の努力などを振り返り後はひたすら襷をつなぎに走り続ける。単なる悲壮感漂うスポ根ものではないところがいい。小学生なみの感想だが、ちなみに私が一番好きなのはムサ、東海道線を乗り過ごしたのは「双子の弟を想いながらジョータが走る3区」である。

1区:王子
「力石だ、力石ですよニコチャン先輩は!」
2区:ムサ
「神童さんは入学当時から交際している女性がいます。」「私はだめですねえ。なかなか故郷まで来てくれるというかたはいません」
3区:ジョータ
「3区って海沿いを走る道でしょ。景色がいいよな」
4区:ジョージ
「小田原でカマボコ買っていい?」
5区:神童
「田舎の家では、マッサージチェアとルームランナーとぶら下がり健康器が、たいてい埃をかぶっているものなんだよ」
6区:ユキ
「ハイジ。おまえすぐにひとの脚に触る癖、やめたほうがいい」
7区:ニコチャン
「双子がな、葉菜ちゃんの気持ちに気づいたんだよ。それで、走り終わったジョータもふにゃふにゃ、走り始めたジョージもふにゃふにゃってわけだ」
8区:キング
「ムサ、おまえもこの春から聞かされ続けたはずだぜ。ハイジが『番町皿屋敷』みたいに『あと一人たりない、あと一人・・・』とつぶやいているのを。」
9区:走
「シューズのせいじゃないかと思うんですけど。それ、バッシュでしょ?」
10区:ハイジ
「長距離の選手にはいくらでも飲めるって体質の人が多いんだ。内臓の代謝がいいのかな。きみたちもザルを通り越してワクだろ?ずっと飲みっぷりを観察していて、これはいける、と思ったわけだ」

練習中にも本番にも絶妙な抜け具合が随所にあるところが肩の力が入り過ぎなくてよいが、肝心なところは帰マンのウルトラランスのようにグサリとついてくる。「オレは知りたいんだよ。走るってどういうことなのかを」
私は社会人になるまで一応サッカーをやっていたが、「走ること」が楽しいなど一度も思ったことがなかった。高校の駅伝コースマラソンはいつもサボっていたし、学生、社会人になっても「黙々と走る」意味は全く理解できなかった。生まれて半世紀近くたってようやく、人類のただ「走る」という機能に少し興味を覚えた。息子甘辛にもぜひ読ませたいと思った。この本は出世魚のブリのように読む年代によって変わっていくものではあるまいか?!時間はあり余り体力バリバリの学生時代、時間はないがまだまだイケる社会人初期、家庭をもって一旦スポーツとは離れる期間、そしてまた動き出すが身体との対話が必要となる年齢・・・この本を読んで、ついその気になり台場のグルメマラソンにエントリーしてしまったぞ。

骨太筋肉質の「ニコチャン」スタイルの私と異なり、甘辛はスラリとして脚が長く「走」体系だ。長距離走も速そうだが本人は「あり得ない」という。私もそうだったが、いつかもっと年を経て甘辛がこの本を読んだ時、今とは全く違った、私と同じような気持ちになったら実に面白い。(そうなるような気がする)
「あまちゃん」は私のリコメンドした「イニシエーション・ラブ」を読んでくれたようだ。その感想なるものをメールしてくれたが・・・イニシエーションとは「通過儀礼」つまりこれが最後の恋だと思っても、次なる成長はやってくるものだ。。。と最初ここまではボクも何となく理解したのだよ。ふ、ふ、ふふふ。。。ハイジ風に言えば「君は肝心なところにまだ気付いていないようだ」。ちゃんと解き明かして「ヘウレーカ!」とメールしてこいよ。
世代年代を越えて、リコメンドし合う「ディケイドな本の友」は得難い資産だと思う。


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4 コメント

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Unknown (小夏)
2014-02-19 21:03:27
し、師匠、、、
このアンのご本は、、ポカーン!まさか、いえ、もしや読み込んでこうなってしまったのでしょうか@@!?
私の考えもない一言で、人さまに影響を与えてしまったのでしょうか。そうだとしたら感動で震えるぅ~

と、朝から「私も図書館へ!」、、とカードを探すも出てこないでタイムアウトとなってしまいました(苦笑)12月くらいまではお財布に入っていたのに・・。
私の老後、ちょっとは読書に親しもうと思えてきました。
師匠、ありがとうございます。
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Unknown (磯辺太郎)
2014-02-20 06:16:39
小夏さま

い、いやー、元々AMAZONで購入する時にちょっとくたびれた中古本しかなかったのですよ。でも日本語版と合わせて楽しく読みました。本家版のDVDが借りられなかったのが残念。。。
「赤毛のアン」は師匠はその昔お読みになったのでしょう。おそらく今読むと、また前とは違う感想を持つと思いますよ。私はそういう本がほとんどないので、羨ましいです。

老後なんて先のこととせず、ぜひ今、お薦めの本があったら教えてくださ-い。
手始めに「イニシエーション・ラブ」などいかがでしょうか?ふ、ふ、ぐふふ。。。
師匠の反応が楽しみだー。
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Unknown (KICKPOP)
2014-02-22 08:32:39
サッカーを長くされていた師匠が走ることにあまり興味をお持ちでなかったとは・・・ちょっと意外でした(テニス部の後衛で走ってばかりだった私も走ることに喜びを感じてはいませんでしたが・・・)。黙々とただひたすら走るって、ちょっと修行っぽい感じがします。だからこそ年を重ねてからの方が楽しめるのかもしれませんね(奥が深いです)。

「流星ワゴン」、サンフランシスコの紀伊国屋さんでオーダーしました♪来週初めには届くと思います。私が読み終わったらブブも読む~!と張り切ってます(今、宮部みゆきにハマっているようです)。とっても楽しみです♥
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Unknown (磯辺太郎)
2014-02-22 14:23:22
KICKPOP様

こんにちは。特に部活をしている時は、「ただ走る」など体力の消耗だと思ってました(すごい勘違いですね)。
そうそう修行!ジョギングしながらそう言えば師匠のブログに「身体と会話する」みたいなことが書いてあったなー、と思いついたものです。
「駅伝」って日本人らしい文化だと思います。機会があれば「風が強く吹いている」もぜひ!DVDにもなりました。

ホントにオーダしてくださるとは感激です!最初に言っておきますが、重いですよ~前半は「やりきれなさ」との戦いです。
お嬢様が「宮部みゆき」!私、息子の薦めで読んだ「ブレイブストーリー」大好きです。この話も少し重いけどすごいです。
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