超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

肉体資本の嗜み

2016-01-31 09:47:41 | ホビー
今年オープニングラン(と言いうほど走りはしないが)となる湘南藤沢市民マラソンはかなりスローペースだったが、無事に10マイルを走り切って余力を残してゴールできた。いつもは釣り客で賑わう湘南港灯台の手前の駐車場で着替えを済ませ、今回はド派手な赤い記念Tシャツとあまり効いた経験のないファイテンのネックレスを受け取り、まだ完走ランナーがゴールしているコースを横目に待ち合わせ地点に向かった。海原に白い波があちこちに見えるほど強風に震えながら弁天橋を戻ってくると、さすがにもうちらほらしか見られないランナーのすぐ後ろに大型バスが2台追走してくる。「あれが噂の『ドナドナバス』か?!」ゆっくり走るバスの後ろには警官がいてランナーは1人もいない。規定時間を過ぎるとバスで回収されてしまうということだが、ちょっと見た限りバス内には係員の他に「ドナドナされてしまった」ランナーらしき人は見当たらなかった。ゴールまではせいぜい200メートル・・・さすがにここで回収するほど酷なことはしないだろう。待ち合わせ場所に行くと、マイクはとっくにゴールしたようで元気そうに手を振っていた。私が前半にものすごい多数のランナーに行く手を阻まれ、やたら遅いペースで楽ちんに走ったとは言え、それより30分以上早いタイムなのは驚きだった。そのごっつい身体からは想像もできないしなやかな走りだったのだろう。しばらくするとほとんど練習もせずに何年ぶりかのマラソンで前回の雪辱を果たした「しんさん」が現れて、我が家まで3人でてくてく歩き始めた。

    

マイクとはモトチバ会以来(と言っても数か月前)で、東京マラソンで初めてフルマラソンを走った経験など色々聞くことができた。10kmでだいたい1時間、10マイルでは100分くらい、サッカーで60分、90分と走りっ放しなのは身体に刷り込まれているから何となく勝手が分かるのだが、2時間、3時間となると未知の世界で各器官に何が起こるから分からない。特に私のように退屈が死ぬほど嫌いな回遊魚体質は4時間も5時間もただ走り続けることなどとてもできるとは思えない。「一体、何を考えて何時間も走れるんだい?つまらなくないの?」と聞くとマイクは「1kmごとのラップを見て、ペースを調整したり身体を観察したり色々とやることが多くて意外に時間が経つのは早い」と言うのだ。ある程度集団内で走る以上「周囲にやたらと追い抜かれたり」「自分だけが次々にランナーを抜き去る」時がある。やはり長丁場だと周囲に惑わされて自分のペースが狂うのが一番危ないので、(彼の場合は1km5分半というペースを)距離表示を見て注意深く維持するらしいのだ。あとは終盤に差し掛かると「もうちょっとイケそうか」「ちょっと休むか」などと身体と会話しながらゴールを目指すという。

彼は20数年前からマウンテンバイクも乗りこなし江ノ島水族館まで数十キロもはるばるやってきたことがある。最近は海岸道路でもよく見かけるようになったロードバイクとは少し異なるが、前3段、後6段というギアを持ち、本格的なヤツだそうだ。「おとおさん」も今流行りの自転車に乗り、伊豆半島や三浦半島、かなり遠出をしているようだった。「だいたい18通りもギアの種類があって、全部使うのかよ?平らなとこと登り下り3つ4つありゃぁ足りるだろ。オレなんかいつも同じギヤだから他のに変えるとギャラギャラうるせえんだけど・・・」不思議そうに尋ねるとマイクは当たり前のように、その時々の傾斜や風の向きなどに合わせて最適なギアを選ぶのが楽しいのだと諭すように言う。ここに煩わしいと感じるか、楽しいと感じるかの違いがある。それから歩く速度に合わせるためにいつもよりも軽いギヤで「きーきー」言わせて走る私の自転車を指差して「さっきから、気になってるんだけどよ。家帰ったら、チャリに油させよ!」どうもマイクはどのポジションもベストなコンディションにないと気が済まない性質らしい。
「ところでさー、チャリで何十キロも遠くに行くんだろ。行先で故障したり、調子悪くなったりしたらどーすんだよ?」

散歩ならば家からの距離などたかが知れているから、具合が悪くなろうが靴がダメになろうがどうにかなる。しかし1日がかりで何時間もチャリを走らせたところで致命的なアクシデントが発生した時の絶望感は歩きの比ではあるまい。マイクは事も無げに「パンクやちょっととしたトラブルなら対処の準備をしている。どうしてもダメな時は近くの自転車屋に持っていくか、電車内に持ち込めるように専用袋を用意しておく」これまでも何度かそういう目にはあったようだ。「だって、おとおさんなんか、伊豆高原とか行ってるぜ。あんなところに自転車屋なんかねーじゃんか」あたりを彷徨い続けてどうしてもダメだったら最後の最後、私なら捨てて帰る。結局それは採ってはならない手段なので自転車で遠乗りはできない。「そういう考え方する磯ちゃんは、自転車は無理だなー。オレのなんかさ、買ったのは4万5千円くらいだけど、修理その他に15万円くらいかかってるぜ」本件に関してマイクと理解しあうのはほぼ不可能だと感じた。

「オレ、運動神経あんまりねえからさ。馬力で勝負するわけよ」マイクは涼しげに話す。実際そんなはずはない。彼は青年期から柔道家でれっきとした高段者である。アジリティ(すばしこさ)が前面に立つ球技スポーツ系があまり得意でなかったのは確かで、その点変化球を好み単調な体力勝負が苦手な私とは対極的な位置にはあるかもしれない。ちょうど真ん中辺に位置?するスキーの腕前などは私よりも少し上なくらいだ。趣味の話、健康維持の話、子供(上のお嬢さんは甘辛と同い年)の進路の話など、高濃度炭酸泉でとめどもなく続きスーパー銭湯から帰宅すると私とはすれ違いになった応援団がすっかり「打ち上げ」の支度を済ませている。ボランティア警備員の「おとおさん」ご夫婦や、こちらも完走証発行のお手伝いをしていたというお嬢さん、T焼さんと恐るべき笑才のお嬢さんには何とトイプーがまとわりついていた。このメンバーでマイクは初登場だったがお誕生日席で明るく皆を笑わせながら相変わらずの食いっぷりだ。何せデタラメ4人組で彼の実家で大層御馳走になった時の話だけで、ミシュラン星ものの香ばしい逸話がいくつもあるのである。

  

お友達家族にとってマイクの存在は結構新鮮だったと思う。彼が医学の道に進み学位を取得したこと、オスミウムのような密度の身体を持ちながら東京マラソンを走り切ったこと、今回のマラソンで走ったメンバではぶっちぎりに速いタイムだったこと、どれを聞いても驚いていたようだ。(多少失礼かも)気が付くと走り切ったメンバーは皆「ヘタレでない証明」に完走記念のTシャツを取り出してめいめい服の上から着込んだ。いつもデザインがイマイチの完走Tシャツも今回は鮮やかな赤で色だけは美しかった。そういえば2年前に10数名見かけたチームTKB48(Tomita Kyoko Bakuso 48Age)のお揃いTシャツがTKB50となっていたが爆走の「B」ではなく、Beautifulの「B」だった。。。(大台に乗って気を使ったのか?)「たまさん」情報によるとどうも「とみたきょうこ」さんとは元プリプリのドラマーでレディオ湘南のパーソナリティを務める富田京子さんのようだ。赤シャツで記念撮影をしながら「我々も来年はチームを組んでTシャツ作らねえか?」単なるノリで言ってしまっただけなので、実現するかどうかは未定だが、どうせチームTシャツを作るなら「リレーマラソン」に出たいと思う。「襷をつなぐ」という行為が単なるコースをマイペースで走るのに比べどれだけ気分が高揚し、またプレッシャーのかかるものなのか、体験してみたい気がするのだ。

    


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