超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

堅い解決発表会

2014-03-02 06:41:50 | 職場
どこの職場でも似たような取り組みは行っているようだ。前の職場でもルーキーズ相手に行われていた業務カイゼンのようなもので今回は「課題解決発表会」といういかにもお堅いタイトルだった。発表者は入社3~5年目くらいの半ルーキーズのようなものだが、 元々他社から派遣されていたのが晴れて正社員となった人ばかりで、それなりに仕事を経験しているから目のつけどころも鋭い。発表は10分、質疑応答12分、上司のコメントが3分、全部で25名いるから3回に分けたようだ。発表者だけ各ロケから台場に集まり、テレビ会議で中継して各拠点を結ぶ。1回の発表会で半日を丸々費やし、懇親会付きだから全部に顔を出す私もキツいものがある。私の役目は(むろん各発表で質問、コメントするのもありだが)、その回の全ての発表が終わった後に「総評」することにある。

これまでの職場でも類似したイベントは何回もあったが、私はこういう時「総評」と言いながらも一人一人の発表についてずばり一言二言「こう思った」とコメントする。長い発表会の後で皆、疲れており仮に気の利いたことを話しても、ほとんどは覚えていないものだ。(本人自体があまり覚えていないし)しかし一見面倒そうに見えても、一人ずつに何か言えば、当時者だけは自分向けのコメントぐらいは覚えているだろう。大体この手の催しやパネルディスカッションなどを見ていると、日本の文化として会場から活発な質問や意見などは出てこない。「どなたか質問、コメントはありますか?」と司会が聞いても、ばばばーっと挙手があって誰を指名するか迷うようなことは滅多にない。マイケル・サンデル教授のハーバード熱血教室とはずいぶん雰囲気が違うものだ。

さて第1回目は発表者9名、司会者からして何か堅い雰囲気があったが、最近の若者はこの手のプレゼンテーションは結構場数を踏んでいるようで、皆堂々たる見事な発表だった。2回ほど休憩をはさんで全員の発表が終わり、総評の時間となった。総評者は3名おり、予定表では私が最初に書いてあったから、とっとと終わらそうとしたら司会から「それでは総評を頂きたいと思います。まず磯辺さん・・・は最後にお願いするとして○川さんからお願いします」またコイツ変な捻りを入れやがって。。。話をかぶらないようにするのが面倒くさいじゃないか。幸い、前の二人は当たり障りのない(たぶん誰も覚えていない)内容の話で締めくくり私の出番となった。

「皆さん、長時間にわたりお疲れ様でした。若手と言っても私よりもはるかに経験もある方々ばかりで、ずいぶん色々気付かせて頂きました。この手の取り組みはあらゆる職場で行われていると思いますが、『課題解決』というタイトルそのものに忠実に言えば、その知的労働のほとんど全ては『課題を見出す』ことにあると思っています。見いだせさえすれば、はっきり言えばどんな課題でも解決はできると思うんですよ。ある課題に取り組んでいると次の課題に巡り合う。そしてその課題からまたいくつもの他の課題が・・・こういう連鎖反応を起こして課題の引き出しをたくさん作っておいて下さい。オフィスですれ違った時「最近の課題は何?」と聞かれて10個くらいすぐに出てこない人は明らかにサボってると見なします。」(我ながらキツい?!)

「さて、せっかくの機会ですから発表頂いた内容をおさらいしながら軽く流してコメントします。まずトップバッターの▼さん、グループのリーダのつぶやきを拾って、色んな役目の人に意見を聞きながら解決しようとしているのがいいですね。ただせっかくのアドバイスを取り入れるんならもっとはっきり『ここに活かしてます!』とわかるようにしたほうが伝わると思います。・・・・・・・・皆さんの発表を聞いていてオリンピックのラージヒル2本目を見るような感じがしました。順番が後ろに行くほど1本目で距離飛んでるんですよね。だから最初の方はダメというわけではありませんが・・・7人目辺りからK点超えてきたと思いました。8人目が137mくらい、金メダルかなーと思ってましたが、最後の人が140mで見事ファイナルって感じでした・・・」

第2回目は数日後、1回目と全く同じ要領で発表が進行していった。「外野の意見が少な過ぎるんじゃないの?日本人ってこういう時手を挙げないよねえ」などと苦笑いした1回目を忘れていなかったのか、PTA陣は結構活発に質問、コメントを発した。前回のようにしーんと静まっていたら、ずーっと一人でしゃべってやろうかと思っていたのだが・・・全ての発表が終わりやはり最後に総評を申し上げる番がきた。むろん「同じ人に同じ話を聞かせない」というのが私のポリシーだから、1回目の続きの話をした。(外野を除いては1回目は聞いてない人ばかりだけど)

「お疲れ様でした。さすが皆さん、今回も実際に応用して使える武器をたくさん発見できました。第1回目の発表会で『課題をたくさん見出してくれ』と申し上げました。皆さんにもそれはお願いしたいんですが、これにはちょっとしたツボがあります。「疑ってかかる」ということです。我々の職場にはこれまでやってきた仕事のスタイル、やり方の最適性を「信じて疑わない人」が実に多いです。厳しいことを言いますが、特にマネージャーに多い。何か新しいことを始める、やり方を変えようという時にまず「できない合理的理由」を探しますね。何かを始める時に不都合とか失敗リスクとか、代償としての負担増とか・・・マイナスイメージを持つのは悪いことではないと思っています。人間が狩りをして生きている時からの生存本能です。未知の獲物にむやみに近づいたら食い殺されるかもしれないですよね。でも今はよほどのことがなければ「命はもちろん職を失うこと」すらないんですから、もう少し成功をイメージしてもいいと思います。素晴らしい課題ほど解決には間違いなく今までと違うことを行いますから抵抗も大きいです。ぜひ勇気を持って疑ってかかることと、成功のイメトレを心掛けてください」

発表毎のコメントは前回と同じような話になってしまったから省略。週半ばにようやく第3回目を終え、25名全てが発表を終了した。途中でもわーわー、色々と騒いだが、総評としては発表内容もプレゼンテーションも十分に高い品質で準備に余念のなかったことを想像できるものだった。1回目の話は何となく思い付きで話し、2回目はそれに何となく続けただけだったが、3回目になって「実は周到に用意された続きモノの訓話だったことにしよう」と悪魔のように思い付いた。

「今回で最終回になりますか。これまで発表されてきた皆さん、アドバイス、指導された先輩方、PTAの方々お疲れ様でした。25個もよい課題があったということは皆で考えればもっともっとよい知恵が出せるということですね。私はいずれ私達社員の仕事というのはそのほとんどが「課題を見出して解決する」ことのみになると思っています。その辺の話をまとめようと思います。私がこういう時に同じ話をしないのはご存知だと思いますが、実は総評で申し上げてきた話はこれで完結する3部作だったのです。(悪魔笑)最初、『課題を見出してたくさんの引き出しを持って』と言いました。2回目は『そのために疑ってかかり、成功のイメトレせよ』と言いました。最終段階は『それでも一見大きな課題がない=うまくいっているようだったら課題を創り出せ』ということです。捏造しろと言うことじゃありませんよ。ちょっとスコープをずらすだけで結構課題になることも多いんです。ではなんでここまでして課題を探し出さなければならないか?年頭に申し上げた今年のテーマ「少しだけ変える」ことが必要だからです。揺すって揺らぎを与えるんです。我々のような職場は退屈が大きな敵です(これは個人の好みかなー)。実は今日の午前中、私の上司と来年度何するかについてディスカッションしました。皆さんも協力してくれてスタッフが色々と用意してくれた資料も使い1時間ほどお話しさせてもらいましたが、言いたかったことは「マンパワーで成立している事業なんだから、人が最大限パフォーマンスを発揮できるようにあの手この手を使って改善サイクルを確立しよう」という唯一つです。課題解決というのは堅い表現ですが、こういうイベントでなくてもぜひ色んな形で仕事を揺さぶり、変化に富んだ職場としましょうねー」

うーむ。。。決まったような肩透かされたような・・・話自体はつながってるんだよな。でも最初思い付くままに言ったことに、たまたまKICK師匠の「イメトレ」という言葉がばっちり重なり、実は最初から用意されていた3部作だったということにして、最後は年頭のテーマに帰着させるという、ボロい作戦であることはお見通されたかもしれない。しかし何かこういう機会があると必ずと言っていいほどKICK師匠のサイトには有用な言葉を拝見できる。まるで私のためにご用意頂いたような海を越えた以心伝心も感じるのである。(いつもありがとうございます)
まあ、締めのセリフも「堅い解決発表会」だった。さて仕事の上での課題など「どうとでもなる」と偉そうに言い切ってはいるが、「自分のこと」となるとこれがさっぱりなのが面白い。その話はまた今度にしよう。

おまけ。湘南地方の記録的豪雪に「人型を作らずにはいられない」息子甘辛の図。奥に埋もれて見えるのが「赤いライオン号」。我が家の全ての兵器は出撃不能となった・・・