超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

実験用白衣でクッキング

2012-12-11 04:46:28 | 食べ物
(これは先週の話です)
かつて日曜午前に家族で見ていた「世界の料理ショー」、今テレ東で月曜から金曜までの朝8時に再放送しており、その番組ごとのレシピがホームページに掲載されている。番組は52回、つまり毎週放映すると1年分のところを週5回放映しているから、2ヶ月半で終了してしまうことになる。子供の頃は調理方法などについては興味も知識もなかったが、今になってVTRを見ると「聞いたこともない」香辛料は使っているが、特段難しいことをしているわけでもない。どちらかというと時間はかけるが「雑」な作り方だ。世界各地で取材(時には本人のオリジナルアレンジ)された名物料理とはどんなものだろなんだろうか?どの一つをとってみても家の食卓に出てきたことはないし、レストランのメニューで見たこともない。

その味を知るには「自分で作ってみる」しかない。日曜日の午後は天気が下り坂で寒くなるとの予報だったので、このタイミングで前回書いたように実際に製作してみることにした。レシピを見ながらさてどれにしようかな・・・?妻が録画を始めてくれたのは第4話「がちょう丸焼きデンマーク風」からだ。クリスマスに一度だけ鶏を丸焼きしたことがあるが、別にどうということもない、どちらかというと残骸が多いので片付けとかが大変な料理だった。それに加えガチョウというのは・・・ちょっとないな。「マッシュルームスープイタリア風」は手間の割にはメインには少し寂しい気がするし、「フライドフィッシュとたらマリネ タヒチ風」かぁ・・・あんまり酢の物好きでないからビネガーというのはどうもね。「豆ベーコン煮込みオランダ風豆入りオムレツ」がよさそうだったのだが、肝心のオムレツがうまく作れるかわからぬ。。。

ここは(ネームだけやけに長いが)「スプリングサンシャインポーク煮込みタスマニア風」を製作してみることにした。もう一度VTRを早回しで見てみたが、明らかに「大したこと」はやっていない。材料はポーク肩肉、小麦粉、玉ネギ、ニンニク、溶かしバター、ビーフストック、ブーケガルニ?、ピーマン、リンゴ、レーズン(入れない)、片栗粉、塩・コショウである。前日に妻に聞いたら「調味料と粉以外はほぼ全部ない」と言うのでスーパーで購入しておいた。しかし4人前ポーク肉だけで900gだと?まったくかの国の人の胃袋は恐ろしい。。。。ビーフストックはコンソメスープで代用できると聞いた。また溶かしバターなど使ったことはないが、普通のバターとサラダオイルの混合で何とかそれらしくなりそうだ。ブーケガルニというのはパセリの茎と月桂樹の葉、タイムの茎を束ねたものと書いてあったが、何と今はティーバックで売っているのだ。

午後から調理に入るつもりだったのだが、いつものように早朝に目が覚め、「準備だけでも」とごそごそ材料をキッチンに並べているうちに、その気になってしまい、そのまま流れで作り始めた。VTRをセットしてレシピをプリントアウトしてから、まずグラハム・カーのようにグラスにワインを注いでと。。。キッチンに洗いモノがあると気分が乗らないのでざーっと洗い始めると乱暴に行ったせいか洗剤としお湯が茶碗からバウンドして外へ飛び散り、その反動でワインボトルを引っ掛けてしまい・・・わーわーっ、今のなし!慌てて飛び散ったお湯とこぼれたワインを拭き取って、びっしょり濡れたパジャマからスウェットに着替え、上には(今度料理教室に行くことがあったら、エプロン代わりにしようと見学先の工場で頂いた実験用白衣を上にまとった。レシピを打ち出してVTRも流し始めた。何々・・・・?

  

01>あたためた鍋に溶かしバターをいれる。
って冷蔵庫のどこにもバターなんてないじゃんか・・・早朝だし起こすのも悪いから、家にあると思っていた材料を探してみると、どうも片栗粉もないようだ。。。外はまだ暗くてえらい寒かったから慌てて車のキーを持ち、近所の西友まで買い物に走った(よかったー。グラスワインに口を付けてなくて)。私はこの辺の段取りがどうにも悪いのでレシピに則って一応の食材をキッチンに並べておくことにした。別の料理の時に放っておいても焦げない「溶かしバター」の作り方があったのだが、そこまで手間をかけられないのでバターとサラダオイルを混ぜて使うことにしたのだ。

02>肉は脂肪を取り除き、適当な大きさに切る。
もともとカレー・シチュー用の肉を買ってきたので番組のように巨大なブロック肉を切る必要はない。それにしても改めて900gとはものすごい量だ。一番大きい鍋を用意したのだが、肉だけで溢れかえってしまったので、もっとでかいフライパンで代用せざるを得なかった。

03>ポリ袋をつかって、塩コショウを混ぜた小麦粉をまぶす。01に入れ、潰したにんにくも加えて焦げ目がつくよう炒める。
唐揚げを作る時に妻がやっている手法だな。ポリ袋が見当たらず(ゴミ用袋を使うわけにもいかぬので)、肉が入っていた2重ビニール袋の外側を使った。レシピには「適量」としか書いてないから適当に匙に取り、どばばーっと袋に入れて塩・コショウをぶちこみ、揉みほぐしてまぶしてみたがどうも粉が少し多かったようだ。これをバターとサラダオイルの入ったフライパンで炒め始めた。そして番組での見せどころ「包丁の腹でにんにく潰し」である。包丁を寝かせ下にニンニク一切れをまな板との間に挟んで、拳を硬く結び「バンっ」と潰してみた。なるほど、そこらじゅうににんにくの香りが充満した・・・

      

04>焦げ目がついたら肉を一度取り出し、玉ねぎを溶かしバターをでじっくりと炒める。
カーは番組の中で「肉と玉ねぎを一緒に炒めてはいけない」と強調していた。ここは忠実に焦げ目がついた肉を取り出し、同様にバターとサラダオイルでスライスした玉ネギを炒めた。これはどうやらカレーを作る時の要領のようだったので結構念入りに炒めた。

05>肉をもどす。ブーケガルニ(月桂樹の葉1枚、タイムの茎1本、パセリの茎1本)とビーフストック600ccを加え、蓋をして1時間45分煮込む。1時間15分経ったところでピーマンを肉と同じくらいの大きさに切り、入れる。
肉をフライパンにもどすとあふれんばかりの量になり更に炒めるのは困難を極めた。正確の600ccのスープを加えティーパックのブーケガルニを入れて蓋をした。実に簡単な調理である。この間にVTRを見ながらこの後のプロセスを確認し苦闘の末、ガチャガチャになっているキッチンシンクを片付け始めた。ここが「やりっ放し」(たぶんスティーブが片付ける)の番組とは大きく異なるところだ。私は妻に「男は調理しても片付けない」と言われるのが嫌いなので、魚を下ろすときなども「破片一つ残さずに」片付ける。きっちり1時間15分たったところでピーマンを切り、フライパンにぶちこんだ。

        

06>上に浮いている脂とブーケガルニは取り除き、食卓に出す数分前にりんご、レーズンを入れてさっと煮る。溶いた片栗粉を入れかき混ぜ、沸騰する前に火を止める。できあがり!
煮込み始めて1時間40分経過したところでりんごを入れる計画だったが、何と私はリンゴの皮が剥けないことに気が付かなかった。!昔から包丁の刃の近くを握って親指をくいくい動かして皮をむいて行く技が使えないのである。しかし時間がない・・・仕方がないのでなるべく薄く皮の部分を直線的に何回も繰り返しながら切り落とした。だいぶ多くの実の部分をロスってしまった。レーズンはあんまり好きでないから今回はパス。

       

ピーマンのぶつ切りを途中で煮込み足し、直前にりんごを入れるところが「タスマニアっぽい」のかもしれないが、それ以外はカレーやシチューと全然変わらん。。。いかにも味付けが足りないような気がしたのだが、途中なんどもつまみ食いした限り、1時間45分も煮込むと中々シンプルでよい味が出ているものだから、さすが世界の料理研究家だ。そして全体的にかなりトロミが出ているが、レシピに忠実に水溶き片栗粉(カーは水の代わりにその辺にあった白ワインを使ったりする)を少なめに入れてかき混ぜたら、なんと中心部がくっ付いてしまってるじゃないか!?しかし味に支障はないようだ。

我が家自慢のウルトラ皿&ワイングラスを用意して盛り付けてできあがり。うーむ。。。。できあがりを見たところは中々よい見栄えなのだが。グラハム・カーばりの恍惚とした表情でフォークですくった「ポーク煮込みタスマニア風」を口に入れると・・・おーっ、中々シンプルでいけるじゃないか。作り途中の出来損ないカレーみたいな味かと思ったら、玉ねぎとピーマンがうまい具合に香りを醸し出し、りんごの酸っぱさがアクセントとなって人に食わせてもおかしくないテイストのようだ。しばらく満足げに食していたが、しばらくして首を傾げた。確かに味はよいが、カレーのように「ワシワシ」がっついてお代わりするようなものではない。つまり腹一杯食べるようなモノではないようなのだ。どちらかと言うとそこそこ値段のする立食形式の懇親パーティで小皿に取り分けてグラス片手に嗜む程度のモノかなー。

    

作ったのは4人前で息子は少し食べて「中々うまい」、妻は食べたらしいがコメントなしで、結局2日がかりで私が全部責任を取る形になった。赤ワインを片手にディナーとしてはそれほど悪くないものだったが、反省点は3点。
まず、小麦粉が多過ぎて肉の周りに余計な衣のようなものが付いてしまったこと。次に番組ではグラハム・カーがジョークを言ってCM後には出来上がっていたが、1時間30分煮込む間はたまにかき混ぜなければならなかった。そして最後に、これだけ時間をかけて煮込むと自然にトロミがついていい感じの食感になるので、片栗粉は不要である。おまけだが、最後の一皿はカレールーを入れて温めたら、実に美味かった。。。
「世界の料理ショー」メニュー、実験用白衣クッキングはまだまだ続く・・・