民間企業には、販売目標(いわゆる、ノルマ)があるものですが、課せられた対象者が半数以上達成できない
販売目標は、課したほうが悪いと認識しています。
ノルマを課した側は、目標達成のための具体策を例示するか、自ら範を示す必要があるでしょう。
自爆営業…郵便局員が自殺、達成困難なノルマ さいたま労基署は労災認定せず、埼玉労働局が労災認定
22.4.2埼玉新聞
さいたま新都心郵便局(さいたま市中央区)に勤務していた男性=当時(51)=が、2010年に自殺したのは、業務上のストレスでうつ病を発症したことが原因だったとして、埼玉労働局の労災保険審査官が労災認定したことが1日、分かった。男性の妻(52)は同日、さいたま市内で会見し、さいたま労働基準監督署の判断を取り消す決定に「正しい判断をしてくれた。二度と社員や社会を裏切ることのないようにしてほしい」と再発防止を訴えた。
「仕事が死の原因だったと認められた。ここまでの時間は長かった」。男性の妻は会見で、夫の死からの月日を振り返った。
遺族側の代理人弁護士によると、男性は1982年から県内の郵便局に勤務。06年5月にさいたま新都心郵便局に異動になると、郵便物の配達や年賀状の営業などを担当。過重なノルマなどが課せられ、08年にうつ病を発症した。その後、計3回にわたり病気休暇を取得。復職から約半年後、同局4階から飛び降りて死亡した。
同局では、年賀ハガキ1人7~8千枚の販売ノルマを課して、売れ残りを社員が買い取る「自爆営業」や、ミスをした理由を大勢の社員の前で報告させる「お立ち台」などの行為が行われていたという。
遺族は15年、さいたま労基署に労災を申請。17年に労災保険の不支給が決定したことを受け、同年、埼玉労働局に審査請求を申し立てていた。
労災保険審査官は、達成困難なノルマが課されていたことなどを認定。業務上のストレスで発症したうつ病が原因で、自殺に至ったと判断した。
妻は「生きていたら昨日で定年だった。家族のために働いてくれた夫に『ありがとう』と伝えたい」と話した。
日本郵便は「社員が自殺したことを重く受け止め、今後は社員の声に真摯(しんし)に向き合うことを徹底していきます」とコメントした。
遺族は13年、日本郵便に損害賠償を求めて、さいたま地裁に提訴。16年に和解している。
日本郵便、過労自殺で異例の謝罪 「遺族が10年以上、声上げ続けた」
4/4(月) 西日本新聞
2010年に埼玉県の郵便局員の男性=当時(51)=が年賀はがきの販売ノルマなどを苦に過労自殺した問題で、日本郵便が昨年6月、男性の遺族に謝罪していたことが分かった。遺族は一貫して謝罪を求めていた。同社は16年に解決金を支払うことなどで遺族と和解している。訴訟が和解で決着した後、企業が対応を改めて謝罪するのは異例。和解後に男性の自殺が労災認定されたことを受け、遺族の心情への配慮が必要と判断したとみられる。
遺族側の尾林芳匡弁護士(東京)は「遺族が10年以上にわたり、声を上げ続けたことが会社側の謝罪につながった。社会から過労死をなくす上でも、大きな意義がある」と話している。
日本郵便によると、遺族と面会して謝罪したのは本社人事部の部長ら幹部3人で、謝罪内容は「遺族との間で開示しないこととしている」として明かさなかった。同社は西日本新聞の取材に「今後、このようなことが起こらないよう風通しのよい職場づくりに努める」とコメントした。
郵便配達員だった男性は、さいたま新都心局(さいたま市)で06年から勤務し、約2年後にうつ病と診断された。病気休暇と復職を3回繰り返し、10年12月、勤務時間中に局舎の4階から飛び降りて亡くなった。
遺族側は、男性が年賀はがきの販売で年間7千~8千枚のノルマを課されて自腹で購入せざるをえなくなり、ミスをすると大勢の局員の前に立たされて報告を求められる職場環境がストレスになったと主張した。
遺族は15年、さいたま労働基準監督署に労災申請したが退けられ、労働局に審査を請求。同局の労災保険審査官は20年3月、厳しい販売ノルマなどがうつ病の発症や自殺につながったと認定し、労基署の判断を覆した。
日本郵便は労災認定後も、民事訴訟で遺憾の意を示すなどして和解したことを理由に謝罪を拒否した。だがこの問題は20年11月の参院総務委員会でも取り上げられ、衣川和秀社長は「遺族の意向を踏まえ、真摯(しんし)に対応するよう担当部署に指示したい」と答弁し、方針を転換した。
「お父さんは悪くない」子に伝えたかった…過労自殺した郵便局員、願い続けた妻の10年
4/4(月) 西日本
昨年6月16日、過労自殺した男性が眠る埼玉県内の墓地を、日本郵便の幹部3人が訪れた。郵便局員だった男性の妻(54)は、幹部が墓の前で手を合わせる様子をじっと見つめた。そして自宅で謝罪を受けると、心の中で夫に語り掛けた。「やっと会社が謝ってくれたよ。家族のために頑張って働いてくれてありがとう」
夫は2006年の異動後、「いつも緊張して心が休まらない」と漏らすようになった。自宅には自腹で購入した年賀はがきが山積みになり、帰宅すると玄関にしゃがみ込むこともあった。毎年、異動希望を出したが、聞き入れてもらえなかった。
「職場で何があったのか明らかにして、会社に謝ってもらいたい」。夫が亡くなってから、そう考えてきた。当時小学生だった3人の子どもたちに「お父さんは何も悪くなかったんだよ」と、伝えたいとの思いからだった。
だが労働問題に関する知識も手掛かりもなかった。同じく夫を亡くした「過労死を考える家族の会」の女性に「もう無理だと思っています」と、泣きながら相談したことも。郵政グループの従業員らでつくる労働組合などを訪ね歩き、受任してくれる弁護士が見つかるまで約2年かかった。
会社に損害賠償を求めた民事訴訟や労災申請では、会社側が「厳しいノルマはなかった」などと主張する中、協力してくれる同僚が現れるようになった。夫が上司から叱責(しっせき)されていたことや、多くの局員が年賀はがきの販売目標をこなせず自腹で購入し、金券ショップに持ち込むケースがあることを証言してくれた。
19年には大阪府の郵便局でも、上司からたびたび叱責されていた配達員が局内で自ら命を絶ったことが明らかになった。居ても立ってもいられず、労働組合などが行ったデモ行進に参加。日本郵便近畿支社の前でマイクを握り、「社員を大切にする会社に変わってください」と訴えた。
今年の3月27日、初めて3人の子どもを連れて夫が亡くなった現場を訪れ、花を手向けた。その後、さいたま市内で開かれた集会で約60人の支援者に感謝を伝えた。年賀はがきの販売ノルマは18年に廃止された。この10年余り、看護師として働き、子育てをしながら会社の責任を追及してきた活動に区切りを付けた。
「多くの人が悲しみや怒りを分かち合ってくれたからこそ続けられた。今後は、同じように苦しむ人たちの助けになりたい」
郵便局員自殺は労災 「困難なノルマ」 埼玉労働局認定
毎日新聞 2020/4/2
さいたま新都心郵便局(さいたま市中央区)の男性職員(当時51歳)が抑うつ状態になり2010年に自殺したのは、年賀はがきを数千枚売る達成困難なノルマを課されたことなどが原因だったとして、埼玉労働局は3月31日付で労災を認定した。遺族らが1日に記者会見して明らかにした。
代理人の青龍美和子弁護士によると、男性は1982年から郵便局に勤務し、06年に異動した同局で配達や年賀状の営業を担当。08年に抑うつ状態と診断された後、病気休暇と復職を繰り返し、10年12月、業務時間中に同局4階から飛び降りて死亡した。
労働局は、男性には年賀はがき7000~8000枚の販売目標があったとして「達成困難なノルマが課されていた」と指摘した。年末の繁忙期には時間外労働が月平均45時間以上になり「業務による強い心理的負荷があった」と認定し、うつ病発症を業務上の理由と認めなかった、さいたま労働基準監督署の決定(17年10月)を取り消した。