中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

産業医の責務と役割について(第4編) 

2022年04月26日 | 情報

産業医の話題になると、どうしても確認したいことがあります。

1.前提
・従業員50人以上の事業場(註;企業ではありません)では、産業医の選任義務があります。
・従業員50人未満の事業場(註;企業ではありません)では、産業医の要件を備えた医師等に
労働者の健康管理を行わせることが努力義務となっています。(安衛法第13条の2)

(補足)基発第566号 平成8年9月13日
2 産業医の選任義務のない事業場の労働者の健康管理等(第13条の2関係)
(1)本条は、すべての事業場において労働者の健康の確保が図られるためには、産業医の選任義務のない事業場においても
産業保健サービスが提供される必要があることから、事業者は、これらの事業場については、当該事業場の状況に応じ、
必要な場合に、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他労働省令で定める者に、
労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるよう努めなければならないものとしたものであること。

2.対策
・多くの従業員50人未満の事業場・企業では、産業医を選任する資金力がありません。

・しかし、50人未満の事業場の場合は努力義務ですから、安衛則第14条に規定されたすべての職務を依頼する必要はないはずです。
従って、必要とする職務、例えば、健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
(安衛則第14条の7)のみにすることもできますし、ストレスチェックの実施結果の精査と、
要面接者との面接・指導(小職の過去のブログを参照)というように限定することも可能ですので、
安価で効果の最大化を目指すこともできるはずです。

・また、保健師を採用する方策もあります。産業医報酬に比べ安価にすみますし、優秀な保健師は、産業医より簡単に見つかります。
結果として保健師がいるか、いないとでは大きな違いがあります。
なお、「保健師助産師看護師法」では、保健師は「保健指導に従事することを業とする者」とされています。

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80078000&dataType=0&pageNo=1

参考までに、昨日の当ブログで、

常時使用する労働者50人以上の事業場では、ストレスチェック結果を集団分析し,
その結果を活用した事業場の割合が 75.4%に上ったということを紹介しました。
即ち、ストレスチェック結果の集団分析は、組織のメンタルヘルス対策上、重要なステップであると。

しかし、50人未満の企業(事業場)においては、経営層は集団分析をするまでもなく、組織の問題点を
把握しているはずですし、把握していなければならないと、小職はたびたび強調してきました。
ですから、50人未満の企業(事業場)においては、ストレスチェックの集団分析より、
産業医、保健師の契約を重要視してほしいのです。
同程度の費用が必要ですが、同じく努力義務である「ストレスチェック」と産業医の委嘱とを比べてください。
というか、比べるまでもなく、産業医の委嘱のほうが、はるかに費用対効果の面では優れていると考えています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする