中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

メンタルヘルス対策の難しさ(2)

2018年03月20日 | 情報

さて、企業には国で云えば法令に相当する「就業規則」が規定されています。
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、法令で定められている事項について就業規則を作成しなければなりません
(労基法89条)。
企業内で惹起するする事案については、この就業規則によって対処しますし、
どのように規定されているのかで、対応が異なってきます。
因みに、小職が把握している限りでは、企業が規定している就業規則は、まさに「百社百様」です。
実に興味深い条文も散見されます。当該企業の成り立ち、歴史、文化がにじみ出ています。

さて、就業規則については、厚労省のHPにひな型がありますので、
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/model/dl/model.pdf#search=
%27%E4%BC%91%E8%81%B7%E8%A6%8F%E7%A8%8B%E4%BE%8B%27

多くの企業は、このひな形を参考にしながら、自社の就業規則を規定する傾向にあります。
企業の人事労務をサポートする社会保険労務士も、実は、厚労省のHPにひな型を参考にしています。
しかし、メンタルヘルス対策については、そのひな型が提示されていないのです。
ですから、ここで色々な問題が出てくることになります。

さらに、メンタルヘルス対策では、休職規程が重要な役割を担っているのですが、
上述した厚労省のHPには、「休職規程」のひな型が紹介されているものの、
これには法令の裏付けがなく、個々の企業が任意で規定しているのです。
分かりやすく解説すると、労働基準法には「休職規程」を規定しなさいという条文がないのです。
ですから、企業の担当者は詳細な解説がありませんので、その結果色々な問題が出てくることになります。
即ち、実態にそぐわない、法令との齟齬がある、病状の改善を邪魔する等々、意図しない状況を惹起させてしまうのです。
そうなると、予期しないトラブルに巻き込まれますし、
争いに発展して、想定外の出費も覚悟しなければならなくなります。

メンタルヘルス対策に関係する就業規則を規定する場合、
企業の担当者は、玉石混交の参考文献を参照しながら、悪戦苦闘しなければなりません。
頼りにする顧問弁護士や社会保険労務士も、参考文献も少ないし、
見つけた情報も信用できるかどうかも分かりませんから、多くを語ろうとしません。
それに多くは、知識や経験もありませんから、危機に役立つ専門家であるのかどうかもはなはだ心細いのです。

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