当ブログでは、「第二の電通事件」というタイトルで掲載しましたが、
ようやく、マスコミも過去に「全く同じと言ってよいほどの」同様な事件があったことに気が付いたようです。
たぶん第1報を報じた記者の皆さんは、電通事件をご存じではなかったのでしょうね。なにしろ25年前の事件ですから。
読売新聞の社説から転用します。
「電通では1991年にも、入社2年目の男性社員が過労自殺している。
両親が起こした損害賠償請求訴訟で、最高裁が「会社は社員の心身の健康に対する注意義務を負う」との初判断を示し、
各企業の対策強化の転機となった。」
社員「過労自殺2度目なので…」 電通の労務管理焦点に
2016年10月15日 朝日
日本を代表する広告会社の電通に対し、東京労働局が抜き打ち調査に踏み切った。
女性新入社員の過労自殺をきっかけに、違法な長時間労働が常態化していた疑いが表面化し、
刑事事件に発展する可能性が出てきた。今回の調査には、長時間労働の是正に取り組む安倍政権の姿勢も垣間見える。
「自分も当然のように深夜残業をしている。過労自殺は2度目なので、労基署が入ることは意外とは思わない」。
電通の中堅社員は14日、こう漏らした。
別の30代の社員も「ここ3カ月は残業が月100時間を超える。何とかしてほしいと思っていた。
労基署が入って会社が変わってくれるならいい」と話す。
電通の労働時間の管理はどうなっているのか。
広報部は、社員が始業・終業の時刻を申告し、上司が承認して管理していると説明する。
労働基準法は、1日8時間、週40時間が労働時間の上限と定める。
ただ、労使で結んだ協定を労働基準監督署に届ければ、上限を超えてもいい。
電通が届けている時間外労働は原則として月50時間。この範囲で残業させるように管理職に指導しているという。
しかし、自殺した高橋まつりさんの時間外労働は月100時間を超えていた。
労基署に届け出ている時間を大きく上回る。
入退館記録などをもとにした遺族側の代理人弁護士による集計では130時間に達したこともあった。
広告業界をとりまく環境変化が働き過ぎを助長しているとの見方もある。
スマートフォンの普及、オンライン動画やソーシャルメディア(SNS)の利用者の増加につれてネット広告が急増。
電通の調べでは、国内の2015年のネット広告費は1兆1594億円で、5年前より49・6%伸びた。
電通の売上高に占めるネット・モバイル広告関連の割合も増加傾向にある。
ただ、条件が事前に決まる新聞やテレビなどの広告と違い、ネット広告は表示や閲覧回数などを踏まえて代金が決まる。
社員の多くは「ネット広告への理解度が薄い」(業界関係者)との見方もある。
9月にはネット広告を扱う部署で、一部の広告を契約通り掲載しないといった取引が判明。
山本敏博常務執行役員は記者会見で「仕事量に対して力量と時間が足りていなかった」と、管理体制の不備を認めた。
電通の社内では、経営環境の変化のスピードに対応しきれず、長時間労働が常態化していた可能性がある。
今後の労働局の調査では、電通が労働時間の実態を正しく把握して労務管理をしていたかが焦点になるとみられる。
■特別チーム「かとく」が抜き打ち調査
本社への抜き打ち調査には、東京労働局の「過重労働撲滅特別対策班」が加わっていた。
通称「かとく」と呼ばれる特別チームだ。所属メンバーは労基署が行う日常的な業務はせず、
過重労働が疑われる企業を集中的に調査している。ターゲットの企業を徹底して調べるのが特徴で、
東京・大阪の両労働局だけにあるチームだ。
ログイン前の続き発足したのは昨年4月。働き手を酷使する「ブラック企業」の問題の深刻化を受けて、
悪質なケースの取り締まりを強化するのが狙いだ。
主なターゲットは全国規模で事業展開する大企業。事業所ごとの案件を調べるのではなく、
会社全体の労務管理の実態を解明し、過重労働を防ぐことをめざしている。
行政指導にとどまらず、企業や経営陣の刑事責任を追及するケースが目立つ。
最初に手がけた案件は靴チェーン店「ABCマート」の違法残業。
都内2店舗で横行していた月100時間前後の違法残業について、東京の「かとく」が昨年7月、
店の責任者やチェーンを運営する会社の役員を労基法違反の疑いで東京地検に書類送検した。
東京の「かとく」は今年1月、ディスカウント店を展開する「ドン・キホーテ」の違法残業も立件。
大阪の「かとく」も全国チェーンの飲食店の運営会社2社を立件した実績がある。
電通への調査では、関西支社(大阪市)に大阪の「かとく」のメンバーも加わった。
厚生労働省の担当者は「省としてしっかり取り組む案件だという認識の表れ」と解説する。
■政府の「働き方改革」、議論始まったばかり
「電通の社員の方が過労死、いわば働き過ぎによって尊い命を絶たれた。二度と起こしてはならない。
働く人の立場に立った『働き方改革』をしっかりと進めていきたい」
立ち入り調査前日の13日夜。安倍晋三首相は、自ら議長を務める「働き方改革実現会議」に関連して開かれた
多様な働き手との意見交換会で、社名を挙げて過労自殺の防止に言及した。
首相は働き方改革を政権の「最大のチャレンジ」と位置づけ、改革に向けた議論を9月末に本格化させたばかり。
主要テーマの一つとして、長時間労働の是正を挙げている。
過労自殺した電通の新入社員が労災認定されたのは、その矢先の出来事だった。
それからわずか2週間後に行われた抜き打ち調査。厚労省幹部は「働き方改革で長時間労働を是正しようという流れがあり、
首相も『働く人の立場に立った改革』と言っている。
塩崎恭久厚労相にも(電通に)厳しい対応をしなければいけないという思いがあったと思う」と解説する。
政府は長時間労働を是正するため、残業時間の上限を厳しくする新たな規制の導入を検討している。
実現会議が年度末にまとめる実行計画に具体策を盛り込む予定だ。菅義偉官房長官も14日夕の記者会見で、
「働き過ぎによって尊い命を落とすことは決してないように、長時間労働の是正を行いたい」と話した。