中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

中小企業は2割どまり(続々編)

2016年10月03日 | 情報

「中小企業は2割どまり」との報道を受けて、それではなぜ期限までに2か月と迫ってきたのに、
ストレスチェックを実施できないのか、実施しないのかを考えます。

その前に、従業員50人以上の企業(あえて、事業場ではない)においては、
概ねストレスチェックを実施しなければならない、という認識はお持ちのようです。
法令順守の意識が高いことはおおいに評価されるべきでしょう。
それなのに何故実施できないのか。実施しないのではなく、実施できないのかです。

第一の理由は、実施体制にあるようです。即ち、実施者がいない、面接指導する医師がいないのです。
ということは、ストレスチェックの前に、当該企業における安全衛生体制ができていないということでしょう。
産業医を委嘱していない、いわゆる「名ばかり産業医」である、安全衛生委員会がそもそも設置されていない、
設置されていても有名無実の状態である、等々でしょうか。

考えられる対策は、いくつかあります。
第一は、EAP等の専門機関に、全てを委託することです。費用はそれなりにかかりますが、
個人情報が漏えいする可能性は低いでしょうし、人事労務部門のアウトソーシングのきっかけにもできますので、
検討の価値はあるでしょう。

二番目は、当ブログで何回も言及してきたことですが、ストレスチェックの実施を先送りして、
社内の安全衛生体制を構築することから、始めることにします。
それには、まず、経営者自ら安全衛生に関する社長方針を策定し、発表することです。
そして、安全衛生委員会を立ち上げます。
衛生管理者の資格も早急に取得してください。
難関ですが、産業医を選任し、業務を委嘱しましょう。
経営者自身が先頭に立って、安全衛生委員会を軌道に乗せます。
ここまでできれば、ストレスチェックを法令通り実施できる体制が整うわけです。
次に、労基署に対し、今年はストレスチェックを実施できませんでしたと、正直に報告します。
実施の有無にかかわらず、労基署への報告は義務であり、報告しない場合は罰則を適用されることを覚悟しなければなりません。
正直に報告すれば、労基署からも何らかのアドバイスや激励を得ることができるでしょう。
念のために、労基署の「署」は、警察署と同じですが、決して怖い役所ではありません。
むしろ企業の労働安全衛生に資する助言を、たくさんもらえる機関です。おおいに活用することが大切です。

三番目は、ストレスチェックの実施者は、医師だけではありません。
保健師、看護師、精神保健福祉士でよいわけですから、ネット検索すれば、特に精神保健福祉士ならば、
すぐ見つけることができます。
問題は、面談する医師ですが、これは問題を過大評価していることから起きることなのです。
現実として、産業医は、殆どが精神科専門医ではありません。産業医が意識過剰に陥っている場合があるのです。
ストレスチェックの目的は一次予防ですから、面談対象者全員が精神疾患をり患しているわけではありません。
むしろ人事労務管理上の問題、すなわち社内の人間関係や、過重労働の問題、業務と能力とのミスマッチ等の問題ですから、
むしろ産業医より、産業カウンセラーのような専門家のほうが、対処しやすいのです。
法令で定められている医師との面談と並行して、心理カウンセラーによる面談等を実施することによる、
医師の心理的な負担を軽くするような方法も検討してください。

最後に、「拙速」だけは、禁止です。

コメント
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