熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

オランダ病と為替高に苦しむ資源大国

2011年09月09日 | 政治・経済・社会
   日経ビジネス最新号に、FT記事『「中国依存症」豪経済の死角』が載っていて、オーストラリアは、中国の資源需要を追い風に、鉄鉱石や石炭などの天然資源の輸出が好調で、それが、豪ドルの高騰を招き、製造業や観光業などの空洞化を招いていると言う。
   先進国経済のオーストラリアとしては、「脱資源」経済を目指して、競争力のある高付加価値の工業やサービス産業へ移行すべく構造転換を図るべきだが、むしろ、逆に、オランダ病が心配されている。
   深刻な政府債務と高い失業率に苦しんでいる他の先進国と比べると、オーストラリアは、30年連続のプラス成長で、失業率も5%前後で、それに、政府予算は2年以内に黒字転換し、政府債務はGDPの6%に過ぎない。

   ところで、表題の「中国依存症」だが、今や、中国は、総輸出の26%を占める最大の貿易相手国になってしまっているから、中国経済が減速すれば、もろに大打撃を受けることは必定で、それに、中国共産党政権がもっと安価な天然資源の供給源を確保すれば、あっさりとオーストラリアを切り捨てかねない危うさを孕んでいる。
   自国の天然資源は無限に存在すると言う発想に胡坐をかいている時ではなく、早晩枯渇するのであって、この好況をもっと上手に管理して、オーストラリア経済を高度化しなければならないと言う。

   資源関連産業は豪経済の10%にしか過ぎないのだが、設備投資は、70%を占めていて、その大半は、資源開発関連であって、濡れ手に泡の利益を地域社会に還元しないことに避難を受けていると言う。
   資源相場の好況のもたらした「まぐれ」の成功が、豪経済の健全化に回さていないので、オーストラリアは、国際競争力や生産性、イノベーションの国際ランキングは、大抵、下位に位置している。

   問題は、この中国特需に沸く好況が、インフレを促進し、豪ドルの為替相場をどんどん押し上げて、工業や観光業など他産業に大きなダメッジを与えていることである。
   それに、準備銀行が、2年間に7回も利上げを行い、オーストラリアの政策金利は、現在、先進国で最高の4.75%である。
   
   私は、この記事を読んでいて、このケースは、殆どぴったりとブラジルの現状に当て嵌まると、その符合に驚いている。
   ブラジルも、中国が第一の貿易相手国に躍り出て、鉄鉱石や小麦など天然資源や食料を買い漁っていて、その中国特需に恵まれて、欧米日の金融緩和の緩和もあるが、通貨レアルが異常高になって、インフレが進行して、政策金利の高騰(12%)を招いていて、他産業に大きな打撃を与えている。

   1960年代に、北海で天然ガスが発見されて以降、オランダは、エネルギー価格高騰の余波を受けて天然ガスを大量に輸出した結果、自国通貨ギルダーの高騰で、他産業の国際競争力を削いで衰退を招いたと言うのが、「オランダ病」だが、それ以降、絶えず、資源大国では、このDutch Diseaseが問題となっている。
   ブラジルの場合には、外資企業主導とは言え、そして、先端技術では後れを取っているとは言っても、まだ、工業力があるので、今のところ、オランダ病の兆候はないと言われている。
   しかし、オーストラリアの場合には、今回の場合にも、鉄鉱石や石炭など天然資源の高騰とその輸出依存状態が突出している。

   ブラジルは、深刻な所得格差や貧困問題の解消など新興国としての経済社会の歪を治しながら、マクロ経済の舵取りを上手く図りながら潜在的経済力を引き上げなければならないと言う大命題を抱えているのだが、そのためにも、濡れ手に泡に近い資源価格の高騰と中国特需による収益を、如何にして、国家の将来の経済社会の発展に活用するかと言う難問題をクリアしなければならない。
   これは、正に、オーストラリアの直面している問題と同じで、この資源ブームを利用して、R&D、高度教育に資金を投入して、イノベイティブで創造的な高付加価値を生み出す高度な産業構造に転換すべく、将来を見越した国家戦略の構築が急務であると言うことであろう。

   しかし、同じ異常な為替高に悩んでいる日本の現状から見れば、あまりにも羨ましい限りである。
   
コメント
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