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ぽかぽか春庭「やっちゃんと上野散歩」

2024-06-29 00:00:01 | エッセイ、コラム
20240629
ぽかぽか春庭日常茶飯事典歩>2024二十四節季日記6月(8)やっちゃんと上野
散歩」

 4月にやっちゃんと科博にいったとき、6月末からやっちゃんの古い友人の絵が展示される公募展が始まるので、入選した絵を見に行こうと招待券をもらいました。6月23日から開催のされていた日本水彩展に26日出かけました。東京都美術館。

 日本水彩展は、1913(大正2)年に石井柏亭、南薫造らによって創設され、水彩専門の画家の公募展です。創立111年目という今年は、700名前後の入選者の作品が、第1室から27室まで上下二段に100cm 以上150cm以内という大きさの規定があるキャンバスがずらり。

 水彩画の団体だということでしたが、油彩っぽい絵もあるので、尋ねたところ、水彩と言っても最近はほとんどアクリル絵の具で描くので、水で溶けば水彩っぽく、塗り重ねれば油絵っぽくなるのだそう。
 油絵っぽいのは、「不透明なガッシュ風」だそう。ガッシュというのがなんだか知らんが。と思うとすぐ調べる。ガッシュとは私が知っていることばグヮシュ(グアッシュ)と同じでした。英語発音と仏語発音の違い。透明水彩絵具は糊成分が多いために絵具の透過性が高まり、顔料が多く糊成分が少ない不透明水彩絵具がガッシュ。なるほど。絵のことなんも知らんと見ている私も、ひとつおりこうになりました。

 やっちゃんは、リアル写実の絵がお気に入りで「写真みたいだ」と見入っています。鮮やかな緑陰も棚田も、藁屋根が崩れかかっている古い農家も、それぞれに描いた人の心をとらえ、みないっしょうけんめい描き、年に一度の公募展に応募する。入選を生きがいにしている人たちが、こんなにたくさんいるんだなあと、絵心のない私は、絵が描ける人がうらやましい。

 111年の伝統がある水彩画団体。700ものキャンバスは具象が9割。抽象やモチーフを構成した絵が1割。人物画も、バレリーナを描いても外国の女性を描いても美しい。しかし、700の絵の中に、心をわしづかみされるほどの衝撃はありません。どれも清く正しく美しい。

 やっちゃんの絵を見ての感想でいちばんおもしろかったこと。滝の絵の前で。
「カナダのなんたってけ、滝を見にいったことあるんだ」
「ナイアガラだね」
「うん、滝のうんと近くまでボートで近づけるツアーがあったんで、友達といっしょに滝つぼまで行って、ざあざあしぶきを浴びた」
「びしょ濡れになるのがウリだからね」
「旅行のときはいつも老人用の紙パンツをはいて、お下の失敗に用心していたけど、このときしぶきでパンツが水たっぷり吸っちゃって、ぶよんぶよんパンパンにふくらんだ」
「高吸水性ポリマー ってやつだね」
「ボート下りてトイレに駆け込んで履き替えたけれど、あんなに膨らむとは思わなかった」
 しーんとした水彩画展示の室内ですから、大声で笑うのは遠慮しましたけれど、美しい滝の絵を見て思い出すのが、パンパンにふくらんだ高吸水ポリマーパンツの思い出とは、いつも愉快なやっちゃんです。 

 東京都美術館のレストランは、満席。しばらく待っていましたが、やっちゃんに「少し歩くけれど、芸大の食堂に行ってみよう」と提案。芸大の学生はみな金持ちだから、値段の安い楽食部は、12時でもすいています。たぶん、オークラ運営のお高いレストランのほうが混んでいる。やっちゃんはカルボナーラう、私はひよこ豆カレー。ふたりで1250円。

 ランチ後、芸大美術館は休館中でしたが、陳列館で日本画第二研究室の毎年の展示という「素描展」を観覧。普段の授業で課題として描いた素描、研究室旅行でのスケッチなどが出展されていました。

 こちらも、上手ではあるけれど、さらっと通り過ぎていくきれいな絵。私は革命革新好みのレボリューション婆ですから、公募展700の力作水彩画にも、新進気鋭で学んでいるであろう日本画の学生たちの絵にも、さっぱり心うごきませんでした。

 私が好きな会田誠も山口晃も、芸大在学中は油絵でした。日本画の学生、奮起せよ。レボリューション婆の度肝を抜いてほしい。

 芸大から西洋美術館へ。65歳以上は無料で観覧できる常設展。やっちゃんはたくさん絵を見てお疲れ気味でしたが、いざ入館すると、やけに熱心に見て回っていました。さっさと歩いて、いすがあると座ってぼうっとしている私と大違い。

<つづく>
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