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ぽかぽか春庭「文語文「南蛮鴃舌(なんばんげきぜつ)」

2024-05-18 00:00:01 | エッセイ、コラム

20240418

ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>明治の日本語(4)文語文「南蛮鴃舌(なんばんげきぜつ)」 

 2012年の春庭日本語コラムを再録しています。

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2012/07/10
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>明治の語彙(4)文語文「南蛮鴃舌(なんばんげきぜつ)」

 次に、『完本文語文』の中に出てくる、「意味はわかるけれど、自分では使ったことがない語」すなわち、理解語彙であるが、使用語彙ではない語のリストアップです。

p35「威権堂々」 威風堂々なら使用言語です。行進曲で覚えたので。しかし、「威権堂々」は、意味はわかるが、使ったことはない。

p66「高風を欣慕する文語文の香り高き高風を欣慕するにやぶさかではないが、今後、日本語の書き言葉として文語文が学校教育で復活することはないでしょう。
 谷崎潤一郎が小学生のとき書いて「優秀」と誉められた作文を読んだことがありますが、完全な文語文でした。

p146「見ずてん芸者などが金次第でどんな相手とも肉体関係を結ぶこと。また、そういう芸者。意味は知っていたけれど、使ったことはない。

p93「寸心言いつくさず

唐代の詩人、銭起(せんき710年?‐780年?)の五言絶句『逢侠者(侠者に逢う)』からの故事成語。ああ、やはり漢文漢詩に弱い
<逢侠者>
燕趙哀歌士  燕趙(えんちょう) 悲歌(ひか)の士
相逢劇孟家  相逢う 劇孟(げきもう)の家
寸心言不尽  寸心(すんしん) 言い尽くさざるに
前路日将斜  前路 日 将(まさ)に斜めならんとす

 
p140「言語は南蛮鴃舌(げきぜつ)である
 「鴃舌」はもずの鳴く声。また、もずが鳴き合うように騒ぎ合って、意味が分からないことのたとえ。南蛮鴃舌は、南方地方の人の話言葉は、モズの鳴き声のようで、意味がわからない、という北方の人が南方人を馬鹿にした表現。

p257「今は只、廃檐朽桷塊然(はいぜんきゅうかくかいぜん)と堆を成して~二葉亭四迷が訳した、ゴーゴリ『むかしの人』の一節。岩波の二葉亭四迷全集第一巻「翻訳」に所収。山本翁は、父の遺品たる『二葉亭四迷全集』によって、漢語を覚えていったと書いています。以下は、二葉亭の「むかしの人」で、山本夏彦が覚えたという漢語の数々。

p258「村荘の露台に座して、園に対し、膏雨(こうう)盛んに樹木を打って、雨水の滴り落つること觱沸(ひつぶつ)として泉の湧くが如く、四肢倦怠(だる)く、睡思を催す折りしもあれ、林間に長虹微(ほの)見えてぼかした様な七彩の穹窿(きうりう)半ば崩れて天の一方を彩るとき(以下略)」
 山本翁は、この二葉亭の「むかしの人」によって、「觱沸(ひつぶつ)」という語を覚えた、と書いているが、私なぞ、、「觱沸(ひつぶつ)」はもちろんのこと、膏雨(こうう)も穹窿(きゅうりゅう)も、漢字を見て、かろうじて意味は推測できるものの、この語を覚えた、ということはできない。明日は、觱沸をみて、さて、なんて読むんだっけと首を傾ける。

p268「刺を通ずる」
 刺とは、名刺のこと。名刺を差し出して、相手と通じあうことを「刺を通ずる」というのですが、だいたい、私なぞ、「刺」だけで「名刺」の意味であることを、つい最近まで知らなかった。ちなみに、「刺を還す」とは、面会者が差し出した名刺を受け取らず、面会を拒絶することを言います。

p68「社稷を憂える しゃしょくをうれえる」
 広辞苑>「.〔礼記(祭儀〕昔の中国で、建国のとき、天子・諸侯が壇を設けて祭った土地の神(社)と五穀の神(稷)。.〔論語(先臣)〕国家。朝廷。

 イマドキ「社稷を憂える」と聞くと、言っている人はウヨかエセ政治家か、と感じてしまいます。ウヨさんたち、ラウドスピーカーで「元慰安婦のおばあさんたちを撮影した写真展が新宿コニカサロンで開かれることは、国辱であ~る!」なんて言って、「シャショクをうれえる」ことやってないで、日本語そのものが滅びるかもしれないことを憂えなさいって。

p30「その妙、世界に冠絶す」
  日本語(近代口語)そのものが冠絶してしまうのも、時間の問題となってきました。

以上のように、『完本文語文』の中にある、春庭が「まったく意味も読み方もしらなかった語」「意味はわかるが使ったことがない語」のリストアップでした。
 『完本文語文』は、文語文の「格調高く美しき日本語」を褒め称えるための文章ですから、漢詩文の中にでてくるような漢語が多くて、春庭にはさっぱりわからない語句が多かったのは当然と言えましょう。

<つづく>

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