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ぽかぽか春庭「小満」

2024-05-23 00:00:01 | エッセイ、コラム
20240523
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>2024二十四節季のことば(1)小満

 今年の日記タイトルは二十四節季日記ですが、これまであまり二十四節季を紹介していません。紹介するのは、ほかにネタがないとき。で、5月ほとんどお出かけができず、家にこもっていたので、二十四節季から小満を紹介します。二十四節季の小満は立夏から半月後。 

 「小満」は立夏から数えて15日目頃。2024年は、5月20日から芒種までの期間に当たります。太陽黄径60度。陽気がよく、万物が成長し天地に上昇の気が満ちます。暑さも加わり、各地の田植えの時期でもあります。ベニバナが咲き、麦の穂が実り梅の実がなり、草木が茂って天地に満ち始める、という時期です。梅雨入り前の一年で一番よい季節という地方も多いことでしょう。

 立夏とか夏至という二十四節季に比べて、小満という語で季節の感覚を味わえる人は、現在では少ないのではないかと思います。なにせ、私の角川『合本俳句歳時記』には小満は季語扱いされていません。かわいそう。
 この時期を季語で表すなら、「麦秋」「麦の秋」が主流で、あって、小満は角川歳時記になし。(古い版だからかも)。もの知らずの春庭も、小満ときいて、即座に今頃の季節を思い浮かべられませんでした。

 ネット検索しても、私が知っているような有名俳人の小満の句というのはあまり見当たらず、日本文学で小満を文章に入れたのもごくわずか。林芙美子が『風琴と魚の町(1931)』に
「小満(セウマン)の季節らしく、三味線の音のやうなものが遠くから聞えて来る」
と書いたのが引っ掛かったくらいで、小満、文学世界では気の毒な立場。麦秋は山のように出てくる。小津安二郎の映画タイトルにもなっているし。いまどき、麦が黄金色に実った風景を見届けられる人は少ないのに、麦秋は季語としてはいい扱いを受けています。恵まれない季節のことば、小満を俳句にした俳人、えらい。

小満や箭竹篠竹生えしめて  星野麥丘人
小満やみどりさしたる寺の屋根 森澄雄

小満さんは、きっと不満さんになっていることでしょう。

小満や愚痴とぼやきで生きていく 春庭

<つづく>
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