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ぽかぽか春庭「BOROアミューズミュージアム」

2013-05-22 00:00:01 | エッセイ、コラム
ボロ布をつぎはぎした夜着

2013/05/22
ぽかぽか春庭@アート散歩>ボロの美と贅沢貧乏(2)BOROアミューズミュージアム

 正月三日に、浅草へ出かけたことを書きました。ぐるっとパスで「アミューズミュージアム」を観覧するため浅草へ行って、ついでに浅草寺で初詣というコラムです。

 浅草寺の二天門脇にできたアミューズミュージアムについて、「なんだか観光地の秘宝館のようなあやしげなミュージアム」と感じたと書きました。経営母体が芸能プロダクションのアミューズだということも、私の偏見を助長しました。「浮世絵と布文化」という展示内容について、浮世絵は観光客相手のものと思うけれど、布文化というのが、「タレントの着た衣裳」とかの展示なのかなあと。

 芸能プロダクションアミューズの社長は、芸能界の大物。大里洋吉は、渡辺プロダクションから独立し、大手プロダクションにしたてたやり手です。今や、サザン桑田佳祐と福山雅治を売上げ2本柱とするほか、若手イケメンの春馬クンや佐藤健など多数のタレントを抱えています。そんな人が手がけた美術館って、どんなもんじゃろかいと思う。

 財界の成功者というのは、三井美術館も大倉集古館もニューオータニ美術館も、それなりに審美眼を育て、芸術家の大パトロンとして作品を集めてきた。でも、一代で成り上がったとはいえ、芸能プロの成金社長って、どんなもの集めたんだろ、なんて思ってしまい、ほんとにひどい偏見。世の中、何事も色眼鏡でものごとを見てはいけません。

 青森県出身のアミューズ創業者会長、大里洋吉は、同じ青森出身の民俗学者田中忠三郎をアミューズミュージアム名誉会長に据え、田中のコレクションを展示していました。
 田中忠三郎は、縄文遺跡発掘からアイヌ文化の民族調査、青森県の民俗民具の調査を行った民間の民俗学者です。学会などには所属せず、渋沢敬三傘下でこつこつと民具の収集を続けてきました。

 田中が青森県下で集めた布地、刺し子うち786点が国の重要有形民俗文化財指定を受け、アミューズミュージアムではそのうち「津軽・南部のさしこ着物」など約1500点を順次、公開展示しています。
 ミュージアムのコンセプトは、「アクティブシニアの知的好奇心を刺激するようなコンテンツ開発」だそうです。

 ミュージアムの受付嬢、係員の男性とも、とても愛想がよくて、他の美術館の係員とは雰囲気が異なっていたので、入館したときは「あれ?」と思いました。思うに、彼らはタレントの卵なんじゃないかと。タレント養成の一環として、卵さんたちの何名かは、受付や1階ショップの売り子をするのが養成コースのひとつに当てられているのではないかという気がしました。

 だとしたら、非常に美味いやり方。タレントの卵は自分を売り出すための方策として、プロダクションの意向にしたがって売り子もミュージアムの掃除もやる。有名になるための修行と思うから、とても愛想良く受け付けもこなし、閉館時間すぎても見続けようとした客(私ですが)にも、とても感じよく出て行くように仕向ける。こういう接客も万人に好感を持ってもらうための、タレント養成修行だと思えば、彼らの愛想良さも納得。プロダクション側は、人件費いらずでショップやミュージアムを運営できる。

 ミュージアムの宣伝は、草刈正雄が司会をしている『美の壺』(NHKBS)でも行われました。私はお茶碗を洗いながら見る番組として時々『美の壺』を見るのですが、アミューズミュージアムの展示品、BOROが紹介されたときは、番組に気づきませんでした。2010年に放映されたころ、博士論文を仕上げている最中で、番組を見ている余裕がなかった。

 さて、肝心の展示内容紹介です。
 日本各地に綿花が栽培されるようになって以後も、青森はその寒さゆえ綿花が育たない土地がらでした。それゆえ、青森の人々が木綿の着物を着られるようになったのは、大正以後のことだそうです。明治期までの青森の人々は、冬でも麻の着物を、当て継ぎをし、刺し子をしてつくろいを重ねて着ていました。布団も綿がないから、麻くずをつめたもの。

 田中が足で集めたボロ衣裳ボロ布団が、展示されていました。それらは、涙がでてくるほどのボロなのです。でも、そのボロが美しい。穴だらけ継ぎ当てだらけの布団や足袋が、人間存在の根源の光を放つような美しさを放っているといえるし、継ぎあてが美しく見えるように、女達が工夫をこらして繕ったその模様に味があり、ひと針ひと針の縫い目が美しい。

<つづく>
コメント (2)
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