医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

強迫性障害の栄養療法について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 

2018-08-24 14:16:55 | 健康・病気

うつ症状、双極性障害、統合失調症と並んで、強迫性障害はもっとも一般的な精神障害で、通常、10-24歳の間の青春期に発症し、15歳までに全症例の三分の一が発症し、喘息や糖尿病患者よりは、強迫性障害患者が多く、これだけ多いにかかわらず、治療を受けていない人が半数以上と、米国では報告されています。強迫性障害の複雑な病因は、遺伝因子、長期の持続的なストレス、劣悪な栄養状態、腸内環境の悪化によるセロトニン産生の低下、生体の炎症、それにセロトニン合成の障害などが複合的に関係して発症すると報告されています。

最近の研究では、強迫性障害では、栄養的因子の欠乏などが、セロトニン合成を低下させ、さらに長期のストレスなどがそれに追い打ちをかけ、高い再発率に繋がるのではないか、と言われています。また、多くの研究では、神経伝達に強く影響するセロトニンの欠乏が、強迫性障害の一因との研究が報告されています。そこで、セロトニン合成に重要な栄養素であるナイアシン(ビタミンB3)、ビタミンB6、葉酸、ビタミンC、Zn、Mg、イノシトール、5-HTP、それにタウリンなどの強迫性障害に対する効果が研究され、推奨されています。さらに、腸内を善玉菌優位の環境にし、腸内を健康にすることにより、セロトニン前駆体の産生が高まるという研究もありますので、プロバイオティクスやプレバイオティクスを十分摂取し、腸内環境を改善することも症状改善への一里塚と、考えられます。また、グルタミン酸の調整不全が強迫性障害の病因であり、N-アセチルシステインが過剰のグルタミン酸を減らし、グルタミン酸の神経毒性から脳を守るという研究も報告されています。

次に、James Greenblatt博士の報告によると、強迫性障害において、セロトニン産生による神経伝達の改善は、セロトニン値を高め、その症状に立ち向かうのに不可欠です。しかし、神経伝達物質の過剰な活性をコントロールすることは、考慮されるべきです。一連の論文では、強迫性障害、うつ症状、不安症状の治療におけるイノシトール(ビタミン様栄養素)の活用が研究され、強迫性障害に対し著しい効果が認められました。また、ある患者では、2g/日の摂取で症状が改善されました。そして、SSRI(抗精神病薬)に抵抗性を示す強迫性障害の患者では、イノシトールは特に有効であり、その投与量は18g/日でした。副作用は報告されず、症状の改善は、6週間で報告されました。また、イノシトールのみ単独摂取した時も有効で、強迫性障害に対する栄養補助療法として有望である可能性が報告されています。SSRI治療に抵抗性を示す強迫性障害患者でのイノシトールの効果は、神経伝達プロセスの機能によると考えられ、イノシトールが2次メッセンジャーとしての作用は、信号伝達を働かせるシナプス後神経に及ぼすセロトニン受容体の感度を強めることです。その受容体の結合についてセロトニンからのメッセージは、陽の気分、くつろぎ感、それに強迫観念の減少などの行動を通じて表わされる信号(シグナル)へ翻訳されます。セロトニンの信号化機能により、SSRI治療に抵抗性を示す強迫性障害患者は、セロトニン合成ではなく、むしろ受容体感受性の減少が認められると、考えられます。なお、SSRIなど薬物は強い副作用などのリスクがあり、そのため、栄養療法のみで治療する自然医が米国にはいます。なお、上記、栄養素療法は薬物療法に比べて安全なので、これら栄養素の適正量の併用摂取で、症状改善が認められる症例も報告されています。更なる研究が待たれます。

References

James Greenblatt. Integrative-therapies-for-obsessive-compulsive-disorder.Mental Health.July 10,2017

Shaheen E Lakhan, et al. Nutritional therapies for mental disorders. Nutrition Journal. 2008;7:2

Fux M. Inositol treatment of obsessive-compulsive disorder. A J Psychiatry. 1996Sep;153(9):1219-21