医科栄養学・栄養医学ブログ

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糖尿病性心筋症に対する天然型R-α-リポ酸と補酵素Q10の作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-08-08 09:57:15 | 健康・病気

糖尿病合併症では、心臓病を発症して、最終的に心不全状態になる人が多いと、報告されています。ある研究によると、左心室拡張期機能障害のある二型糖尿病患者74名に二重盲検試験を実施し、補酵素Q10(Q10)、200mg/日とfenofibrate(高脂血症薬)、160mg/日を単独、もしくは併用で6か月間摂取してもらったところ、左心室拡張機能に両方とも影響が認められなかったが、併用群で収縮期血圧の低下が見られ、単独摂取群では拡張期血圧の低下が認められました。

De Biasio MJ博士らの研究によると、補酵素Q10(ビタミン様栄養素)による酸化ストレスへの治療では、低下したPI3Kシグナルを有する糖尿病モデルマウスでは、重度の糖尿病性心筋症を改善したことから、補完的にQ10を摂取させると、糖尿病性心不全への補助的治療法になる可能性があると、報告されています。また、Paras K. Mishra博士らの研究によると、Q10は、マウスでの実験で拡張期機能不全、心筋細胞肥大、それに心筋線維症を減らすと、報告されています。

さらに、Li CJ博士らの研究によると、実験的糖尿病性心筋症において、心筋の線維症と心筋の機能不全は、天然型α-リポ酸(ビタミン様栄養素)の摂取により改善しました。これらの結果は、ヒトでの天然型α-リポ酸の摂取が、安全で、かつ耐えうるものであることと結びついています。そして、天然型α-リポ酸は、ミトコンドリア酸化ストレス、細胞外マトリックスのリモデリングとJunN-terminal kinase、p38マークの活性化などを低下さすことにより、糖尿病性心筋症への治療の可能性を示すことが、証明されました。

Anna Gvozdja Kova 博士らの研究によると、糖尿病性心筋症患者に、Q10、R-α-リポ酸(天然型)、それにα-トコフェノール(ビタミンE)併用摂取してもらい、副作用なしに、HbA1Cの改善、心エコーでの心筋機能の改善が認められたと、報告されています。なお、S-型のα-リポ酸(人工型)の過剰摂取に遺伝的に弱い体質の人は、糖尿病性ケトアシドーシスを少数の人において発症したという報告もありますので、天然型のR-型のαリポ酸に変更する必要があります。さらに、糖尿病薬や心臓病薬を医師により投与を受けている糖尿病患者は、それらとα-リポ酸とコエンザイムQ10の併用摂取は、禁忌です。また、α-リポ酸は、天然型のR-αリポ酸が安全なので、天然型に変更した方が賢明です。更なる研究を期待しています。

References

Sahar K.Hegazy, et al. Alpha-lipoic acid improves subclinical left ventricular dysfunction in asymptomatic patients with type 1 diabetes. Rev Diabet Stud.2013 Spring;10(1):59-67

De Biasio MJ. Therapeutic targeting of oxidative stress with coenzymeQ10 counteracts exaggerated diabetic cardiomyopathy in a mouse model of diabetes with diminished PI3K signaling. Free Radic Biol Med.2015 Oct;87:137-47

Paras K. Mishra, et al. Diabetic cardiomyopathy. Front.Endocrinol. 07 April:2017

 

Li cJ, et al. Cardiac fibrosis and dysfunction in experimental diabetic cardiomyopathy are ameliorated by α-lipoic acid. Cardiovasc Diabetol.2012 Jun 19;11: