医科栄養学・栄養医学ブログ

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血管性認知症、アルツハイマー型認知症に対するアセチルーL-カルニチンの作用について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-07-04 13:58:16 | 健康・病気

アセチル-L-カルニチン(調整性栄養因子)は、微小血管機能を改善したり、筋肉や心筋の機能を改善することにより、心臓機能や運動機能を改善することが報告されていますが、その微小血管機能改善作用により、初期の、血管性認知症やアルツハイマー型認知症を改善することが、報告されています。

"Zh Nevrol Psikhiatr Im S S Korsakova"誌に載ったGavrilova SI博士らの研究によると、アセチル-L-カルニチンが、2,250~3,000mg/日の投与量で摂取され、患者の状態は、MMSE、CGIなどの基準と神経心理学テストで評価されました。アセチル-L-カルニチンの治療効果は、プラセボに比べて2.8倍高く、CGI基準による臨床上の改善は、血管性認知症に比べて、アルツハイマー型認知症患者では著しく良く、ベースラインの認知機能の低下の重症度にはよりませんでした。

また、テキサス大学のJustin C .Shenk博士らの研究によると、博士らは、C14iodoantipyreneオートラジオグラフィーを用いて、年齢が釣り合った野生タイプマウスとApoE4遺伝子導入マウスを用いて、脳の血流に及ぼす、ヒトApoE4の年齢依存性作用を検討しました。ApoE4と結び付いた因子は、野生タイプマウスと比較した時、脳の低還流を脳血流が徐々にもたらすのを減らします。脳の血流の違いは、生後6週間から12カ月の動物としては、もっとも大きいものでした。

トランスミッション電子顕微鏡では、血管周辺細胞、血管周辺神経末端、海馬の神経単位、そしてグリア細胞の細胞質にまで広がった、若いのと老いたApoE4導入動物の微小血管内皮の構造的ダメージが認められました。これらの異常は、ミトコンドリアの構造的変化とミトコンドリアのDNAの過剰増加、そして、全脳の細胞の小室での欠失(deletion)と共存しています。

空間記憶と一時記憶テストでは、選択的ミトコンドリアの抗酸化物質であるアセチル-L-カルニチンとα-リポ酸(チオクト酸、ビタミン様栄養素)を投与したApoE4導入マウスは、認知機能の改善が認められました。博士らの発見は、ApoE4遺伝子タイプ誘導によるミトコンドリアの変化とそれに伴った構造的ダメージは、アルツハイマー型認知症で見られる、年齢による病理学的変化に対し、説明の可能性を与えています。更なる研究により、これらの栄養因子が、血管性認知症やアルツハイマー認知症への福音になることを期待しています。なお、ビタミンC、D、EやEPA・DHA、それに、その他のビタミンB群、プロバイオティクスも認知症予防効果が報告されているので、認知症の食事療法を基本にして、アセチル-L-カルニチン、α-リポ酸もそれらと共に適正量摂取するのが有益と考えられます。 

References

Justin C. Shenk, et al. The effect of acetyl-L-Carnitine and lipoic acid treatment in ApoE4 mouse as a model of human Alzheimer's disease. J Neurol Sci.2009 Aug15;283(1-2):199-206

Gavrilova SI, et al. Acetyl-L-carnitine in the treatment of early stages of Alzheimer's disease and vascular dementia.Zh Nevrol Psikhiatr Im S S Korsakova. 2011;111(9):16-22