医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

糖尿病による細小血管障害への天然タウリンの作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-07-15 15:16:34 | 健康・病気

心臓を取り巻く冠動脈の奥深い場所には、微小冠動脈と呼ばれる細い血管が張り巡らされ、心筋のすみずみにまで酸素や栄養物質を供給しています。また、ヒト心臓微小血管内皮細胞は、冠動脈血流量やその毛細血管を介した物質交換の生理学的調整に重要な役割を果たしており、糖尿病による高血糖などで、その内皮細胞が障害を受け、虚血性心疾患や糖尿病性心筋症などを発症すると、報告されています。なお、糖尿病での心筋障害は、動脈硬化による冠状動脈障害に起因するが、それ以外に、糖尿病性心筋症で起こる場合があります。

内外の研究によると、天然タウリン(調整性栄養因子)の継続的摂取(1~3g/日)では、高血糖による冠状動脈内皮細胞機能障害や冠状微小血管内皮細胞機能障害を改善し、虚血性心疾患や心臓血管系疾患(糖尿病性心筋症、心不全)を改善します。そして、タウリンの摂取により、心筋のアポトーシスを抑制し、その細胞の線維化を抑制し、心臓病での生存率を高め、高血圧の症状や糖尿病を改善すると、報告されています。また、糖尿病での細小血管障害は、糖尿病腎症、白内障、足の冷感、手足のしびれ、それに手足の痛みをもたらします。そして、天然タウリン(イカ,タコ、牡蠣などに含まれる含硫アミノ酸から合成される栄養因子)のこれらの症状への効果も、現在、内外で研究されています。

アイルランドのThe Royal College of SurgensのQiong Di Wu博士らの研究報告によると、コントロール不良の2型糖尿病(糖尿病)での血糖の上昇は、糖尿病性細小血管障害の原因となって、相互的に関連してきます。そして、高血糖症が引き金となって、ヒト心臓微小血管など細小血管障害をもたらし、その内皮細胞アポトーシスを促進します。

以前に、天然タウリンは、ヒト血管内皮細胞アポトーシスに対し防御作用が証明されていました。博士らは、ヒトへその緒血管内皮細胞に30mMグルコースを、48時間と14日間、それぞれ暴露させ、正常なグルコース量(5.5mM;p<0.05)と比べて、内皮細胞アポトーシスの増大が認められました。糖尿病の高血糖によるDNAの分断は、選択的にS相細胞でもたらされました。また、マンニトール(浸透圧コントロールとして)30mMの暴露は、ヒトへその緒血管内皮細胞のアポトーシスを誘導しませんでした。このことは、高血糖による細胞内活性酸素(ROS)産生と細胞内Caイオン濃度の上昇を、天然タウリンが低下させるのと相互に関連が有ります。また、抗酸化栄養素、DMSO(ジメチルスルホキシド、有機化合物)、N-アセチルシステイン、それにグルタチオンは、高血糖によるヒトへその緒内皮細胞アポトーシスを少しだけ低下させました。グルコース(30mM)では、ヒトへその緒内皮細胞の壊死をもたらさず、グルコース(60mM)とマンニトール(60mM)は、それぞれ、酪酸塩デハイドロゲナーゼ遊離の増大と細胞崩壊により、ヒトへその緒内皮細胞壊死をもたらしました。天然タウリンは、高浸透圧による細胞壊死を防げませんでした。これらのことから、天然タウリンは、活性酸素阻害とCaイオン安定化により、高血糖によるヒトへその緒内皮細胞アポトーシスを減らすことが、考えられます。そして、天然タウリンが、糖尿病による細小血管障害を防ぎ、糖尿病による心筋機能障害、腎症、白内障、それに神経障害などに対し、ビタミン類と共に、有益な栄養因子となることが考えられます。更なる研究が期待されます。

References

 

Qiong Di Wu, et al. Taurine prevents high-glucose-induced human vascular endothelial apoptosis. the American Physiological Society. 1999

Yan-Jun Xu, et al. The potential health benefits of taurine in cardiovascular disease.Exp clin Cardiol.2008 Summer;13(2):57-65

Takashi Ito, et al. The potential usefulness of taurine on diabetes mellitus and its complications. Amino Acids.2012 may;42(5):1529-