医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

心筋組織損傷抑制とL-カルニチンの効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-07-01 11:00:58 | 健康・病気

微小血管狭心症は、更年期女性に多く見られ、男性には少ないようです。症状は背中の痛みを始め、いろいろな症状が報告され、検査でも発見が難しく、医師泣かせの疾患と言われています。

微小血管狭心症と関係があるヒト心臓微小血管内皮細胞の異常は、心筋細胞と強い相互作用が有り、他の微小血管内皮細胞とは異なる形質を有しています。また、ヒト心臓微小血管内皮細胞は、冠状動脈血流量やその毛細血管を介した物質交換の生理学的調整に重要な役割を果たしています。

"Circulation"誌に載ったG Brevetti博士らの研究によると、摂取量にもよりますが、L-カルニチン(調整性栄養因子)には毛細血管を拡張し、その血流を改善することにより心筋細胞の損傷を防ぎ、また心筋内の微小血管の損傷も改善します。さらに、3g/日のL-カルニチン摂取量では、L-カルニチン欠乏による末梢血管が関係した、筋肉機能の低下による歩行距離の短縮を改善すると、報告されています。また他の研究では、L-カルニチンには心筋組織損傷抑制作用があり、狭心症の発症率リスクを約4割ほど低下させると、報告されています。また、外国では、L-カルニチンの誘導体は、心臓病の薬として医師が処方したり、サプリメントとして発売されています。

Canadian collegeのHeidi Fritz博士の報告によると、心臓血管性虚血は、心筋に張り巡らされた微小血管の損傷による、心筋のL-カルニチン量の急速な枯渇と細胞内遊離長鎖脂肪酸の、同時発生的上昇を伴います。さらに、糖尿病合併症による心筋微小血管症の心不全症患者では、血清L-カルニチン値は、心臓血管超音波診断での左心室収縮機能の低下と相互に関連していました。虚血状態中、L-カルニチンは、ミトコンドリアでの遊離脂肪酸の取り込みと利用の促進により、遊離脂肪酸濃度の上昇を低下させ、それゆえ、L-カルニチンは、遊離脂肪酸の上昇によるダメージを防ぐと、考えられます。なお、そのダメージは、虚血の結果生じる、細胞の腫れと微小血管の収縮、不整脈、心筋機能の低下などを伴った代謝不全です。

また、他の研究によると、L-カルニチン誘導体のプロピニ―ル-L-カルニチンは、血管創傷の治癒を高め、微小血管内皮細胞機能不全を改善します。微小血管内皮細胞組織の機能不全は、皮膚の微小血管内層障害を特徴とし、皮膚の創傷治癒の遅れと皮膚の慢性潰瘍の一因になっていると、報告されています。これらの内皮の機能不全は、NO産生の減少、それに酸化ストレスと増大、炎症の憎悪の結果として、血管弛緩と血管収縮の間のインバランスをもたらし、皮膚微小血管の血流を悪化させます。

この研究により、プロピニ―ル-L-カルニチンには虚血後の血流の回復を改善さすことが考えられます。更なる研究により、心臓病の食事療法だけでなく、タウリン、Q10、ビタミン類、ホーソンベリー、それにプロバイオティクスと共に、プロピニ―ル-L-カルニチンが、糖尿病合併症による微小血管性心不全や微小血管性狭心症、冠状動脈性心臓病で苦しむ人々への福音になることを期待しています。

References

R Lango, et al. Influence of L-carnitine and its derivatives on myocardial metabolism and function in ischemic heart disease and during cardiopulmonary bypass. Cardiovascular Research. Vol51, Issue 1, July2001, Pages21-29

G Brevetti, etal. Increases in walking distance in patients with peripheral vascular disease treated with L-carnitine. Circulation.1988;77:767-773

 

Heidi Fritz. Feature L-carnitine. IHP Feb 2011