医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

発ガンのリスクとアクリルアミドとの関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-11-12 14:13:06 | 健康・病気

私たちが口に入れる食品と発がんの関係は、世界中で数多くの研究が有ります。もちろん、遺伝や細菌・ウイルスも癌と関係がありますが、食生活と発ガンの関係が大変強いことが、研究により明らかになりつつあります。ストックホルム大学の研究によると、ジャガイモや穀類の食品を揚げたり、焼いたり、炒めたりすると、それらの食品中にアクリルアミドが増えることが、研究により明らかになりました。したがって、食品は煮たり、蒸したりして摂取することが、ガン予防に必要と考えられます。今回は、そのアクリルアミドが発ガンのリスクを有するという研究がありますので、そのポイントについて考えていきたい、と思います。

外国の研究論文によると、げっ歯類(ラット、ラビットなど)での研究では、アクリルアミドは、それらの動物でいろんなタイプのガンのリスクを高める、と発表されています。その実験は、飲料水にアクリルアミドを入れ、実験動物に投与したものでした。

一連の対照を置いたヒトでの研究では、アクリルアミドの食事性摂取と、口腔、咽頭、食道、喉頭、大腸、腎臓、乳房、それに卵巣などの器官でのガンの進行リスクの間の相関関係を研究し、アクリルアミドの摂取に伴った癌の増加は認められませんでした。しかし、アクリルアミドを含む食品すべてが、ヒトに暴露があるとは推測されません。また、別の研究では、アクリルアミドは、遺伝毒性を有する発ガン物質であることが判明しました。なお、今後、数多くの追試がなされ、アクリルアミドが、発がんの原因の被疑者か犯人かは、明らかになると考えられます。

ヒトでの対照を置いた研究は、その症例や対照被験者とのインタビュー(個人的、もしくは質問票による)によるもので、アクリルアミドへの暴露に関して、彼らの報告に正確さに於いて違いが有る可能性があります。アクリルアミドへの暴露を正確に測定することの限界を避けるため、暴露のバイオマーカーは、閉経後の女性の乳がんに続くリスクを評価するべく、デザインしたデンマークのコホ―ト研究に、最近、用いられました。血中ヘモグロビンに結び付いたアクリルアミドのより高い値の婦人では、エストロゲン受容体ー陽性の、乳がんリスクの統計的に著しい増加が認められました。この発見は、内分泌ホルモンが関係した作用が示唆されます。このことは、子宮内膜ガンや卵巣ガンで多く、アクリルアミドへの高レベルの暴露による閉経後の乳がんでは多くないようです。また、オランダでのコホ―ト研究では、食事性のアクリルアミドと腎臓細胞ガンのリスクとの間の正の相関を示唆していましたが、前立腺がんや膀胱がんでは正の相関を示していませんでした。これらの結果から、ヒトが食事でどれだけのアクリルアミドを摂取するか、定量的に把握できる方法が必要で、それができれば、臓器別にアクリルアミドへの暴露が発ガンにどれだけ関係しているか、把握できやすくなると考えられ、暴露のバイオマ―カーは、そのための一つのツールです。更なる研究を期待しています。

References
Acrylamide in food and cancer risk: National Cancer Institute. 07/29/2008
Tareke E,et al: Analysis of acrylamide, a carcinogen formed in heated foodstuffs. Journal of Agriculture and Food Chemistry 2002;50(17):4998-5006