医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

統合失調症、前立腺がんの腫瘍マーカーとサルコシンについて 栄養医学ブログ

2012-08-11 23:46:43 | 健康・病気

Wikipediaによると、サルコシン代謝の生まれつきのエラーである、サルコシネミアの表現型の発現の欠如により証明された様に、サルコシンは、毒性は知られておらず、安全なアミノ酸と考えられます。サルコシネミアは、サルコシンからグリシンへ転換するため、葉酸塩が必要で、重度の葉酸塩の欠乏をもたらします。

統合失調症とサルコシンについて

Wikipediaによると、近年、サルコシンは、統合失調症との関連が研究されています。統合失調症に一般的である認知症状と精神病理学的症状の軽快はもちろん、陰性症状と陽性症状の軽快が、ある種の抗精神病薬(clozapineでない)に加えて、サルコシン、2g/日を摂取すると、もたらされます。患者は、サルコシンに十分耐えられるようです。統合失調症の前兆では、予防の可能性について研究中です。サルコシンは、グリシン輸送担体-1の阻害剤とグリシン刺激薬として作用します。サルコシンは、NMDA受容体活性の増大と統合失調症の症状の軽減をもたらす、脳のグリシン濃度を高めます。このようにして、サルコシンは、関心を持たれている治療オプションであり、将来の精神疾患の治療における、新しい方向の可能性をもたらすと、考えられます。なお、米国では、サルコシンと統合失調症に関する、多くの研究がなされており、成果が期待されています。

うつ症状とサルコシンについて

Wikipediaによると、多くのうつ症状は、大変複雑です。モノアミン神経伝達阻害を標的にした、最新の抗うつ薬は、効果と認知効果が限定されていました。NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸塩)、すなわち、グルタミン酸塩受容体の亜タイプは、学習と記憶において重要な役割を演じます。サルコシンのようにNMDAを増やす因子は、統合失調症の補助療法として用いられています。なお、予備的研究では、サルコシンの摂取は、精神症状だけでなく、統合失調症のうつ症状も改善することを、示していました。更なる追試が望まれます。

前立腺ガンの腫瘍マーカーとしてのサルコシンについて

Nature(2009年)によると、サルコシンは、前立射腺ガン細胞を活性化し、尿で測定されたガン細胞の悪性度を示す指標となることが、報告されました。それは前立腺ガンの進行による転移の間、著しく増加し、尿中に見られる特異な代謝産物として、確認されました。サルコシン値は、良性の前立腺上皮細胞に関連した侵襲性前立腺ガン細胞群で増加します。サルコシン値は、ガンの侵襲度をコントロールすると、考えられます。しかしながら、この結論は、論議の的になっています。更なる研究により、真実が明らかになることを、期待しています。

Wikipediaによると、ドイツの研究では、これと違った結果を報告しています。前立腺患者の尿中サンプルのサルコシン値を測定後、侵襲性ガンの同定と前立腺ガンの検出法におけるマーカーとして、尿中サルコシン値の測定は出来なかったと、結論づけました。加えるに、血清サルコシン値は、前立腺ガンのマーカーではないと、他の研究者は結論付けました。研究結果が分かれているので、多くの追試により真実が解明されることが、期待されています。

References

Glycine-A possible complementary therapy for schizophrenia: Schizophrenia. com, May ,2006

Wikipedia: Sarcosine

筆者の栄養医学ブログは、ブログアドレスnutr-blog.blogspot.comとblog.goo.ne.jp/h35p39の両ブログでアップデートしています。

 


統合失調症とサルコシン(アミノ酸)について 栄養医学ブログ

2012-08-09 18:57:21 | 健康・病気

以前のこのブログでは、NMDA刺激物質と統合失調症について述べましたが、今回は、逆のNMDA拮抗物質について、考察を進めたいと考えております。

NMDA値を増大さすに違いない、他の可能な治療法があります。最新のSSRI抗うつ薬のように働くNMDA拮抗物質の使用がそれに当たります。最新の抗うつ薬は、それが作用した後、分解することから、セロトニンを阻害することにより作用します。セロトニン、もしくはその他の神経伝達物質は、シナプスからシナプスへメッセージを伝え、次の神経単位の受容体に達します。そして、セロトニンは除去されたり、無効になります。SSRIは、さらに多くのセロトニンが脳に留まることから、セロトニンを阻害するセロトニン拮抗薬です。

同様に、グリシン輸送担体-1(GlyT-1)を通じて、セロトニンの再吸収を阻害することにより、グリシンのシナプスでの有効性を強めることは可能であるかもしれません。Sarcosine(N-Methylglycine)は、体内の筋肉などに存在する天然のアミノ酸です。Sarcosineは、ある研究ではそれらの性質を有するようです。この仮説は、テストされ証明されました。Tsai博士らは、抗精神病薬で治療されていた36名の統合失調症患者において、ニ重盲検無作為対照試験を実施しました。統合失調症患者は、Sarcosineを2g/日、もしくはプラセボを摂取するよう、割り当てられました。プラセボに比べてSarcosineでは、陽性症状の17%、陰性症状の14%の軽快が認められ、認知機能の13%の改善が見られました。副作用では違いは見られませんでした。

追加治療として、D-セリンに対して、Sarcosineの小規模比較試験でも同じ結果でした。この研究では、65名の被験者をrisperidoneプラスD-セリン、もしくはrisperidoneプラスSarcosineのグループに、Tsai博士らは無作為に割り当てました。Sarcosineグループは、プラセボもしくはD-セリングループより、PANSS総スコアーにおいて、更に大きい症状の改善が見られました。SANS試験において、Sarcosineは他の二つの研究グループより有効でした。

Tsai博士は、Sarcosineが少なくとも急性期の統合失調症の補助療法として、NMDA刺激薬グリシンより、もっと有効な可能性があることを、示しました。さらなる追試により確認されることを、期待しています。なお、サルコシン(Sarcosine)が脳ー血液関門を通りにくいという研究も有りますので、その点についても、更なる研究が必要と、考えられます。

また、サルコシンには、統合失調症のうつ状態の改善効果があり、前立腺がんのマーカーであることが、報告されていますが、反対の研究も有ります。更なる確認研究が必要と考えられます。

References

Glycine Transporter 1 Inhibitor, N-Methylglycine (sarcosine),Added to Antipsychotics for the Treatment of Schizophrenia: Gucochuan Tsai, Biological Psychiatry  2004; 55 452-456

Arch Gen Psychiatry, vol 62, Nov 2005,1196-1204

Wikipedia: Sarcosine


統合失調症に対するグリシンの研究について 栄養医学ブログ

2012-08-07 20:49:27 | 健康・病気

いろんな研究の問題点について

補欠グループでの発見に対する問題点の可能性は、投与量が低く、グリシンは、体重あたり0.8g/Kgの割合で投与すべきと、研究者らは述べています。しかし、他の研究では、患者すべては、グリシンを60g/日摂取していました。さらに、初期の研究では、グリシンの血清値は、1000ナノモル/mlに達しましたが、補欠グループの研究では、グリシンの血清値は、たった600ナノモル/mlでした。このような事から、グリシンの投与量に関する研究は、もっと増やす必要があります。

グリシンを与えられた統合失調症患者の前駆フェイズでの、患者に関する、もっと実証的予備研究は、初期に中断され、無作為のプラセボ対照試験が始まった事は、疑いありません。

エール大学のScott W. Woods博士によると、統合失調症は、発病前から前駆症状まで十分精神病性を帯びています。この疾患に関係した病態生理学的メカニズムの進歩が多分あります。前駆フェイズの間に働くメカニズムをターゲットにした治療法は、この疾患の進行と精神病への発展を防ぐことができました。

前駆症状を呈した患者では、グリシンが統合失調症の進行を阻害するに違いないと、エール大学の研究者は述べています。

10名の被験者が選ばれ、8週間、グリシン0.8g/Kgの投与を受け、治療されました。グリシンは、症状を軽減するのに大変有効で、olanzapineを用いた、同じような研究で見出されたものよりは、良い結果を示しました。グリシンを摂取した患者の多くは、8週間の治療後、十分な寛解基準に達しました。しかし、この研究は、プラセボを置かない公開表示試験で有り、もっと実際的な発見は、プラセボを用いた研究から得られると、Woods博士は述べています。なお、統合失調症候群の中で、NMDAが関係した症候群には、グリシンが有効で、遺伝的にナイアシンアミドが多量に必要で、十分のナイアシンアミドが補給されない場合、ドーパミンの代謝異常を起こし、統合失調症状を起こす患者群には、多量のナイアシンアミドの補給が必要と、考えられます。

また、Seybolt博士の研究では、ニコチン酸アミド(VB3)と一緒にアルファリポ酸を投与すると、
ミトコンドリアの機能不全による統合失調症の前兆と症状を緩和する可能性がある(すなわち、
GSH値の増加、ETC複合体1の機能と電子供与の改善、それにNADの増加と抗酸化能の強化など)という仮説を提出しています。そして、他の研究でも、VB3とアルファリポ酸を併用して効果が有ったという研究もあります。

 

Reference

Glycine-A possible complementary therapy for schizophrenia: schizophrenia. com, May, 2006


統合失調症とNMDA作動薬としてのグリシンについて 栄養医学ブログ

2012-08-04 17:51:53 | 健康・病気

グリシンは、NMDA(N-methyl-d-aspartate)の作動薬として、作用することが知られています。グリシンは、全生物の蛋白質の中のアミノ酸として見い出されます。健康な人の食事では、毎日、約2gのグリシンを摂取したことになります。グリシンを補ってやることは、抗痙攣作用だけでなく、抗酸化作用と抗炎症作用を有する可能性があります。

いくつかの小規模の無作為試験では、統合失調症状に関して抗精神病作用と効果を調べるため、グリシンを摂取してもらいました。2005年のフィンランドの研究者の研究によると、メタ分析では、あらゆる研究とそのデータ分析が、結果と結び付いているようです。研究を組み合わせることにより、サンプルの量を増やす利点が有ります。

この症例は、抗精神病薬に加えて、いろんなNMDAの作動薬が投与された、343名の統合失調症患者が参加したメタ分析を含む、18の短期試行で見られました。研究によると、グリシンとD-セリンが統合失調症の陰性症状を軽減するのに有効で、その効果の大きさは弱い事がわかりました。olanzapineもしくはrisperidoneのどちらかを摂取している17名の患者は、6週間、それらに加えてグリシンを8g/日摂取しました。患者はそれから交代しました。統合失調症患者が最初の6週間、プラセボを摂取したとしたら、第二相とvice versaにおいて、グリシンを摂取しました。盲検試験でした。患者はグリシンに十分耐えることが出来、陰性症状の著しい緩和が見られました。サンプルの規模は小さく、研究期間は短いが、risperidoneとolanzapineの効果は、それらに加えるに、大量のグリシン補助療法を行うと、効果が強められると、研究者は結論づけています。しかしながら、グリシン療法はナイアシン療法に比べると、歴史が浅く、臨床例が少ないので、更なる臨床例の積み重ねが必要と考えられます、

Heresco-Levy博士らの研究は、olanzapine ,もしくはrisperidoneの投与とD-セリンの併用投与で、サンプルの規模は39で、より大きいものでした。統合失調症患者は、上記、抗精神病薬に加えて、D-セリンを30mg/kg/日投与されました。陰性症状、陽性症状、認識障害、それに抑うつ症状の著しい改善が見られました。グリシンとD-セリンは両方ともN-methyl-d-aspartate(NMDA)に対する作動薬として作用するけれども、それらの間には違いが見られました。D-セリンに比べて、グリシンは血液ー脳関門を通過するのが、より困難で、D-セリンに比べて、脳に到達するのに、グリシンは、より大量が必要です。しかしながら、D-セリンはラットで、腎臓障害をもたらすのが明らかになり、その安全量が決まるまで、米国では臨床使用は認められていません。

以下の研究は、olazapine以外の抗精神病薬に加えて、グリシンもしくはd-cycloserine(部分的NMDA刺激薬)の効果を評価するためデザインされたものでした。研究は、16週間、135名の被験者で実施されました。しかし、効果は、グリシンでもd-cycloserineでも見いだせられませんでした。いくつかの補欠グループでは、興味ある発見がありました。補欠グループでの分析では、グリシンで治療した入院患者で症状の寛解が見られました。これは、外来患者より、むしろ入院患者すべてで実施した初期の研究と一致するものでした。そして、更なるデータの積み重ねにより、グリシンのすべてが明らかになると、期待しています。

結論として、NMDAの機能と機能障害に対する理解が高まり、NMDA受容体に必須な補助因子の分子であるグリシンが、統合失調症患者の脳のNMDA受容体の機能を改善する可能性が高まってきました。統合失調症患者に対するグリシン療法は、NMDA機能障害説に対するエビデンスを提供し、NMDA受容体がカギとなる治療標的として、研究する価値が有ることを、示しています。

 

Reference

Glycine-A possible complementary therapy for schizophrenia: schizophrenia. com, May,2006