医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

喫煙による肺癌と野菜・果物・お茶のフラボノイドについて 栄養医学ブログ

2012-08-30 23:29:13 | 健康・病気

野菜、果物を毎日多めに摂取し、緑茶、紅茶を飲む喫煙者は、肺癌に罹りにくい可能性がある、とカリフォルニア大学のZhang博士らは研究・報告しています。その研究によると、喫煙者の食事の中に、フラボノイドと呼ばれる栄養物質を摂取した喫煙者は、肺癌の進行リスクが低くなります。ちなみに、肺癌の90%以上が喫煙の結果、発症すると報告されています。彼らの発見は大変関心を引いています。そして、いろんな種類のフラボノイドの摂取が、喫煙者の肺癌のリスクの低下と結び付いている、とZhang博士らは述べています。

フラボノイドは、抗酸化作用と抗炎症作用を有する水溶性色素(栄養素)で、その両作用は組織のダメージを少なくします。Zhang博士らは、肺癌患者558名と肺癌でない837名を調査し、彼らの食事歴を調べました。その結果、ある種のフラボノイドを含む食物を食べた被験者らの研究では、肺癌の進行が防がれるようです。もっと強い防御作用を有すると思われるフラボノイドにはカテキンがあり、イチゴ、緑茶、紅茶などに含まれ、Kaempferolは芽キャベツ、リンゴなどに含まれ、ケルセチンは豆類、玉ねぎ、リンゴなどに含まれます。禁煙が一番いいのですが、野菜・果物を多めに摂取することもガン予防に有益なことが、多くの疫学研究で証明されています。なお、当方の調査でも、野菜・果物を多く摂取し、緑茶を多く飲み、肉類・油脂類の摂取が少ないヒトは、ガンに罹りにくい結果が出ています。

腫瘍が進行し、血管新生のプロセスを進め、拡大することから、血管形成をブロックすることにより、フラボノイド類は、肺癌に対し防御作用を有します。ガン細胞の増殖に対し、プログラム化された細胞死やアポトーシスを起こすことにより、フラボノイド類はガン細胞の増殖をストップさせます。また、喫煙によるDNAの損傷を防ぐべく、働く可能性があります。このことが、フラボノイドが喫煙者の肺癌の進行に影響するが、非喫煙者には影響しない理由の説明となっています。

抗酸化栄養素(フラボノイド)は喫煙により生じた障害を減らすべく、働く可能性がありますが、更なる研究と追試が必要と考えられます。なお、野菜や果物の抗腫瘍効果は、フラボノイド以外にビタミンCなども関係している、と考えられます。

フラボノイドのガン防御作用が、他の喫煙と関係したガン(膀胱がん、頭・頸部ガン、腎臓ガンなど)に拡大されるならその研究も行うべき、と考えられます。

References

Fruits,Vegetables And Teas May Protect Smokers From Lung Cancer: Science Daily, May 31,2008

ガンと栄養: 藤井毅彦、日本ビタミンC研究会、1981