医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

統合失調症とサルコシン(アミノ酸)について 栄養医学ブログ

2012-08-09 18:57:21 | 健康・病気

以前のこのブログでは、NMDA刺激物質と統合失調症について述べましたが、今回は、逆のNMDA拮抗物質について、考察を進めたいと考えております。

NMDA値を増大さすに違いない、他の可能な治療法があります。最新のSSRI抗うつ薬のように働くNMDA拮抗物質の使用がそれに当たります。最新の抗うつ薬は、それが作用した後、分解することから、セロトニンを阻害することにより作用します。セロトニン、もしくはその他の神経伝達物質は、シナプスからシナプスへメッセージを伝え、次の神経単位の受容体に達します。そして、セロトニンは除去されたり、無効になります。SSRIは、さらに多くのセロトニンが脳に留まることから、セロトニンを阻害するセロトニン拮抗薬です。

同様に、グリシン輸送担体-1(GlyT-1)を通じて、セロトニンの再吸収を阻害することにより、グリシンのシナプスでの有効性を強めることは可能であるかもしれません。Sarcosine(N-Methylglycine)は、体内の筋肉などに存在する天然のアミノ酸です。Sarcosineは、ある研究ではそれらの性質を有するようです。この仮説は、テストされ証明されました。Tsai博士らは、抗精神病薬で治療されていた36名の統合失調症患者において、ニ重盲検無作為対照試験を実施しました。統合失調症患者は、Sarcosineを2g/日、もしくはプラセボを摂取するよう、割り当てられました。プラセボに比べてSarcosineでは、陽性症状の17%、陰性症状の14%の軽快が認められ、認知機能の13%の改善が見られました。副作用では違いは見られませんでした。

追加治療として、D-セリンに対して、Sarcosineの小規模比較試験でも同じ結果でした。この研究では、65名の被験者をrisperidoneプラスD-セリン、もしくはrisperidoneプラスSarcosineのグループに、Tsai博士らは無作為に割り当てました。Sarcosineグループは、プラセボもしくはD-セリングループより、PANSS総スコアーにおいて、更に大きい症状の改善が見られました。SANS試験において、Sarcosineは他の二つの研究グループより有効でした。

Tsai博士は、Sarcosineが少なくとも急性期の統合失調症の補助療法として、NMDA刺激薬グリシンより、もっと有効な可能性があることを、示しました。さらなる追試により確認されることを、期待しています。なお、サルコシン(Sarcosine)が脳ー血液関門を通りにくいという研究も有りますので、その点についても、更なる研究が必要と、考えられます。

また、サルコシンには、統合失調症のうつ状態の改善効果があり、前立腺がんのマーカーであることが、報告されていますが、反対の研究も有ります。更なる確認研究が必要と考えられます。

References

Glycine Transporter 1 Inhibitor, N-Methylglycine (sarcosine),Added to Antipsychotics for the Treatment of Schizophrenia: Gucochuan Tsai, Biological Psychiatry  2004; 55 452-456

Arch Gen Psychiatry, vol 62, Nov 2005,1196-1204

Wikipedia: Sarcosine