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#330 十大秘話 ⑧ 指名打者制度

2014年07月09日 | 1983 年 
ひと足先に指名打者制(以下、DH制)を採用した米国のアメリカン・リーグでは守りの負担から解放されたベテラン打者が救われたのとは対照的に日本のパ・リーグでは逆に投手に利したようだ。日本シリーズでDH制の隔年採用を迫るパ・リーグの現状は…

日本プロ野球界における " 20世紀最大の革命 " と言われるDH制度をパ・リーグが採用してから約50日が経過した。当初、パ・リーグ連盟はあらゆる事態を想定して複雑なルール附則を用意していたが無用の心配であって制度適用に伴うトラブルは今の所ない。投手は投げる事に専念し代わりに打つ専門の10人目の打者が登場するという野球は違和感なく進行している。意外にも点の取り合いとなるのでは、との開幕前の予想に反して現在のところ今年のパ・リーグは投手上位という傾向を示している。 【 昭和50年6月16日号より 】


大リーグのアメリカン・リーグがDH制を採用したのは1973年の事。導入の理由は無気力な投手の打撃を見せられるよりは守りや走塁の衰えにより出番は減ってはいるがベテラン選手の年季の入った打撃を見ればファンも喜ぶだろうとの考えからだ。前年のア・リーグ投手たちの打率は.146 と冴えなかったがDHに入った選手の打率は.257 と上昇して派手な打撃戦も増えた。また出場機会が減り引退も近いと思われていたF・ロビンソンやO・セペタらベテラン選手がDH制のお蔭で蘇った。

日本の場合は投手たちがDH制の恩恵を受けた。代打起用による投手交代の場面が減り完投する投手が増えた。完投が増えれば中継ぎ投手陣への負担も減り休養も取れるようになり球威も戻り選手寿命も延びた。DH制導入の前年はパ・リーグ全体で金田留広投手(ロッテ)の16勝が最高で史上初めて20勝投手がゼロとなったが、導入後は忽ち稲尾投手(太平洋)が23勝、鈴木投手(近鉄)が22勝をあげた。勿論、ベテラン打者の復活の手助けとなったのも事実。永池徳二(阪急)・大田卓司(太平洋ク)や監督兼任で、ほぼ引退同然だった江藤慎一(太平洋ク)もその一人だ。

対するセ・リーグは投手交代の妙が減る、大味な試合が増え緊張感が無くなる、野球とはそもそも走攻守の三拍子揃った選手で戦う競技、打てないながらも投手の打撃を見るのも一興、などの理由をあげて通常のリーグ戦はもとよりオールスター戦や日本シリーズへのDH制導入に一貫して反対してきた。しかし制度導入から9年経ち「時代の流れ」「平等の原則」を盾にパ・リーグ側は日本シリーズでのDH制の採用、少なくとも隔年での実施をプロ野球機構に直訴し下田コミッショナーも一定の理解を示した。

コミッショナーや世論に押され気味なセ・リーグ。巨人の九連覇が終わり中日、ヤクルト、広島など巨人以外の球団も日本シリーズに登場するようになったが阪急に3連覇を許すなど形勢はパ・リーグがややリードか。この上さらに不慣れなDH制を導入されたら益々勝ち目が無くなりそうだ。そんなセ・リーグの数少ない理解者がパ・リーグに所属しながらもDH制に否定的な広岡監督(西武)なのも皮肉な話だ。

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