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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 582 10大ニュース ➋

2019年05月08日 | 1985 年 



広岡サンと根本サンの大喧嘩の " 真実 "
「あんた頭おかしいんやないか」 vs 「それは退団の捨てセリフだな」

11月6日の昼下がり、療養先の長野県諏訪市にある諏訪長生館を発った広岡氏は愛車のBMWを中央高速へと走らせた。9日に予定されていたスタッフミーティングまで戻らないつもりだったが、急遽東京に戻る事となった。理由はかねてから球団に求めていた戸田博之球団社長との会談が組まれた為であった。来季以降のチーム作りに対する自分の考えを堤オーナーまたは戸田社長に訴えたい機会を求めていた広岡氏の願いをやっと球団側が了承したのである。会談の場は港区の新高輪ホテル。広岡氏は自宅へも寄らずホテルに勇んで直行したが戸田社長の反応は冷ややかだった。「球団の事は全て(管理部長の)根本に任せてある。話は根本にしてくれ」とにべもなくあしらわれた。

西武球団には " 堤 - 戸田 - 根本 " の厳然たるヒエラルキーが確立されている。堤オーナーの全権を受けて根本管理部長が球団編成にあたっている。何びとたりともこの指揮命令系統を侵す事は許されず、それを無視しようとした広岡氏に戸田社長が企業論理のイロハを説いたのは至極当然の事であった。広岡氏は翌7日に池袋のサンシャインビル54階の球団事務所に場所を改めて根本部長との会談に臨んだ。午前10時から始まった会談は1時間で終了し「来季に向けて前向きな話し合いをした(根本)」、「忌憚なく話し合った。有意義な会談だった(広岡)」と二人は口を揃えて円満な会談だった事を強調した。成り行きを注目していた報道陣は肩透かしを喰らい、一斉に『広岡監督続投』のニュースが流れた。

ところが実際は全く逆だった。両者は会談の冒頭から対立し、時には激高し怒鳴りあう場面もあった。チーム編成権における監督権限の拡大を要求する広岡氏に対し根本部長は全面的に拒否。加えて広岡氏が夕刊紙の記者を使ってフロント批判を繰り広げた真意を問い質すなどして対立は決定的となり話し合いは決裂した。遂に広岡氏は根本部長に向かって「あんた頭がおかしいんやないか」と毒つき、対する根本部長も「そこまで言うのは退団するという事だな」と返した。明けて8日、広岡氏は辞表を提出し球団は受理した。表向きの理由は体調不良だが実際は企業論理を逸脱した事への懲罰的解任だった。西武球団は広岡氏へ功労金五千万円を贈ったが来季は他球団のユニフォームは着ない、特定球団と関わりを持たないとの一筆を入れさせた。



定岡クンに舐められ切った?球界
本人も予想しなかった退団後のモテぶりにポスト江本を狙うんだってサ

巨人のユニフォームを脱いだらただの人。退団が決まった当時は定岡氏は球界内外からそう評されていた。だが意外や意外、モデルやタレントとしての勧誘・照会が後を断たない状態が現在も続いている。「現役の時より毎日が忙しい。色々な分野の人から引き合いがあって話を聞くだけで1日が過ぎてしまう」と定岡氏本人も驚いている。トレードを拒否しての引退は単なる我が儘で球界内部には巨人はもとより相手球団にも迷惑をかけた、との批判は多い。当初は定岡氏もそんな視線を意識して「もう球界と関わる仕事はしません」と宣言していたが、12月に入りハワイでの休暇を終えた後には「野球と関係のある仕事を主にしていきたい。解説者の話も来ています」と前言を翻した。

予想外のモテモテぶりに定岡氏は意を強くして「別に僕が後ろめたい思いをする必要はない」と開き直った感じである。「サダはお金についてもホントにしっかりしているよ。着るモノも安い服を着こなしで高級そうに見せるのも上手いし、ホテルとかレストランも一流どころは利用しないし無駄遣いはしないね」というのが巨人ナインの定評だ。したがって「方々の貯金を集めたら結構な額になった(定岡)」そうで、1億円くらい?の問いかけには笑顔で否定しなかった。また一時は売りに出すと言われていた東京・瀬田の1億円豪邸も「今月中に引っ越して来年からは『定岡企画』の事務所を兼ねる事になります」と経済的にも全く心配する必要はないようだ。

テレビのクイズ番組の出演やインタビュアーの依頼が次々と来る。最終的には江本孟紀氏のようなマルチタレントの座を視野に入れているようだ。恥をかかされた形となった巨人軍の某フロントは当初は「定岡のキャリアでは解説の仕事は無理。話術が必要なインタビュアーも難しいでしょう」と言い放っていたが実際は違う様相を呈している。「今は時代が変わってきた」と話すのは2年前に巨人を退団した中井康之氏だ。「僕クラスでも野球教室やインタビュアーの仕事の依頼がある。その道を究めた大物より気軽に使えて素人の発想に近い人間の方が視聴者受けが良いと局側も考えていると思う(中井)」と。定岡氏も江本氏や板東英二氏に次いでテレビや雑誌に登場する機会が増えそうだ。

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