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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 528 阪神ネタ ③

2018年04月25日 | 1985 年 



幸先よし。と岡崎球団社長が叫んだそうである。日本一・猛虎軍団の契約交渉はトントン拍子で始めから36人保留者ゼロ。なにせ21年ぶりの優勝で球団側も「ヨッシャ、ヨッシャ」とばかり増額の連発だそうだが、ちょっと待て。バース、掛布、岡田ら大物が控えている。岡崎サン、勝負はこれから先じゃありませんか?(※金額は推定)

「えっ、そんなにアップして頂けるんですか?」と新救援男・中西投手は目の前に出された来季の年俸額を見て我が目を疑ったそうである。今季の五百三十万円から来季は3倍増の千六百万円を提示されて「ハイ、サインします。ハイッ」と即決だった。喜び勇んではしゃぐ中西に諸先輩らは「あ~あ、その程度でサインしちゃって。お前の働きっぷりじゃもっと貰えただろ。元々が低いんだからさ」と叱責したそうだ。これから契約更改を控える主力陣からすれば「あんまり簡単にサインするなよ。後の人間がやり辛くなるじゃないか」といった所か。しかし、あっさりと陥落したのは中西だけではない。契約更改のトップバッターとなった嶋田弟投手が50%アップでサインしたのを皮切りに池田投手、平田選手、木戸選手らレギュラークラスを含む36人が連続してサインし保留者はゼロだった。

球団は今年の契約更改交渉を秋季キャンプをしている安芸まで出向いて行なった。バタバタと間髪入れずに更改する事で選手間の情報交換を阻止するのが目的では、との憶測も流れたが「他意は無いですよ。12月14日から7泊9日の予定でハワイへの優勝旅行があるから、帰国する22日から交渉を始めたら多くの選手が越年してしまう可能性がある。なので出発前に交渉を済ませるようにしただけ(岡崎球団社長)」と痛くもない腹を探られる始末。11月23日~25日の3日間で更改した選手の多くがアップを勝ち取った。木戸は185%増の千四百四十万円、平田は千四百万円から二千三百万円といった具合。

話を冒頭の中西に戻そう。中西にはバラ色のオフが待っている。最優秀救援投手のタイトル料・三百万円、リーグ優勝褒奨金・三百万円、日本シリーズ分配金・二百万円、ファイアマン賞・百万円等の計九百万円の他にもテレビCMや出演料など多額のお金が中西の懐に入ってくるのだ。「弱っちゃったなぁ、予想外の金額だったので、あっさりサインしちゃいました。もう少し粘れば良かったかなぁ」と中西本人が言うように周囲は「アイツはタイトル料を年俸の中に組み入れちゃった。まだ若いんだな、年俸とボーナスは別にしないと。球団側の思う壺だよ」と某ベテラン選手は言う。ともあれ中西の興奮ぶりに「あれだけ喜んでくれれば査定のし甲斐がある。優勝とは良いもんですなぁ」と高田球団取締役は御満悦。

「数字に現れない中継ぎの評価もしてもらった」と池田は80%増の千七百五十万円。「社長、もう一声」「よっしゃ、持ってけ」など漫才さながらのやりとりもあったとか。他にも「本音を言えばもう少し上を狙っていた。でも交渉をして幾らかは上げてもらったので満足している」とは45%増の千七百四十万円の北村選手。「母親への送金も今迄の十万円から二十万円に倍増できそうです」と90%増で七百万円の仲田投手。などなど安芸キャンプは笑顔、笑い声で満ち溢れている。ちょっとユニークだったのが木戸で「今の僕にはお金よりも子供が欲しい。サイン?しましたよ。子供が出来るなら給料が下がっても構わない。あっ、女房に怒られるかな。頑張ってるんだけどな…」と記者らの笑いを誘った。

" 前門の虎 " の若手連中は難なく陥落させたが、次に控える " 後門の狼 " たちは一筋縄ではいかず手強い。最強の一番打者・真弓選手、三冠王・バース選手、そして掛布・岡田のKO砲だ。岡崎球団社長も「ここからが腕の見せ所」と明言する。11月19日に球団側が言う所の「ツワモノども」の掛布・岡田・真弓・佐野選手・山本和投手が顔を揃えた皆生温泉でのオーバーホール。「野球では日本一になれた。給料の面でも西武を抜いて日本一に!」を合言葉に気勢を上げた。「優勝旅行には社長も高田(取締役)さんも来ますからハワイで下交渉もあるかもしれませんね、 " 彼 " も来ますから。ま、家族も一緒で遊びがメインですから、あまり生臭い話はしたくないですけど」と選手会長でもある岡田は球団側を牽制する。

" 彼 " とはバース。バース本人は「契約の話は代理人(ミヤサンド氏)に任せている」と多くを語らないが、打撃タイトルの表彰式に再来日した際には「(希望額は)80万ドル」とだけ言い残して離日した。1$=200円と換算すると一億六千万円だ。昨年は年俸37万ドルにボーナスとして別途10万ドルの契約を交わしたが、今年は年俸だけで80万ドルを譲る気はないようだ。「僕ら日本人選手だってバース並みとは言わないけれど、妙な金額を提示されたら黙っていないよ」と話すのは掛布。「若手の契約更改は参考になります。ゴルフで例えればグリーン上で前の人のパットを見た感じ。周囲では日本人初の一億円プレーヤーの声もありますが、惑わされずじっくり交渉したいです(掛布)」だそうだ。岡崎球団社長、聞いてますか?

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