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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 777 飛ぶボール?

2023年02月01日 | 1977 年 



バックスクリーンを越えてスコアボードを直撃したり、あっと言う間に場外へ飛び出したり。今年はもの凄く大きなホームランが続出しているがこれは打撃技術の向上の成すものか、かつてのラビットボールのような飛ぶボールを使用しているのか。

本塁打新記録必至のセ・リーグ
本当によく飛ぶ。ことにセ・リーグは凄い。6月24日現在、170試合で476本塁打。1試合平均 2.76本という大変なホームランラッシュで1シーズン最多のリーグ記録達成は確定的である。対するパ・リーグは179試合で319本でセ・リーグより157本も少ない。この空前のホームランラッシュを選手はどう考えているのか。人工芝になった後楽園球場で昨季から1引き分けを挟んで17連敗中の中日・星野投手は後楽園球場の試合に関して「なんか昨年あたりから急に打球がよく飛ぶようになったと感じる。思うに鉄板のようなコンクリートの影響で気温が上がると上昇気流が発生して飛距離が伸びるんじゃないかな」と。

この星野投手のコメントを裏付けるように人工芝に衣替えした昨年から後楽園球場の本塁打数は大幅に増えている。天然芝最後の昭和50年は109本だったが、昨年は135本。今年は昨年のペースを上回る勢いだ。それでは人工芝ではない神宮球場を本拠地にしているヤクルトの選手はどう感じているのだろうか?東映フライヤーズ時代の昭和45・46年に2年連続本塁打王を獲得した大杉選手は「そう言われてみれば後楽園球場以外の球場でも今年は打球がよく飛ぶ感じがするね。以前は後楽園や神宮でバックスクリーンを越えるホームランは打てなかった。もしかしたら32歳になってパワーが付いたのかな(笑)」と後楽園球場に限った話ではないようである。

一方でヤクルトの大矢捕手は「僕の実感ですがホームランを打たれた時は完璧に捉えられたと感じます。今年は球が飛ぶのではなく、速球を武器にしてきた本格派投手が年齢と共に技巧派に切り替える時期になり打者も打ち易くなったんじゃないかな」と別の見方をする。これまでチームを支えてきた堀内投手(巨人)、松岡投手(ヤクルト)、平松投手(大洋)、外木場投手(広島)、星野投手(中日)らがピークを過ぎたことがホームランラッシュの原因ではないかという説だ。また星野投手は「球の品質も良くなっているのと同時にバットも飛距離が出るように加工されている。打撃上位の野球になるのは当然だと思う」と話す。


厳正なテストで使用球は決める!
ペナントレースで使用されている公認球は厳重なテストを受けて通過したものでなくては使えない仕組みになっており、各球場によってとかリーグによって使用球が違うということなない。公認球の規格については野球規則で定められていて、複数のメーカーが製作している。大阪の場合は福島区鷺洲にある美津濃大阪工場で反発力テストが行われている。定期的にテスト日があり、各メーカーが自社製品を持ち込んでセ・パ両リーグの審判員立ち合いの下でバウンドテストを実施している。高さ4.12 ㍍の所から厚さ6㌢の大理石に落下させ、1.40 ~ 1.45 ㍍の高さに跳ね返ったものが合格となる。

後楽園球場内にも同様の施設があり在京の製造メーカーが検査を行っている。だから球場によってとかリーグによって「飛ぶ球や飛ばない球」があるということは有り得ない。メーカー側もそれは断言している。美津濃社は「今回の噂話に私どもも驚いています。球の製造工程その他は20数年来同じやり方でやってきている」と言い、ジャイアント社も「球は変わっていないし、変えようがありません」と断言する。だが別の見方がある。タマザワ社の関係者は「球は生き物ですから温度や湿気に影響を受ける。保存方法の違いで飛びやすく変化することはあるかもしれない」と。


バットの向上も要因
メーカー側も今年のよく飛ぶ傾向に驚いているが、それは球のせいではなくバットの方ではないかと考えている。「圧縮バットが原因ではないでしょうか。選手のパワーアップもあるかもしれませんが、それよりも年々圧縮バットの改良がされてますからそちらの方の影響が大きいと思いますよ(ジャイアント社関係者)」「打者はマシン相手に好きなだけ打撃練習が出来ますし、打撃力の向上で打高投低の傾向は増々進むんじゃないですか(美津濃社関係者)」と球ではなく圧縮バットの反発力や打撃技術の向上が飛距離アップの要因との見方だ。

またセ・リーグには3割打者が10人以上いるのにパ・リーグには5人どまりで本塁打数もセ・パで大きく違う。この原因は何か?それは指名打者制にあるという意見が多い。単純に考えると指名打者制の方が攻撃力がアップすると考えがちだが、投手交代の為に投手の打順が回って来るまで投げ続ける必要がなくなり、首脳陣は調子の悪い投手を躊躇なく交代させるようになった。状況に応じて投手をどんどん代える。打者は疲弊していない投手相手に抑えられる確率が増す。その結果、パ・リーグ打者の本塁打数が少ないというのが真相のようだ。

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